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第七十話:始まり


____


「さぁ…着いたぞ、ここじゃ」


だが、彼らは、話しつつも、歩みを止めなかった。

コツコツ……歩く、歩く……そして、案内者であるゼノンの歩みは、巨大な青銅製の扉の前で終わる。


左右の壁は、風景は……やはり牢獄の様な色彩の、分厚い魔木で変わらぬのに……その扉だけ、扉だけが、見るからに異質な、気味の悪い建造物。


_扉は青く、そして冷えており、何より……鼻をこじ開け、貫くようなひどい腐肉臭がした。


「うっ……陛下、この扉は」


「『不死鳥の扉』じゃ、昔、むかぁし、まだ、儂が産まれてすら居ない、太古の昔に作られた扉じゃよ」


「四大精霊の一柱、聖地の始祖、土の王『ノーム・ホルセリア』が作った趣味モノらしい」


(おや……四大精霊とな……)と、ソレを聞き、すかさずホスロは、体内のサラマンダーに尋ねる。


(おい、レマロナ、ノームだとよ、お前の仲間じゃないん?)


(『ふむ?……ふむ、あぁ…懐かしい名だなぁ……土の王ノーム、良い戦士だったさ』)


(『いやねぇ…だが、驚いたよ……まさか…こんな"悪趣味"を持っていたとは……嘘つきめが』)


グックククとレマロナは、低く意地悪そうに笑う。


(悪趣味?…____)


「陛下、コレはまさか……生物を薄く伸ばしたモノに……金属を溶かして……」


すると、ダンテが、後方より声を張り上げ、目を細めつつ、怒った様な表情で、ゼノンに問うた。

少し、困惑した様な声音でもある。


「その通りだ、人間、竜、馬、トカゲ……果ては我等、龍竜人族(ドラドラ)まで……当時の土の王は余程暇だったらしい」


皇帝は、寂しそうに口元を緩めた。

そして、更に扉に近付いて行き、そのままガサガサ、とその生物と金属で出来た扉を撫でながら


「先ほど、見せたいモノが有る、と儂は言ったな」


「……はっ」


ホスロは、音を立てずに頷く。


「"コレ"よ」


「……?」


「この、不死鳥の扉じゃ、ノームが基盤を作り、勇者一行が完成させ、そして壊した」


そして、皇帝はまたもや、ガサガサ、と撫でる。大きな青銅門を。我が子のように、唯一の希望のように。


「少し、昔話をしようか……いや、見てもらおうか」


「人に見せるのは、タレス以来かのぅ……」


そして、ゼノンは手慣れた感じで、青銅門(不死鳥の扉)の前で手印を示しつつ


「二人とも、もっと寄れい、この、不死鳥の扉に触れなさい」


弟子に教えるかのようにして、ホスロとダンテの手を、それぞれ、扉に触れさせた。


扉は、限りなく、冷たかった。


(心地ええな……)


この感覚、この、体から力が抜け、視界が乗っ取られた様な。

自我はあるのに、無いような。


不思議な、不思議な、夢のような。



______



「リューク、リューク!!」


扉の中では、一面の、緑色の草原が、遥か彼方まで敷かれている。

だんだん明瞭になって行く____その、草原の上に大小さまざまな、藁葺きの住居がポツンポツンと建てられた小規模の村……村…かな。


始まりの地、マラレル。


「……んだよ、"アヴェルナ"」


目の前に写るは、可憐な少女。当時では忌み嫌われた赤目の、長い銀髪の。儚げで、それでいて、冷静そうな。氷の様な雰囲気の、背のやや高い少女である。


見たくもない……ここから、始まったのだ。数百、千年を超える、長い苦悩が、死出の旅が。


「リューク、冒険に行こう!」


「冒険だよ、さぁ、さぁ」


________


視界は、完全に例のアヴェルナという少女と、少年が……"リュクリーク"が喋っている景色一色…それだけであるが、声だけは、現実世界の物音でさえも聞こえて来る。


「ホスロ殿、お主、アッディーン一族と言ったな」


「不死鳥の目玉の適合者よ、天晴、天晴!!」


ホスロは困惑しつつ、姿は見えぬ皇帝の声に耳を傾けた。


「さぁ、今から流れるは…偉大なる冒険譚の一節じゃ、暗く、そして壮大であり……さぁ、さぁ、ホスロ殿、お主の旅は、まだまだ長いのぅ!」


____


「さぁリューク、いざ冒険に」





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