30 夕食はファミレスで(1)
「莉子!」
突然の拓真の声に驚く。
「はい!?」
「こ、ここまでありが……ありがとう……っ」
両手を握られる。
驚いたのも束の間、拓真が目の前で泣き出したのだ。
えっ……えええ……。
「そ、そんなに感動しないで……!情緒がぶっ壊れてるよ!?」
なんていう会話をしたのがつい3日前。
カーテンの向こうで光で合図されていることに気づいて、あたしが自室の窓を開けたのは、そんな夕方のことだった。
「莉子。今晩、ヒマ?」
「え、あ。う、うん……。ちょうどご飯どうしようかと思ってたところ」
昔の恋愛ドラマでも見ていたんじゃないかっていう雰囲気だけど、この人は大丈夫だろうか。
「この間の礼するからさ、ちょっと出かけよう」
「え、今日?いいの?まだ作業終わってないよね?」
そうなのだ。
まだ、表紙用のカラーイラストを描いている真っ最中のはず。
実際、テンションがまだおかしいじゃないか。
「大丈夫。線引き終わって、色塗りに入ったから、余裕よ」
「もう〜〜〜」
あたしは知っていたのだ。
「昨日、拓真の部屋から、『俺の2時間が〜〜〜〜!!』って聞こえたけど?」
「やり直したよ。むしろ2時間で済んだのは俺の丁寧な性格があってこそだから」
「じゃあ……お礼ってことなら」
そんなわけで、あたしたちは近所のファミレスのボックス席を二人で占領したというわけだ。
「好きなもの食べていいよ」
「そんなこと言って……。お金ないの知ってるんだからね」
拓真は基本的にお金がない。
出来る限り漫画を描く時間を作っているのと、勉強の方も真面目にやっているのもあって、バイトなんかは最低限しかやっていない。
それも、本を作るためにほとんど使ってしまっているはずだ。
時間は有限なのだ。
けど。
今シーズンのパフェのところに、この間クラスの子が言っていた、美味しかったというパフェが載っているのが見えた。
「じゃあ……」
と、2000円のパフェをいただくことになったのだった。
真っ白なムースの上に、桃!桃!桃ソース!
目の前の大きなパフェに向かって、スプーンを突き立てようとした、その時だった。
「あ」
と、声がして顔を上げる。
そこにいたのは、尚とアンナちゃんだった。
相変わらず二人、腕を組んで歩いていたみたいだ。
「尚人」
「兄貴……」
「二人だけ?」
と会話を続けたのは拓真の方だった。
「ああ。うん。今日、父さんも母さんもいないだろ?だから……」
尚は少しきまりが悪そうだ。
「じゃあ」
と、拓真が立ち上がり、自分の座っていた席を空ける。
「ここで食べたら?」
拓真があたしの隣に座った。
「え」
尚が、あたしと拓真の顔を見比べた。
「えぇ……」
と、アンナちゃんは嫌そうだったけれど、尚は前の席に座ることにしたようだ。
正面に、尚が来る。
こんなに近くで尚を見たのは、もう数週間ぶりかもしれなかった。
さて、初めて4人揃いましたね!四角関係を繰り広げて欲しい!




