表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕らは一度も始まらなかったはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。  作者: 大天使ミコエル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/59

37 デートしようよ(1)

 家へ帰るまでの脇道のベンチで、座り込んでいた。

 今日は、帰りたくない気分だった。

 夕陽があたしのことを照らした。そばに立つ木に隠れるように、あたしはそこでじっとしていた。

 誰にも見つからないように。


 けど。


「莉子」


 見つかってしまった。

 ふと顔を挙げると、そこにいたのは拓真だった。


 泣きそうな顔のあたしに、またあの時と同じように困った顔をしてみせる。

 あの、あたしを抱きしめてくれたときと同じように。


 じっと見る。


 何か、話すつもりはなかった。かと言って、追い立てるつもりもない。

 ただ、向かい合う時間があった。

 お互いに顔を見る。

 見つめるっていう色っぽい空気はなくて、そこでただ向かい合っている、というのが正しかった。


 それなのに。


 拓真は、その眉をひそめた困った顔のまま、あろうことかこう言ったのだ。


「デートしよう」


「え……?」


 何を言われているのかわからないまま、あたしはそれに頷いた。

「うん、いいよ」

 言葉通りの“デート”ではないと踏んで。

 気晴らしがしたい時に、気晴らしを提供してくれるという人がいるのだから、断る理由なんてなかったんだ。




 とはいえ。


 自室のベッドに座り、じっと部屋を見渡す。

 ……“デート”って言われたからにはデートなわけで。

 何を着ていけばいいんだろ。


 実は、あたしは、彼氏がいたこともなければ、デートに誘われたこともない。……いわば、これが人生初のデートってわけである。

 まあ、小学生の『リコ、あそぼー』ってのを抜きにすれば、だけど。


 ちょっとオシャレしていった方がいいのかな。

 気合い入れすぎて場違いだったりしたら……。


 悩んだ末、とりあえず新しい服を着ていくことにした。

 お出かけ用に買ってあった服。かわいい系のショートパンツだ。




 そして土曜日の朝。

 ちょっとドキドキしつつも、あたしは玄関のドアを開けた。

「ん」

 ろくに挨拶もない、ローテンションな拓真が、そこに立っていた。


「うん」

 緊張の末、あたしまでちょっとおかしな挨拶になる。


「えっと、電車に乗るんだよね?」

「ああ、そういえば、言ってなかったな。尊敬してるイラストレーターの原画展があってさ」

「そうなんだ」


 ちょっとホッとする。

 きっと、本当にデートらしい遊園地だの動物園だのなんだのに連れて行かれたら、どうしたらいいかわからなくなってしまうに違いないから。


「なんて人?」

「スズモトトモって人」

「へぇ……」


 その頃には、緊張はほぐれつつあった。

 行きたい場所があって、誘ってくれただけなんだ。

 いつも通りのローテンション。気負うことなどない。


 けれど、歩き出そうとした拓真は、何かに気づいた様に足を止めて、こちらを振り返った。

「あ、そうだ」

「え?」

 拓真を見上げる。

 いつもはそれほど気にならないが、拓真もそこそこ背が高い。尚ほどではないけど。


 そして、拓真はあたしを見て、こう言ったんだ。


「今日の莉子、かわいいな」

そんなわけで、デートイベントです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ