表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕らは一度も始まらなかったはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。  作者: 大天使ミコエル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/58

22 お見舞い(1)

 日曜日。

 つまりそれは体育祭の翌日だったわけだけれど、きっと家にいるだろう莉子のことを思うと、僕は家から出られずにいた。

 足は悪化してないだろうか。困っていることはないだろうか。


 そして、心にずっと引っ掛かかっているものをまた思考の渦に呼び戻す。


 昨日、通りすがりに聞いた声。

『今の先輩見たー?あれって彼氏?』

『さっきも二人でいたよね!親密〜?』

『お姫様だっこうらやま〜』

『あたしも先輩の前で転ぶフリしよっかな……』


 総合すると、莉子が誰かにお姫様抱っこをされて保健室に行った、らしい。


 相手が誰か、なんて。

 ……十中八九、兄貴なんだろうけど。


 莉子のピンチにそばにいて、助けられる存在。


 それはずっと、同い年の僕の役目だと思っていた。

 同じ学校。今年は同じクラス。

 兄貴なんかより、ずっと一緒にいられるのに。


 なんで……肝心な時にどうにもならないんだよ……。


 さすがに、あの足だと今日は兄貴の部屋には行かないよな……。


 雑誌を読むでもなく手に持ったまま、キッチンへと入る。

 最近は、アンナが居着いているので、キッチンへも入りづらい。


 静かに誰もいないのを確認し、冷蔵庫からリンゴを2つ引っ掴むと、僕は家を出て行った。


 大股で歩く。

 その勢いで、莉子の家のインターホンを押す。

 じっと、インターホンのカメラを凝視する。


 それから2分ほど経っただろうか。

 ……いない、のか?


 塀を乗り越えようかと目論んでいるところへ、

「はーい」

 と、莉子が玄関から出て来た。


「え、もしかして、そんなに足痛い?」

 玄関に出てくるまで2分もかかるとは……。

「あ〜……、ちょっと腫れてきちゃって。でも、病院行ったから大丈夫」

「そか。おばさんたちは?」

「今日は元々用事あったんだ」

「じゃあ、今一人?」

「うん」

「じゃあ、何か手伝う」


 そう言って、半ば無理矢理に莉子の家へ上がらせてもらう。


「あれ?尚、用事あったんじゃないの?」


 言われてみれば、なんで来たのか言ってなかったか。

 手に持っていたリンゴを一つ莉子に投げて渡す。

「え?」


「見舞い」


 理解した瞬間、莉子の顔がパッと明るくなった。




「昼食は自分で?」

「うん」

「じゃあ、それは僕がやるよ」


 なんて会話をしながら、階段を上がる。

 いつものようにベッド脇へ腰を下ろし、二人でリンゴをそのままかじる。


 そういえば、この部屋入るのも久しぶりだな。


 なんて思った時、一つのことに気づいてしまい、ブワッと顔が熱くなる。


 お、おばさんたちが今いないってことは……、家の中に莉子と二人きりってことで……。


 いやいやいや。

 何かあるわけじゃない。

 何かあるわけじゃないが……。


 ちょっと……、こんなに強引に入っちゃいけなかったんじゃないかとか、いや、これはチャンスなんじゃないかとか、色々思いを巡らしながら、僕はリンゴを口へ運んだんだ。

気持ちを伝えてしまえばハッピーエンドなんでしょうけども……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ