エピソード9
「お姉さんの事は残念だけど今はこの付近から離れるのが得策だと思うの。」
「でも...、私もう一人ぼっちは嫌なんです」
「大丈夫、貴方のお姉さんの代わりにはなれないかもしれないけど私で良ければずっと一緒にいるから!」
「ほんとう?」
「うん、貴方が望んでくれるなら。」
「えへへ うれしいです!」
それじゃあそろそろ行こっか!シェリーの明るい声を聞いた俺たちは立ち上がった。
それから数時間かけてまた来た道を戻る。
途中、ジーナの眠そうな声を聞いたシェリーは気遣って背負ってあげていた。シェリーはジーナを自分の妹と重ねているんだと思う。
拠点に戻った時にはすっかり夜遅くになっていた。
「ジーナ、着いたよ。」
「わぁ ここが皆さんの拠点ですか?」
「うん、まだまだライフラインは整ってないんだけどとりあえず、ね。個室はこっちにあるから今日はもう休んで。眠いでしょ?」
「ありがとうございます!拠点はここ一つだけなんですか?」
「私たちもここに来たばかりなんだ、作るとしてももう少し生活できるようになってからかな?」
「へぇ…。そっか!それじゃあおやすみなさい~」
一瞬、ジーナが子供とは思えない表情で笑った気がしたが気のせいだろうか。
「私もジーナを寝かしつけたいし今日はもう休むね。」
そう言ってシェリーも行ってしまった。
「あの子をどう見る?」
「どうって?」
「いや…。少し気になることがあってな。」
「そうか?まぁお前は少し邪推する癖があるからな。」
「それもそうだな。ロードになってからどうも疑い深くなったみたいだ。」
「あぁ、それに子供に何ができるって言うんだ。気になるなら見張っていればいいだろ?」
「わかった。」
正直、気になることは何点かあった。姉を探していると言いながらあの区画から俺たちと共にすぐに離れたことだ。早く見つけなければシビトに落ちるかもしれない状況で姉より俺たちと一緒に来ることを選んだ。まぁ、あの子の姉が失踪してから一週間以上経っているとなるとほとんど諦めていた可能性も高いが…。
いずれにせよ今考えたって答えはでないな。
「俺ももう休むよ。」
「あぁ、お休み」
次の日からジーナを合わせた俺たち四人での生活が始まった。
と、言ってもやることは変わらない。周辺の村や街に使えるものを探しに行って畑の世話を交代でした。
「こういう生活も悪くないですね、自由って感じで!まぁいろいろと不便なところもありますけど…。お風呂とか。」
やはりジーナも風呂が水でしか使えないところに不満を持っているらしい。
「ほんとそうだよね、そうだ今日は私と一緒に入る?」
「えっ、シェリーお姉ちゃんと?」
「うんうん、一緒に入ったら寒くても楽しいよ!」
「うーん、、それはやめとく…。」
「どうして?せっかく仲良くなったんだし良いじゃない!」
シェリーはどうしてもジーナとお風呂に入りたいようだ。
「わ、私体に大きな傷があって...それを見られたくないの。」
「そうなんだ。なんか無理言っちゃったようでごめんね…。」
「ううん、お姉ちゃんのことが嫌いだからじゃないからね?」
「うふふ、わかってるよ。」
「よかった...!」
この子も過去にいろいろあったんだな。このときはそんな風に考えていた。
それから数日過ぎた日の事だ、ある日ジーナは拠点から姿を消した。