エピソード11
「二人ともごめんっ!私…。やっぱりさっきの場所に戻るよっ」
「は?どういうことだよ。」
俺は自分が言ってしまった事を後悔した。
シェリーにとってジーナとの絆は俺が思うよりももっと深いものだったのだ。
「ごめんなさい…。私はもう妹を失うのは嫌なの。」
「冷静になれ、あいつはお前の本当の妹じゃない。」
「そんなの関係ないよ。あの子の様子からしてお姉さんに何かあるのは本当だと思うもの。」
「お前が捕まったら俺たちにも類が及ぶ。そして浄化の力が無いと俺たちも生きられない。」
「そうだけど、このままほっとけないよ…。私は例え死んでもあの子を守りたいの。お願い。行かせて!」
馬鹿だな、と思った。シェリーが捕まったとしても 例え俺たち三人で捕まったとしてもジーナの処遇は研究所にある。全ては研究所の連中のさじ加減で決まるというのに。
だがそれを言ってもシェリーは聞かないのだろうな。
「そんなのできるわけないだろ!俺らだってお前とはもう仲間だって思ってるんだぞ、ジーナジーナって言うがお前は俺らよりその子を選ぶのか?」
アルド、それは愚問だ。自分の妹と俺たちどちらを取るかなんて明白なんだ。
「ごめんなさい…。」
ほらな。
「お前…。」
「二人は逃げて、カルロさんの所に行って!そこだったら生きられるでしょ?」
すべて、全てこの女の筋書きが見えてしまった。彼女は本当に俺たちとの絆をきるつもりなんだな。
「絶対に約束する!カルロさんの事は研究所の奴らには喋らないから。」
確かに、シェリー一人捕まった所であまり意味はないかもしれない。だが死者の街の人々や俺たち、全員を捉えることができたらジーナを救える可能性はうんと高まる。
俺は勘違いをしていた。今まで短い時間ではあったが三人で旅をしてきて確実に絆を深められてきたと思っていたんだ。生きていたってどうしようないロードでも仲間を、家族を持ってこのダストの中で生きていけると信じて疑わなかった。多少の制限はあっても他の人間たちのように生きていけるって信じていたのに。シェリーを仲間だと信じていた。なのに…。
こんな決断、したく無かった。殺すしかないそう思った。
ここで殺さないととんでもない事になると。
でもできなかった。
俺はシェリーを殺せなかった。
「それじゃあ 私もう行くね…。二人とも今までありがとう。」
そう言って立ち去ろうとする彼女の首にかかったネックレスがきらりと光るのが見えたからだ。
シェリーが行ってしまうのを俺たちはただボーっと眺めていた。
「はは、俺たちもざまぁねーな。人助けなんてして、あの子供は助けるべきじゃなかった。」
「人はこんなにも残酷になれるもんなんだな。今まで一緒に生きてきた俺たちよりもつい最近出会ったジーナを選ぶなんて。」
「まぁ、な。なぁトナ、シェリーは俺たちの事やカルロさんの事を喋ると思うか?」
「愚問だな。あいつの喋る喋らないの意思は関係ない。研究所の連中はどんな手を使ってでも口を割らせるだろ、例え死人の口からでもな。」
「そうか、だが浄化の力が無いんじゃ俺たちも生きていけない。カルロさんには悪いが俺たちを救えるのはあの町しか無いよな。行こうぜ」
「あぁ。」
もう歩き始めた道を引き返すことは出来ないんだ。俺たちもあいつも。