33 「おいで」(2)
いつも通りの日常だった。
ただ、教室の中は放課後のイベントのことでどこかしら浮き足立っており、それに反してあたしの気持ちはどんどん重くなっていった。
「今日のカラオケ行く?」
なんて言葉が、そこここで聞こえた。
「綾、今日の行く?」
「行かないわ、予定があって。佐々ちゃんは?」
「私も。……ってかさ、こういうのってなんか……」
どうやら、行かない子たちはあたしに気遣っていたようだった。
総合して見たところ、みんな、前カノの誕生日に今カノの誕生日をわざわざ祝う男みたいな印象を持ってしまったみたいだ。実際に、そういう事実はなくても。
気を遣わせて、申し訳なく思う。
いつも通りの平日。時間は淡々と過ぎていった。
祝ってくれる友達みんなに、笑ってみせる。上手く笑えていればいい。
放課後は、女の子たち何人かでカラオケに行った。
あたしの、誕生日祝いと称して。
小さなケーキまで用意してもらって、嬉しかった。
嬉しいのに。
火が消えたロウソクを前に、うまく言葉が出ない自分に戸惑う。
「あ……。ごめ……」
「ケーキ食べよっか」
と、クラスメイトの佐々ちゃんが話を逸らそうとしたところで、優香が、
「にしても、あり得ないよね。なんで今日?」
と眉を寄せた。
それを皮切りに、女子たちの不満が噴出する。
「仲いいヤツとだけでやるならいいけどさ。あんだけ仲良かったから誕生日知ってるくせに、なんでクラスみんなに声かける?」
「おかしくない?」
「当てつけっぽいと思ったー」
その情景を、あたしはぽやんと眺めてしまう。
こんな話をされたら、余計辛くなってしまうんじゃないかって思っていた。
けど、思ったよりそんなことなかったみたいだ。
「だよね」
と、あたしは苦笑する。
思っていたよりも、友達が騒いでくれるのは悪い気はしなかった。
「あんなのやめなよー」
とか、
「いい男紹介するよ!中川っていうんだけど」
とか、そんな話になってきたところで、みんなでケーキを食べ、歌い出す。
なんだ。
あっさりしたものだ。
散々歌って元気になって。
一人、夕闇の中で帰途につく。
尚なんかがいなくても、誕生日は楽しかった。
たくさん笑ったし、たくさん歌った。
家に近付くにつれて、あの二人に会いませんように、なんて思ったけど、そんな心配もなく家に帰り着く。
……こんな時間じゃ、まだみんなカラオケかな。
家に入ると、リビングが明るかった。
「ただいまー」
母が、夕食を作っているところだった。
「あれ、豪華だね」
テーブルの上には、いつもよりも豪華なサラダやスープ、肉料理などが所狭しと置かれている。
「誕生日でしょ」
と、当たり前のような返事が返ってくる。
「けど、ケーキは土曜日でしょ?」
「そうよ〜」
にこっと母の可愛らしい笑顔がこちらを向いた。
「だってあなた、今日は友達とケーキ食べて来たんでしょ」
「うん。まあ」
「今日はお父さんも早く帰れるって言ってたから」
「……うん」
こんな風に、祝ってくれる家族もいる。
思ったよりも、17回目の誕生日は、嬉しいものだった。
ちゃんと、そう思えた。
佐々ちゃんは苗字が佐々木なので佐々ちゃんと呼ばれています。見た目はギャル系寄り。




