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Lv5・バンパイアからの求婚



拝啓 母上様と父上様

貴方達の娘、平々凡々の日向朱莉です。

例のお姫様の件が無事に解決。やっと落ち着いてきたところでした。

……はい、そうです。過去形です。もうそれは過去のことなのです。

魔王様不在=問題が起きるというのは定番になってしまったのかもしれませんね。あはは。

……まあ、今日は佐々木君が横にいるだけマシ、なのでしょうか。

あはは!はははは!はははは!……はぁ。

笑ってないとやってられませんよ、全く。



「先日のコウモリです。貴方にどうしても言いたいことがありまして……」



そういや、つい最近怪我したコウモリを助けたなぁ。

半ば投げやりになりながら、私は目の前の青年を見た。

真っ黒い翼を生やし、ニコリと笑う口から鋭く尖った犬歯が見える。

そして、視線が合うと青白い頬にほんの少し朱が混じった。

……あはは、嫌な予感しかしないんですけど。

どうにか私の手を握る青年の手を振り払おうとするけど、なかなか上手くいかない。

そうこうしている間に、青年は口を開いた。



「一目ぼれです。俺と結婚してください」



……母上様、父上様。

初めてされた告白は、人間からではありませんでした。

(……というか、貴方の種族にも結婚という概念があるんですね)






 ◇ ◇ ◇






青年はクラウスと名乗りました。

姿の通り、バンパイアらしいです。(吸血鬼でもドラキュラでもなく、バンパイアなんですね)

血は飲まなくても生きていけます!と胸張って言われた。(だからなんだ)

でも、貴方の血は飲んでみたいですけど……と、色っぽい目で見られた。(やめてください)

新居はどこに建てましょう?と私の手の甲に口づけをした。(話の展開が早すぎる)

どうしよう、と佐々木君の方を見ると……彼は口を手で押さえ、笑いを堪えていた。(助けてよ!)



「必ず幸せにします!……いえ、一緒に幸せになりましょう!」



……あれ、なんかちょっとキュンときた。

って、いやいや!!落ち着け、私!良く考えろ。

この人(人でいいのかな?)と私はほぼ初対面だ!

……断ろう。うん、それだ。それがいい。



「あの、ごめ」

「では、とりあえず俺の家へ行きますか」

「いや、あの」

「ああ!その前に、お父様に挨拶をしたほうがよろしいですか?」

「(父さんここにいないし!)いや、だからですね」

「わかってます。殴られる覚悟はできております」

「(できてんのっ?!)あの、話を」

「心配しないでください。貴方への愛は、貴方のお父様には決して負けません!」



……駄目だ、この人全然話聞いてくれない。

ちらり、と横にいる佐々木君を見る。彼は、がんばれと口パクで私に伝えた。

……人ごとだと思って……



「ところで、お隣にいるのはお兄様ですか?」



その問いで、私はあることを思いついた。(思わずニヤリ)



「いいえ、私の恋人です」

「……は?」

「だからクラウスさんとは結婚できません。ごめんなさい」



これでどうだっ!

秘技"潤んだ目"でクラウスさんを見つめる。(涙は女の武器なのよ!)

すると、どうしてだかクラウスさんは佐々木君に向かって爽やかにニッコリと微笑んだ。



「じゃあ、別れてください」



……つ、強いっ……!






 ◇ ◇ ◇






「あ、どうぞ。どうぞ」

「どうもありがとうございます」



思わず固まる私の横で、佐々木君が当然のように言う。

う、裏切り者っ!!

そう思って睨みつけるが、彼は知らんぷり。



「これで障害はなくなりましたよね?では、結婚しましょうか」



もはや決定事項?!

ヤバい、このままだったらこの人とゴールインしちゃうよっ!!ピンチ!



「クラウス、少し焦りすぎではないか?」

「魔王様」



て、天の助け!!さすが我らが魔王様っ!!

キラキラとした目で魔王様を見つめていると、魔王様もこちらを見た。



「アカリ」

「はい!」



さすがは魔王様!助けてくれると信じてましたよ!



「お前は今何歳だ?」

「……17ですけど」



なんで年齢を聞くんですか?

ん?と首を傾げる私と佐々木君と違って、クラウスさんはその言葉の意味を理解したようだ。



「ああ、それなら、魔王様の言うとおりです。俺、焦りすぎていました」

「だろう?」

「魔王様、それってどういうことですか?」



私の疑問を佐々木君が魔王様に聞いてくれる。

魔王様は、「そうか、お前たちは知らなかったか」と説明をしてくれた。



「人間たちはどうなのか知らんが、ココでは20歳にならんと結婚ができんのだ」



……結構遅いんですね。

日本では女性は16歳、男性は18歳で結婚できるんですよ。魔王様。

ぼんやりと考えていると、クラウスさんがそっと私の手を握った。



「すみません、アカリさん。貴方があまりにも美しすぎて、年齢のことをすっかり失念しておりました」



美しい!それって、本当に私に使っていい表現なんでしょうか?!



「心配しないでください。俺は3年ぐらい待てますから。……3年後、再び申し込みますね」



そして、私の左手の薬指にそっと口づけをした。






 ◇ ◇ ◇






「毎日はさすがに来れませんが、時間がある時を見つけて会いにきますね」



そう言って、城からクラウスさんが立ち去ってから私は気づいた。

……け、結局なんの解決にもなってないっ!!ただ先延ばしにしただけじゃん!!



魔王様の役立たずっ!!

本人に面と向かって言えない私は、枕に向かって叫んだ。

……次の日、食事抜きになったのはこれのせいかもしれない。


なんというか。ドンマイ、私。




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