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僕らは一度も始まらなかったはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。  作者: 大天使ミコエル


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17 体育祭(2)

 滞りなく進む体育祭。

 スタート地点に、尚が立っているのが見えた。ついでに、中川君も。


 次の競技は借り物競走だ。

 借り物の内容は1年生が任されており、内容は教えてもらえなかった。

 なんでも、

『先輩と言えども、情報漏洩の危険は全て排除いたしませんと!』

 ということだった。


 尚と中川君が隣同士に立っている、ということは、同じ回で走るのだろう。

 借り物競争の準備がうまく流れているのを確認しつつ、あたしは競争を一人、楽しむことにした。


 最初に走るのは3年生。

 つまり、3年生は盛り上げ役ということ。

 面白い競争であるとはいえ、この短時間で盛り上げるのは至難の業だ。


「ではよーい、スタート!」

 放送と同時に、スタートの引き金が引かれる。

「うおおおおおおおお!!!!」

 参加者の勢いはよく、借り物の紙までひとっ飛びだ。


『長いもの』と書かれた紙を取り、綱引きのロープを持っていく者もいる。

『ものさし』と書かれた紙を取った者は、数学教師の所へ行ったけれど、流石に体育祭でまでものさしは持ち歩いていなかったようだ。


 そんなこんなで、見守っている借り物競争の中、一部で「おぉ〜!?」とどよめきが起こった。

 パッと振り向くと、借り物競争に参加している男子生徒が一人の女子を連れて歩いてくるところだった。

「おおっと〜!?これはまさか……!?」


 ……!?

 ま、ままままさか……、す、好きな人、とか……?


 マイクを通した声が校庭にこだまする。

「お題は……、『クラスメイト』だー!」


 クラスメイト……?


 改めて、二人を見る。

 女子の方が、

「付き合ってません!」

 なんて、力強く否定しているようだ。

 けど、これは……。

 男子の方が周りを牽制している。

 つまり……そういうことで間違いないってことじゃないか。


「ほ、本当にあるんですね、ああいうの」

 隣にいた1年生が話しかけてきた。

「漫画ではよくあるけど……」


 そういえば、拓真もそんな展開の漫画、描いていたことがあったっけ。


 人を連れてくるようなお題も書いてあるんだ。

 つまり……、『好きな人』なんて書かれた紙があってもおかしくないってことだ。


 まさかそんなのを尚が引いて、……アンナちゃんを連れて行くところを見せられたらどうしよう……。

 若干の恐怖とともに、2年生の借り物競争が始まった。

「うおおおおおおおお!!」

 怒声だか罵声だかに近い雄叫びがこだまして、尚と、ついでに中川くんが走り出した。


 尚は流石に叫んではないか。中川君は気合の入った雄叫びをあげているけれど。


 心臓がドキドキする。

 見守るだけで、息が止まりそうだ。


 尚の足は速くて、一番乗りでお題の場に到達した。

 紙を開きじっと見ると、尚はこちらに顔を上げた。


 ドキリとする。


 まさか、私じゃ……。


 そうこうしてるうちに、尚がこちらに走って来た。


 それに、中川くんも。


「…………?」


 尚が、目の前に来る。

 ついでに、中川君も。


 尚があたしの右腕を取れば、中川君はあたしの左腕を取った。


 ん〜〜〜〜〜〜???


「どういうことなの……っ」

楽しい借り物競走のお時間です!

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