第七十八話:帰省の計画
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ホスロが兵を引き連れドラグーンに入城してから、既に一週間が経った。
南方連合を形成する際に、軸となるであろう国々の使者や君主も、その大半が到着している。
ドラグーン皇国、オアシス村、アッディーン公国。
これらの三カ国は勿論。
更に、ラマ朝(一部)、カラファヴィー王国、ロードレイル王国、ユスタン王国、ユトレイル王国、トッティチェリ公国、ロデッサ伯国、ガーレイル伯国……等々全て挙げればキリが無い。これらは全て、一定以上に発展した都市を保有している国々である。
ラマ朝以下の、この八カ国。一応全て、ドラグーンに忠誠を誓っている。
しかしながら、その実、カラファヴィー王国とユトレイル王国、ガーレイル伯国は、召集の催促が来た瞬間に、マラレルにも使者を送っており、どこまで協力的かは懐疑である。
ただ、ユスタン王国、トッティチェリ公国、ロデッサ伯国は、ゼノンに心底従順であり、アッディーン公国とも親交があった上に、マラレル同盟側と長年国境を接し、いざこざを抱えている。
きっと、良き協力者となるだろう。
__レマナとの初夜も終えた、ドラグーン滞在中、ホスロは南方の情勢に明るいグリヴェルをしきりに呼び寄せ、相談相手とした。
エレノアやクレア、それにヨナタン等は他用で忙しいらしい。あまり彼らと話す機会は無かった。
「なるほど、ロデッサ伯国がのぅ…そんなに熱心だったとは」
「ははっ、マドラサと、旧サーラタナ朝(オアシス村領)、との中間南部に位置しており、マラレル王国とニクスキオン朝との戦争を期に、北上しようと計画していたのだとか」
ロデッサ伯国に住む、武官の友人から聞いたらしい。
「確か……常備兵は二千、いざ遠征となれば、千五百程は捻出出来ましょう」
「なるほど」
千五百……随分と潤っている国だ。小国にしては、中々な容貌では無いか。
「他にもトッティチェリ公国、ユスタン王国等も、ロデッサ伯国同様、マラレルの領土を削れるならば、身を粉にして働くでしょうな」
すると、ホスロの目が、一段と輝いた。
「エレノア様より……今頃、我らの動向を探ろうと躍起になっているであろう南方哨戒部隊を滅ぼした後は、一切の兵権を譲ると仰せつかっておる」
「左様で」
そして、また、少年は息を殺すようにして、数えてゆく。
「公国からは、目一杯の三千、オアシス村からは二千」
「ゼノン皇帝から、千の精鋭を、息子に率いさせ、与力として付けてやる…と言われている」
グリヴェルは、下を向いたまま、黙っている。
「そして…運良く行けば……そなたが申した、ユスタン王国、トッティチェリ公国、ロデッサ伯国からそれぞれ……千五百程来れば……どうじゃ」
……ここで、グリヴェルは顔を上げ
「護国卿、お忘れですか」
「我が国には更に……マドラサ貴族の子弟達により構成された、旧マドラサ防衛部隊の残党五百がおります」
「あぁ…そうだったな」
「上手く行けば……一万余兵を、俺は率い得るのか」
妄想すれば、ふと、笑みが溢れた。
女を抱いた時よりも、更なる興奮と高揚感が、全身を颯爽と駆け巡り、勃起さえする。
「あは、ははは……ひひひ………ど、どうじゃ」
「一万…一万じゃで?」
「グリヴェルよ、お前は興奮せんのか?」
髭面の金髪の青年は、相変わらず、目を伏せている。
「多少は」
「夢が、広がるのぅ……」
「地図が、見える……聖地ホルセリアに至る、地図が」
どうやら、少年の目には何かが見えているらしい。
「護国卿、もし万を超える兵を率い、大博打を打つ時が来たならば……ソレらを広く展開出来る土地をお選びなされ」
だが、グリヴェルはすぐに眉をひそめ、自身の発言を後悔する。
「しかしまぁ…中々無いですなぁ…そのような格好の土地など」
それに、ホスロはニィ……と引きつったような、満面の笑みをしつつ
「いんや、あるぞ」
「見よ」
懐から、ゴソゴソと巻物を取り出し、グリヴェルの目の前に、投げるようにしてバサッ…と広げる。
「ここよ」
続けて、少年は木製の簡易な指揮棒を採りつつ、ある土地を指し示した。
「……旧…アッディーン伯爵領…」
地図を見せられつつ、グリヴェルは、ポツリ…と溢した。
「道案内ならば、任せよ……もし決戦になれば、俺はここに陣取る」
「旧領は、本当に良い土地じゃ、鷹狩りの名地よ」




