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ネクロダスト  作者: 李津
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エピソード8


「ほらあそこだ、見えるだろ?」


校舎にもたれる様にして眠っている十二歳くらいの女の子が見えた。


「どうする?」


「私は…。できれば助けたい。」


「正気か?あの子を助けたとしてもし俺たちの事をバラされたら…。」


「バラされて何か問題あるのかな、通常のロードでも中層まで入って私たちを捜索するのはかなり困難だと思うの。それにダストの中に逃げ込んだのは向こうももう分かっているでしょ。」


「トナはどう思う?」


「助けるのはいいが、先にあの子が持っているものを調べる。」


俺は女の子に近づいてその子の装備品を手に取った。通信機などあれば先に壊しておきたいと思ったのだがどこかで落としたのか持ち物の中には見当たらなかった。


「変なものは持っていないようだな。」


「ひとまずここに長時間いたらこの子が危ないと思うの。どこか浄化できる場所を見つけないと。」


「だったらこの場所から少し離れよう。ここは上層が近すぎる。」


助けるも何も俺たちが見つかっては元も子もない。


「そうね、わかったわ。」


女の子を背負って三十分ほど歩いたところにある小さなあばら家に入った。


「とりあえずここを浄化して制御剤を飲ませるわ。」


女の子をおろし、シェリーが薬を飲ませた。

しばらく目覚めそうもないからとアルドはその辺りを探索してくると言って出て行ってしまった。

シェリーは女の子の頭を撫でている。


「やけに手馴れているな。」


「私にも昔妹がいたの。妹もこれくらいの歳だったからいてもたってもいられなくて…。二人には迷惑だったよね、ごめん。」


「…。」


そういえば前に言っていた気がする。研究所で妹は死んだと、


「この子を助けてどうする?研究所に送り返すのか。」


「もし、二人が許してくれるならこの子を私たちで育てられないかな?」


「それは…。」


――――ゲホゲホッ


「お姉さんたち誰ですか?ここは…。」


「よかった!目が覚めたのね…。私たちはその…。」


「俺たちは別の研究所に所属しているロードだが、探索中にお前が気絶しているのを見つけてな。とりあえず休めるところに連れてきたという訳だ。」


「気絶…。そうだったのですね、ありがとうございます。」


「それで、お前はあんな深いところで何をしていた?通常のロードはこんな所まで探索しないだろ。」


「うっ…。私がいる研究所ではこれが普通なんですっ」


嘘をついているな。これはきちんと問いただす必要があるようだ。


「嘘をつくな。大人ならともかくお前はまだ子供だろう。」


いくら研究所の連中が畜生でもロードの希少価値は分かっているはずだ。


すると突然、勢い良くアルドが扉が開けた。


「まずい、人感探知機を発見した。まだここから距離はあったがいずれはここにも…。多分その子を探しに来たんだと思うぜ。」


「そんなっ 私にはまだやることが…。」


「おっ、その子目覚めたのか。とにかくここから逃げるぞ、お前名前は?」


「名前はジーナですっ あの!私も連れて行ってくださいっ」


「もちろん、置いていくなんてできないもの!」


自分から一緒に来たいと言う言葉を聞いてシェリーは喜んだ。


「ジーナ、体調はどうだ?走れないなら背負って行ってやる。」


「大丈夫です!」


俺たちはダストの中を二つ離れた街まで走り切った。

ここまで来れば探知機は振り切れただろう。しかし、人感探知機か…。俺たちがいた研究所にも一応あったのだが便利は良いものの燃費がかなり悪くコストパフォーマンスが低かったせいであまり使用されていなかったため忘れていたな。まさか、あれを使っている研究所があったとは。あれが存在している限り中層も安全では無いということだ。


「はぁ…。」


「大丈夫?ジーナちゃん」


「大丈夫です!」


「少し休憩にしよう。」


そう言って適当な家に入り、腰を下ろすと静かにジーナは話始めた。


「お兄さん、お姉さん、助けてくれてありがとうございました。実は私、一週間前に突然居なくなった姉を探しているんです。研究所の人たちはもうお姉ちゃんはシビトに落ちたって言うけど私には信じられなくて…。だって約束したんです、ずっと一緒にいるって!だから…。」


「だから…。だからあんなに深いところにいたの?」


「そうです。次はお兄さんたちの番…。さっき別の研究所に所属してるって言ってましたけどそれって嘘ですよね?人感探知機から逃げてましたし…。それに私が逃げるのも手伝ってくれました!」


「お前、そんな事いったのか。」


「まぁ…。」


「ジーナ、お前は賢い子だな。そうだ俺たちはどこの研究所にも所属してないロードだ。」


「やっぱり…!そうだったんですね!皆さんの名前も聞いてもいいですか?」


「そういえば言っていなかったな、俺はアルドでこいつがトナ。このお姉ちゃんがシェリーって言うんだ。」


「アルドさんにトナさんにシェリーさん!うん、覚えました!」


「いい子だ」


案外かわいい子だとか言ってすっかりアルドとトナは気に入ったようだ。このロリコン共が。


「ということは皆さんはずっとダストの中を旅してるんですよね…?他にも生きてるロードを見たことありませんか?私のお姉ちゃんとか…。」


「生きてるロードなら、」

「いや、見たことないな。」


俺はシェリーに目配せした。


「そ、そうね。生きてるロードは見てないわね…。死んでるロード、シビトなら何人も見てきたけど…。」


ここで余計なことを言うのは止すべきだ。カルロ達にも口止めされているし たとえこの事を教えたとて、一週間前の出来事ではあの町との関係は無いだろう。


「そうですか…。お姉ちゃん…。」





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