22 お見舞い(1)
日曜日。
つまりそれは体育祭の翌日だったわけだけれど、きっと家にいるだろう莉子のことを思うと、僕は家から出られずにいた。
足は悪化してないだろうか。困っていることはないだろうか。
そして、心にずっと引っ掛かかっているものをまた思考の渦に呼び戻す。
昨日、通りすがりに聞いた声。
『今の先輩見たー?あれって彼氏?』
『さっきも二人でいたよね!親密〜?』
『お姫様だっこうらやま〜』
『あたしも先輩の前で転ぶフリしよっかな……』
総合すると、莉子が誰かにお姫様抱っこをされて保健室に行った、らしい。
相手が誰か、なんて。
……十中八九、兄貴なんだろうけど。
莉子のピンチにそばにいて、助けられる存在。
それはずっと、同い年の僕の役目だと思っていた。
同じ学校。今年は同じクラス。
兄貴なんかより、ずっと一緒にいられるのに。
なんで……肝心な時にどうにもならないんだよ……。
さすがに、あの足だと今日は兄貴の部屋には行かないよな……。
雑誌を読むでもなく手に持ったまま、キッチンへと入る。
最近は、アンナが居着いているので、キッチンへも入りづらい。
静かに誰もいないのを確認し、冷蔵庫からリンゴを2つ引っ掴むと、僕は家を出て行った。
大股で歩く。
その勢いで、莉子の家のインターホンを押す。
じっと、インターホンのカメラを凝視する。
それから2分ほど経っただろうか。
……いない、のか?
塀を乗り越えようかと目論んでいるところへ、
「はーい」
と、莉子が玄関から出て来た。
「え、もしかして、そんなに足痛い?」
玄関に出てくるまで2分もかかるとは……。
「あ〜……、ちょっと腫れてきちゃって。でも、病院行ったから大丈夫」
「そか。おばさんたちは?」
「今日は元々用事あったんだ」
「じゃあ、今一人?」
「うん」
「じゃあ、何か手伝う」
そう言って、半ば無理矢理に莉子の家へ上がらせてもらう。
「あれ?尚、用事あったんじゃないの?」
言われてみれば、なんで来たのか言ってなかったか。
手に持っていたリンゴを一つ莉子に投げて渡す。
「え?」
「見舞い」
理解した瞬間、莉子の顔がパッと明るくなった。
「昼食は自分で?」
「うん」
「じゃあ、それは僕がやるよ」
なんて会話をしながら、階段を上がる。
いつものようにベッド脇へ腰を下ろし、二人でリンゴをそのままかじる。
そういえば、この部屋入るのも久しぶりだな。
なんて思った時、一つのことに気づいてしまい、ブワッと顔が熱くなる。
お、おばさんたちが今いないってことは……、家の中に莉子と二人きりってことで……。
いやいやいや。
何かあるわけじゃない。
何かあるわけじゃないが……。
ちょっと……、こんなに強引に入っちゃいけなかったんじゃないかとか、いや、これはチャンスなんじゃないかとか、色々思いを巡らしながら、僕はリンゴを口へ運んだんだ。
気持ちを伝えてしまえばハッピーエンドなんでしょうけども……?




