エピソード7
さて、土を求めて下の方にある町までやってきた俺たちは数人のシビトに囲まれていた。
現在中層においてシビトは貴重な存在なので出来れば殺したくないのが本音なのだがまだ牢の準備も何もしていないので今回は仕方がないか。
シビトを殺しその血液を採れるだけ取った。
「はぁ…俺らの武器もさ、いつダメになるか分からねぇしメンテナンスしたいよな。」
「そうだな、武器がなければ戦えない。」
「武器よりも先にライフラインの確立が先よ!この布地の袋に土を詰めれるだけ詰めてちょうだい。」
ここに来てから不便になったことの方が多いがシェリーは今の方が生き生きしていると思う。
「はーい…」
この袋は近場の村で拾った布を三人で縫って作った物だ。シェリーはともかく初めて裁縫をした俺たちはかなり手こずった。細かく縫わないと土が出てきてしまうのだ。それでも多少は出てきてしまうだろうから土を水で少し湿らせてから入れるようにしてみたが。
これを一人一つ、三人で担いで登ることにした。できるだけ往復したくないので仕方がない。
「ハァ…ハァ…」
ちなみにシェリーは登り始めた最初から息が切れている。
もちろん俺たちも手一杯なので持ってやることは出来ないのだが…
「おい、大丈夫か?少し休憩するのもありだな。」
「だ、だいじょ、ぶ。もし遅かったら先に行ってもいい、よ。」
「いや俺たちも疲れてるからペースはこのままでいい。」
「うん…ハァ…」
下りたスピードの倍の時間をかけて俺たちは拠点に戻った。
「よくやったな。」
「うん、なんとかね…そうだ外は風が強くなると大変だから建物の中に畑を作りましょ。」
「わかった。」
土の量的にもそんなに大きな畑は作れないから建物の中でも問題ないだろう。
床に土を引いて石で回りを固めた。
「なぁ、これ野菜育てるのはいいけどいつ食えるんだよ?」
「大丈夫よ、この種は品種改良したものでダストの環境下でも問題なく育ち この肥料をかけることによって成長スピードも十倍以上らしいわ。」
「あー、ジェネリック野菜な。たまに研究所でも出てきたけどあれって不味いんだよなぁ」
ダストによって世界の土地の半分以上が半壊したこの世界では、食料の品種改良もたくさん施されてきた。味はかなり落ちるが背に腹は代えられない。
「よし、これで問題ないはずよ。みんなお疲れ様!」
実ったらまた種も収穫できると言っていたからこれで安定して食べ物は手に入るはずだ。
「風呂もできたし畑もできた、まだまだ完ぺきとは言えないが最低ラインはクリアしたな。」
「後はダストの中をもっとよく知っておきたいな。」
俺はアルドが記録してくれている地図を手に取った。俺たちが知っているのはこの場所から近い二つの集落と離れたところにある死者の町だけだ。
「ダストは広い、もっと探索するべきだと思う。」
「そうだな、少し危険だが上層も行ってみるべきかもな。」
「上層はあまりに危険では…。研究所に所属するロードも探索している場所なのよ。」
「だが、上層には研究所で使わなくなった資源も捨ててある。」
「とにかくそれはもう少しこの辺りを探索してからにしましょ?」
「じゃあ今日はこの辺りに行こうか。」
俺は地図に丸をつけた。
今は拠点から六時間ほど歩いたところにいる。当初そんなに離れたところに行くつもりは無かったのだが
拠点は一つだけじゃなくいろんな所にあった方がいいよなという意見の元かなり足を延ばし過ぎてしまった。
「おい、これ帰れなくなるぞ…」
「でも見て!あの階段から先、ダストの色が薄くなっているような…」
「たしかにな。来たときは必死だったから気づかなかったが、もしかしてあれが上層ということなのか。」
「そうね、でも私たちが来た方向とは違うから別の上層なのかも。」
「どっちにしろ研究所はそこらかしこに存在している。察知されたら危険かもな。」
俺たちは引き返し、近くの町に入った。
「この建物は学校…?」
そこには二階建ての細長くて大きい建物があった。多分校舎だと思うがその裏手を探索していたアルドが珍しくもテレパシーを送ってきた。
『二人とも聞いてほしい、今校舎の裏側に俺はいるんだがそこに人間の女の子が倒れているのを見つけた。』
『なんですって?』
『多分、ロードだと思う。どうする…?このままほっておいたらシビトに落ちてしまうが…』
『とりあえず俺たちもそっちに向かう。少し待っていてくれ。』
こんなところにロードだと…。
助けるにはあまりに危険すぎるがどうする…。