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ネクロダスト  作者: 李津
2/12

エピソード1


「よっ、おつかれさん。」


「アルド!帰っていたのか、無事でよかった。」


「まぁなんとかな。」


こいつはアルド。同じネクロロードでこの場所に来て初めて仲良くなった奴だ。

ロードは全員、空間把握能力が高く近い距離であればテレパシーを送りあえる能力を持っているのだが

それに加えてそれぞれ固有の能力を持っている。当然、持っていない奴も中にはいるが固有能力持ちはレア物扱いされる事が多い。

アルドは完全記憶という能力を持っていて一度見たり聞いた事柄を忘れる事は無いそうだ。


一応俺にも固有能力はある。魔眼と言って能力を発動してる間、この目を見せると相手に麻痺を付与し動けなくする事が可能だ。この能力があるおかげでシビトともまともに殺り合えているという訳だ。

まぁ、テレパシーの方は会話すれば済むのでほとんど使う事は無いが。


「そういえば聞いたか、他の研究所から新しいロードが来るらしい。」


「あぁ、なんか研究者共がバタバタしていたな。」


「この事で少しでも日々の任務が楽になると良いんだが。」


「無理だろ、ここの連中が俺たちロードの事を少しでも考えてくれた事があったか?どうせ使い潰されて終わりさ。」


「それもそうか。」


アルドは本当に良い奴だ。ここに来て研究者はもちろん他のロードにも馴染めなかった俺に声をかけてくれた。あいつの気さくな性格に何度救われてきたか。

だからこそ、驚いたんだ。アルドがあんな大事件を起こそうとしていたなんて。




「本日付けでこの研究所に移動してきたシェリーだ。みんな仲良くしてやってくれ。」


次の日、研究者から紹介されたシェリーという子は長い金髪を後ろで二つに縛った小柄な女の子だった。


「はじめまして、よろしく。」


短い言葉で紡がれた挨拶はとてもかぼそくて今にも壊れてしまいそうだった。


その日の夜、ゴソゴソという音と共に同室のアルドが部屋を出ていこうとする気配を感じた。

毎日の事だ。ここ最近アルドは一人で部屋を出ていく。俺たちロードに入室を許可されている場所は多くは無い。一体どこに行っているんだか...。


俺は起き上がり、決して広くはない俺たちの部屋を見渡した。

今までアルドの物を勝手に触ったりしたことは無かった。だが、その日はなぜか気になってアルドが小さいころから持っている箱の中身を見てしまった。もちろんカギはかかっていたがいつも着ている上着の左ポケットに入っている事は昔から知っていたのですんなり開けられた。


「なんだこれ...」


そこには手書きの地図が何枚かあった。これはこの研究所の地図だと直ぐに分かった。さすがに七年も居るのだ。入ったことが無い部屋も多いが大体は何となく分かる。そしてこっちはこの辺り周辺の地図だと思った。アルドは一体何をしようとしているんだ。


地図を見ることに夢中になっていた俺は後ろの気配に気が付けなかった。


「おいトナ、何勝手に見てんだ?」


「ごっごめん!つい...」


帰って来ていたのか、気づかなかった。アルドはまぁいいけどよ、と言いながら俺から地図を取り上げた。


「なぁ、アルド。なんで地図なんか用意してるんだ?」


「何れはお前にも話そうと思っていた。聞いてくれるか?」


「わかった。」


「なぁ…トナ、お前は一生このまま研究所の連中に飼い慣らされたままで良いと思っているのか。」


「どう言うことだ。」


「俺たちは孤児で、抗う術なくここに連れて来られロードにされたな。」


「そうだな。」


「死んで行った仲間もシビトになった仲間も大勢いるよな、そいつらを見て来てお前はどう思った?率直に言うが、

ここから逃げて自由になりたいと思った事はないか?」


「それは…」


それはもちろんある。だがアンネクロの制御剤をここの連中に貰わなければ俺たちは生きられない。

シビトに落ちてまで自由になりたいとは思わない。


「この地図は俺がここ数ヶ月間でこの研究所の全てを知るために用意した物だ。そして分かった事がある。」


「…。」


「ここは研究所だ。ダストがここまで及んだ時やシビトに襲われた時、予想外の災難にみまわれた時情報を各国に奪われないためだとは思うが、この場所を爆破する装置があった。」


「どう言うことだ。各国に奪われない…?他の国にもロードは居ると聞く、なのに情報を隠す必要があるのか。」


「どうやらロードが居るのは一部の国だけで、まだダストがそれほど及んでいない国や機関はロードを用いる事自体に反対していると記されていた。だが、当然だよな。こんなふざけた事…人間がする事かよ。」


「それでここを爆破して、ロードの居ない国に逃げると言うのか…。そこの連中が俺らを匿ってくれる保証も無いしそもそも制御剤がっ」


「慌てるな、俺の固有能力を忘れた訳じゃないだろ。

数ヶ月かけてアンネクロの事も制御剤の事も調べ尽くしたさ。シビトさえ退治出来れば俺たちでも制御剤は作れるんだ、問題は無い。

それに…たとえ各国が受け入れてくれなくとも俺たちは自由になる権利がある。一生こんな所でただシビトになるのを待つくらいなら俺は決行すると決めた。」


「そう…か。」


「だがな、俺にはお前が必要だ。一緒に来てくれないか。」


「アルド…本気なんだな。」


「あぁ、もしかしたら後悔する事になるかもしれない、だが一緒に来てくれたら必ず守ると約束する。」


「守るって…俺男なんだが…。まぁそれだったら俺もアルドを守るよ。ずっと一緒に居てくれた兄弟のようなお前を一人にはしない。」


「フッ…ありがとなトナ。」


その日の明け方俺は夢を見た。これは七年前の夢だ。ロードにされて怖がっていた俺にアルドは言ってくれたんだったな、大丈夫俺が守ってやるって。

そうだった。昔からこいつは何にも変わってない。


だから俺もお前を守れるようになるよ。





今日の夜決行する。




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