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Lv4・魔王様の代理をする




拝啓 母上様と父上様

お久しぶりです。日向朱莉です。

すっかりここでの生活にも慣れ、自分でもびっくりしております。

例の佐々木君の件ですが、魔王様はなかなかてこずっておられるようで、未だに元の世界へ戻る方法は見つけられておりません。

ドンマイ、佐々木君。

あの魔王様をてこずらせる術を編み出すなんて、お姫様の執念は(ぶっちゃけ引くほど)深いみたいでございます。

本当ドンマイ、佐々木君。

そんな佐々木君は現在魔王様と一緒にお出かけ中です。

……後からきた佐々木君のほうが魔王様と仲良くなってるような気がするのは、気のせいでしょうか?

まあ、そういうことで現在この城にいるのは私だけなのです。

……なのにっ!



「魔王様、助けてくださいっ!」



どうしてだか、目の前で土下座をする美しい女性は私にそう訴えた。

私魔王様じゃないしっ!






 ◇ ◇ ◇






彼女は、自分をマルセラ・エスメレルダ・アンブリス・ミロと名乗りました。

どうぞ、セラとお呼びください魔王様、と彼女が言うのでセラと呼ばせていただきます。

この際、私が魔王様でもいいでしょう。

それほど、セラはとても金箔……いえいえ、緊迫とした空気を纏っておりました。

……え?なんで、そんなに丁寧に話すのか、ですって?

私の目の前にいる美しい女性が、あまりにも高貴な雰囲気を醸し出しているからでございます。

何と言いますか、『敬語を使わないと、ヤバい』みたいな雰囲気でございますよ。オホホホ。

……非常に疲れたので、ここらで止めにします。

とりあえず、セラはほろほろと涙を流しながら私に言った。



「私の愛しの御人がこちらにいらっしゃいましたよね?」



……それって、佐々木君のことですか?



「私のために、魔王様を倒そうなどと無謀なことを考えるなんて……可愛らしいところがありますでしょう?」



……それって、佐々木君のことですか?



「滑らかな黒髪に、艶々とした肌、程よく引き締まった身体をした素晴らしい御人でございます」



……ああ、それって、佐々木君のことですね。

ここまでで、私はこの美しい女性が誰だかピンと来ました。

というか、ピンとこないほうがおかしい。



――――相当な面食いらしい。国中の顔立ちの良い男だけでは足りんらしく、異世界から顔立ちの良い男を呼びだそうと勉学に励んだらしい。

――――最近そのような術を編み出したという噂が流れておったが、小僧が第一号のようだな。



ええ、ええ。つい最近聞いた話ですよ。

……こちらのかた、この国のとんでもないお姫様でございます。

執念というのは恐ろしいものですね。……まさか、佐々木君のために魔王様に直談判しに来るとは。

その執念を別のところにまわそうとはお考えになられなかったんでしょうか。

顔のいい人の考えはよくわかりません。(ちなみに、頭のいい人の考えもよくわかりません。)(だって、私は普通をつき進む一般人!)






 ◇ ◇ ◇






ほろほろと泣きつづけるお姫様。

私は一体何をすればいいのでしょうか?選択肢を作ってみました。


1・佐々木君が帰ってくるのを待つ→佐々木君を生贄→グッバイ、佐々木君!!

2・魔王様にどうにかしてもらう→魔王様は佐々木君と一緒に帰ってくる→そうだ、小僧を生贄にしよう→グッバイ、佐々木君!

3・嘘を吐く→「実は2、3日前に逃げたんだ」→魔王様と佐々木君帰宅→佐々木君がいることがバレる→生贄→グッバイ、佐々木君!


……なんということだ!佐々木君生贄EDしか思いつかないっ……!!

うんうんと唸る私に、セラは嗚咽を漏らしながら口を開いた。



「お願いします、魔王様……あの御人をお返しください……っ!」



悲痛な叫び。……これだけを聞いたら、愛しの恋人を命がけで救いだそうとしている健気なお姫様なのに……

実際は、イケメン=私のものというただの我儘お姫様なんだよなぁ……

……うん。我がクラスの癒しをこんな我儘お姫様にとられるわけにはいかない。

私はぐっと、拳を握った。



「顔をお上げなさい、セラ。彼なら今頃、城に戻っていることでしょう」

「そう、なのですか?」



潤んだ瞳が私を見つめる。……上目づかいがこんなに自然な人初めて見た!

私は自分を落ち着かせながら、穏やかな笑みを浮かべる。



「ええ、なぜなら彼によって魔王は倒されたからです」

「……貴方様は、魔王様ではないのですか?」

「はい。私は何百年も昔にこの城を魔王に奪われたただの哀れな幽霊でございます」



足あるけどね!この際そんなこと気にしない。



「そ、そうなのですか……」



幽霊、と聞いてセラは少し顔を青ざめた。お、いい感じだ。後少し!



「わかったのなら、早く城へお戻りなさいな。きっと彼も、貴方を待っておられるでしょう」

「あ、ありがとうございます!」



そうして、セラは疾風の如く去っていった。

……とんでもないのに好かれたね、佐々木君。



「日向サンキュー」



佐々木君の声がした。いえいえ、どういたしまして……と笑いながら、ん?と首を傾げる。

……なんで、佐々木君の声がするの?



「アカリ、よくやった」



今度は魔王様の声。……どこから?そう思ってきょろきょろと周りを見ると……



「……そんなところで何やってんですか」



私の座っている立派な椅子の後ろの床から、2人はのそのそと出てきた。



「何って、隠れてたに決まってるだろ?」



佐々木君はパンパン、と埃を払いながら言う。……どういうこと?と私は魔王様を見た。

魔王様も埃を払いながら、私に言う。



「入口に姫の姿が見えたからな、こちらから入ってきた」

「……ちなみにいつからいたんですか?」

「『魔王様、助けてくださいっ!』からだ」



…………最初っからじゃん!!!



「いたなら助けてくださいよ!」

「俺は争い事は嫌いだ」

「私だって好きじゃないですって!!」



私の叫びを無視して、魔王様は「人間避けの結界をはらないとな」と言う。

無視しないでくださいよ!と再び叫べば、棒読みで「よくやった、アカリ」と言って、大きな手で私の頭を撫でてくれた。



……こ、こんなんじゃ誤魔化せないんですからね!魔王様!!




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