表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕らは一度も始まらなかったはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。  作者: 大天使ミコエル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/19

19 体育祭(4)

 何事にも、アクシデントはつきものだ。


「パン食い競争のパン足りません!」

 なんてこともままあることだ。


 実際、誰かが持っていってしまったのだろう。パン食い競争に使うはずのパンは、5つほど足りなかった。

「購買に多めに注文したのに〜」

 とはいえ、足りないものは仕方がない。


「私、ちょっと購買に聞いてきます!」

「わかった。誰かこの辺りのパン屋、検索して」

「最悪、コンビニのパンを詰め替えるしか……」

 なんていう方向で会話が進む。


 3年生のスマホが鳴り、購買に行った子から、「お団子しか余ってないそうです!」と報告が入った。

 全員で、吊るしたお団子に飛び跳ねる生徒を想像したけれど、串の危険性からやめておくことにした。


「あたし、ちょっとパン屋まで走って行ってきます」

 あたしがそう言うと、3年生は力強い顔で頷く。

「よろしくね、莉子ちゃん」


 急いで駆け出す。

 後ろからは、3年生の、

「あなたはパン屋に連絡して。予約しておいて!」

 という声が聞こえて、心の中で感謝した。


 とにかくあたしは走ればいい。

 パン屋なら、正門から500メートルといったところ。


 門を出るところで、

「莉子!」

 と声を掛けてきたのは、拓真だった。


「パン屋に行かないといけなくて」

 そう告げると、拓真の顔は途端に真剣になる。

 理解したという表情で、

「俺、今日チャリだから」

 と、自転車の鍵を取り出した。


「頼りになる〜」


 自転車に乗ると、拓真が右手を上げた。

「え……」

「いってこい!」

「え……、ああ、うん」


 元々、拓真は間違ってもこんなことを言う人間じゃない。

 その謎テンションのハイタッチを受け取って、あたしは自転車にまたがった。


 高い……、けど、乗れないことは、ないか。


 あたしはパン屋へと急ぐ。


 パン屋へ入ると、もうパンは袋に入れられ、店員さんが待ち構えていた。

 ソワソワしながらパンを確認すると、店員さんがソワソワしながらお会計を済ませてくれた。




「先輩!」


 息も絶え絶えに、パンをパン食い競争担当に受け渡す。

「ありがとう莉子ちゃ〜ん!」


「お金、後で払うから」なんてやり取りをしながら、あたしは息を整える。


 あたしはその時、非常に疲れていた。

 非常に疲れていたのだ。


「あっ」


 と、近くで小さな叫び声が上がった。

 そちらを向くと、応援合戦に使う大太鼓が、運ばれて行くところだった。

 運ばれて行くはずの大太鼓は、誰かがつまずいた結果、そこからゴロゴロと転がったのだ。


 受け止めようと、両手を伸ばした。

 それは、後で考えれば間違いだったとわかるけど、その時は、誰も怪我なんてしないように行動することだけが頭の中にあったのだ。


 ドン、と受け止めると、思ったよりも衝撃は大きかった。

 太鼓はなんとか止められたものの、あたしの足は足元の小さな段差に蹴つまずいた。

「あ、痛っ」


 そうなってしまえばもう、手遅れだったのだ。


 床に座り込み、足首を手でさする。


 これは、まずいことになったって、その瞬間にわかった。

ほのぼのだけで終わるわけないですよね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ