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僕らは一度も始まらなかったはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。  作者: 大天使ミコエル


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14 体育祭実行委員(2)

 正直、仕事を手伝ってくれる人がいるのはありがたかった。

 プリントの作成や備品の整理で、なんだかんだと作業に追われていた。


「俺、ちょっと先生に使用許可取れてるか聞いてくるわ」

「じゃあ、あたしタイムスケジュール書くから」

「ワタシ、競技一覧書くね」

「ああ、それならちょうどいいテンプレートあるから」


 なんて。


 やることは少ないながらも、準備期間は少ないので、怒涛の毎日になってしまう。


 帰りは4人一緒。

 そして何故か、途中からは3人一緒だ。

 中川くんが駅へ向かう道で分かれた後は、あたしと尚とアンナちゃんで、帰ることになった。

 アンナちゃんは何故か、毎日尚の家へ帰っているようだった。

 そして、相変わらず尚の腕がアンナちゃんの定位置になっており、あたしは後ろからとぼとぼとついていくしかなかった。


「それでね、昨日リタと電話したんだけど」

 アンナちゃんはずっと、尚と話してばかりだった。

「リタ、って昨日言ってた子!」

 それは大抵あたしにはわからない話ばかりだ。


 正直、一緒に歩きたくもないし、尚に振り向いて欲しくもないというのがあたしの気持ちだ。




 気付けば準備は、粛々と進んでいた。


「応援団楽しみだなー」

「そうそう。団長さん気合い入ってるみたいじゃない?」

 なんて優香と綾が楽しく話している横で、あたしはぐったりとお弁当をつつく。


「莉子は忙しそうだね」

「まあね」


 それというのも、実行委員の仕事である来賓関連の資料作成に加え、リレーの選手にまでなってしまったものだから、練習が大変なのだ。

「今年のメンバー、めちゃくちゃやる気あるんだもん。毎日練習〜」


 綾が、あたしの疲弊した顔を見て笑う。

「じゃあ、今年はうちの組が優勝するわね」


 それを聞いてあたしは、プレッシャーによってより一層食事が進まなくなったのだった。




 夕陽が当たる学校の廊下は、長く伸びる影が見えた。

 5月に入る前の追い込み作業では、もう夏なんじゃないかと思うくらいの暑さだ。


「体育祭終わったらさ、二人で打ち上げしようぜ」

 と、言ったのは、あたしの隣を歩く中川くんだった。

 あまりにも疲れているあたしへの、労りの言葉だった。


「二人で?」

 てっきり、手伝ってくれた尚とアンナちゃんを入れて、4人で打ち上げするだなんて言うんじゃないかと思っていたのだ。

「でしょ。実行委員は俺ら二人じゃん」


「そうだね。そうだよね」


 二人が手伝ってくれたのは、ありがたかったはずなのに。

 中川くんにとってもありがたかったはずなのに。

 あたしはどうしても、その言葉に泣きそうになってしまったんだ。


「じゃあさ、駅前のアイス、食べに行こうよ」

「いいね」

 そして中川くんは、ふざけた調子で、

「やっべぇ、デートじゃん」

 なんて付け加えたのだった。

莉子ちゃん、走ることは走れますが、特別得意なわけでもないです。

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