月曜は必ず来る。
この作品はフィクションです。
少々怖い系の描写やグロテスクな描写があるかもしれません。
R15には指定していません。中学生のみんな!安心して読もう!
人ってさ、相手が自分と違うから、好きになったりするじゃん。
ロボットとか、人っぽさありつつも、その独特なフォルムがかっこいいわけじゃん。
でもさ、黒人差別とかしてる人とか、虫が気持ち悪いって言ってる人いるじゃん。そうゆう人見てると思うわけよ。
人ってさ、相手が自分と違うから、好きで、相手が自分と違うから、嫌いらしいんだよね。おかしいよね。
矛盾してるじゃん。
この世界ってさ、こういう不可解な、矛盾って言う点が集まって出来てるんだと思うんだよね。まぁこんなこと考えてるやつ。俺以外いないよな(笑)。
そんなことを考えながら寝床に寝転がる俺は天井を見る。
ある日曜日、俺…神木亮はいつも通りの日常をすごしていた。
いつもほぼやってる事変わんなくてつまんない世の中だけど、そんな日常をうるわすのがこの、
オンラインゲーム、今日は1日、朝(つっても午前10時くらい)から晩まで友人の海斗と勝己とゲーム。で、今に至るわけだけど、なんてゆうか…憂鬱だな…ああ…
………明日月曜日か……今日俺何してたんだろ…明日学校か…行きたくねぇな…まぁどうせ明日になったら行ってるんだろうけど。はぁ…
今日は早くに寝床に着くことにした。
ゆっくりと眠りに落ちる。すごくよく寝た。気持ちがいい。いっそこのまま起きたら日曜日でした!みたいなことがあればいいのに。そんな俺の期待は、裏切られるのだろうか。
そして月曜日を迎えた俺は洗面所にて違和感を覚えた。幻覚…いやそんなわけない。俺は顔を洗い目をゆっくり閉じる。そして勢いよく目を開けた。
幻覚じゃなかった。
俺の顔にくっきりうつる。「日」の文字。
落書きされた?
いやそんなわけない。顔に書かれているのではなく、顔に文字が浮かび上がっている。
「…なんだこれ………」
このまま学校行くのかよ俺。そんな辱めがあっていいのか。いや良くない。
よし今日は休むか。しかし今日は休めない理由がある。
そう、今日は2月14日…バレンタインデーだ…
気づけば俺は校門の前に立っていた。
来ちまったよ…学校。
俺は後ろから肩をたたかれる。
「おはよ。」
肩をたたいたのは友人の小山海斗だった。
「お、おはよ。海斗。」
そして俺は異変に気づく。
海斗の顔には「月」という文字が浮かんでいた。それだけじゃない。歩けば横をすれ違う全ての人の顔に月という文字が浮かび上がっていた。俺は教室に着く。
「やはりか…」
教室の生徒の顔には月という文字が浮かんでいた。
教室でもしばらく海斗と話す。
「なぁ亮、昨日のダマダマ。当然見たよな、」
「何それ…」
「は?ダマダマ知らんの?一年に一回冬にやるドッキリ番組だよ!最高視聴率48%だぞ!て、そういやお前ん家テレビなかったな…」
「ああ、なんだ、テレビの話しか…面白かったか?」
「もちろん、俺、12時まで見きったぜ」
「12時までやってたのか…」
「多分だけどこの教室のほとんどのやつがダマダマみてるぜ」
「そんなにか…」
しばらく海斗と雑談をしていると、教室に浮かない顔の勝己…宮本勝己が入ってきた。浮かない顔を見ると海斗はすぐ話しかけた。
「どしたん勝己、元気だせって。」
「あ、ああ、お、俺は元気なつもりなんだがな。」
そう言って笑う勝己の目は全然笑っていなかった。
そして勝己の顔には「日」という文字が浮かんでいた。俺と同じ。「日」という文字。
「勝己、ちょっといいか。」
そう言って俺は勝己をトイレに呼び出す
「俺も連れションするぜ」
そう言う海斗には教室で待ってもらうことにした。
「なぁ勝己、なんか変じゃないか。」
「変って、お前まさか、見えるのか、この字が…」
「ああ、俺には見える。くっきりとな。」
「他のやつは見えていなかった。」
「恐らくだか、文字が「日」の奴には見えるんじゃないか。」
「なるほど、そう言うことか。」
「いや、でもまだ断定はできない。もう少し様子を見よう。」
「わかった。」
勝己は少し安心し、いつもの元気を取り戻したようだ。
そうして、俺たちはトイレを後にした。
教室に戻った俺たちは、教室を見回す。
「おい、あれ…」
俺は勝己が指さす方を見る。
窓側の後ろから二番目の席。1番目立たない所にそれはいた。本を読むメガネの少女。その顔には「土」という文字が浮かんでいた。
「土…3種類あるのか…」
勝己のはそう言うが、三種類以上ある可能性もあるだろう。「日」と「月」そして「土」。
勝己が喋り出す。何か気づいたようだ。
「なぁこれって曜日だよな…」
「ああ、恐らくな。これ以外にあってもおかしくない。最高7種類あるとみていいだろう。」
窓際に座る少女を見つめていると前の席の海斗に話しかけられる。
「亮、お前あんなのが好きなのか?」
「あんなのって…失礼だぞ、確か名前は…篠原…」
「いやいや、あれはさすがにないわ。てか、狙うならやっぱ水谷だろ。」
水谷翔子男子からも女子からも人気が高いこのクラスのヒロイン的存在。勉強もスポーツも出来て、あの容姿と性格。多彩な才能を持っていることは明確だが、彼女の顔には「月」の文字が浮かんでいる。
…日、月、土…どのように割り振られているのか、基準が分からないな。
昼になり俺は1人で売店に向かった。廊下ですれ違う男子の会話が聞こえてくる。顔には「月」の文字。
「なぁなぁ昨日のダマダマやばかったよな。」
「ああ、あれは今までで1番だったよな。」
どの生徒も同じようなことを話しているようだな…
「そもそもあれ、見てないやついないっしょ」
「女子も見てるって言ってたしな。」
「ダマダマ関連で上手く女子と話せれば今日ワンチャンあるかも…」
「いやないだろ…」
そんな会話を小耳に挟み売店を訪れる。
しばらくすると後ろから声が聞こえてきた。振り返ればそこに海斗と勝己がいた。
「よう、神木!みてくれよこれ!」
そう言って勝己が取り出したのは消費期限が大きく過ぎたパンだった。
「今からこれを食おうと思う!」
「お前は本当に馬鹿なことが好きだな…」
「ねぇーんだよ食費が!財布忘れてきちまった。」
「そうか…止めはしない頑張れ。」
「そこは止めてもいいんだぜ、」
勝己の腹が音を鳴らす。
「ぐ、もう限界だ、クウシカナイッ!」
そう言って焼きそばパンの袋を開けた勝己は、一気にそれを頬張る。
「うぐっ、酸っぱい…だが行けるぞこれっっ」
「正真正銘のアホだな…」
「味覚が無いんじゃない?」
そう言って海斗は笑った。それにつられて、俺も笑いがこぼれる。
昼を過ぎ午後の授業が始まった頃、教室の後の扉が空く。真嶋龍介が遅れて教室に入ってきた。こいつはタチの悪い不良であるが、俺と少し仲がいい。
そして奴が入ってきてまもなく、俺と勝己は顔を見合わせる。龍介の顔に映る文字は「日」だった。龍介は自分の席に着くや、うつ伏せになって寝た。
先生は、何も言わず授業を続ける。そして勝己が立ち上がった。
「先生……お腹痛いんでトイレ行ってきていいですか………ぐふっ……」
許可を貰った勝己は教室を飛び出す。俺は振り返る海斗と顔を見合わせて笑った。だろうな、あんなもの食って腹を正常に動かす方が無理だ。
しばらくして、授業も終わりに差し掛かった頃、窓側の方から声が聞こえた。
「先生!月!見て見て!」
誰かがそう言うと、窓際にいた生徒が反応する。
「本当だ!すげー」
「え、こんな早くから月って見れるの?」
隣の教室からも騒がしい声が聞こえてくる。同じことに気づいたようだ。
窓側の生徒たちは立ち上がって窓の外を見る。それにつられるように、廊下側の生徒も立ち上がり窓側へ歩き出す。俺も、試しにと、歩いて窓の外を見ることにした。篠原が露骨に嫌がっているのが見て取れた。人とあまり関わるタイプじゃないことは十分に察する。
だがしかし、本当にすごいな。
空に浮かび上がった満月は、まだ空が明るいのに、真夜中のように輝いていた。
「おいお前ら、席に着け」
教師からの言葉を聞き、生徒が席に戻る。
篠原が安心しているのがみてとれた。先生の声や、少しの生徒達がざわついているのが聞こえる。授業も、もうすぐ終わりを迎える。それを悟ったか、生徒達が話す声が教室の各所から聞こえてくる。
俺は目を閉じる。しばらく生徒や先生の声が教室に響いていたが、すぐに収まり、静寂が訪れる。
それも長く。先ほどの教室とは思えない、奇妙なほどの静寂。長いこと静寂が続き、おかしいと思った俺は目を開ける。
そこに広がっていたのは…異様な光景だった。
生徒たちは皆、猫背になり下を向いていた。そしてその生徒たちの顔には、目も鼻も口も髪もない。
ところどころへこんでいて、白く美しく輝いている。
生徒たちの頭は、球体のように…月のようになっていた。俺はそこで、さっきまで生徒だったと思われるものに、とてつもない恐怖を感じる。窓側から椅子を引きずった音が聞こえた。篠原が立ち上がっていた。その顔に異変はなく、いつもの篠原、そして顔には「土」の文字。篠原は俺の机の前まで来て叫ぶ。
「早く…逃げるよっ!」
俺は篠原の声を聞いて立ち上がり、教室を飛び出る篠原に続く。廊下を走る音が響く。すれ違う教室はどこも異様な光景で包まれている。猫背になり机を睨む生徒たち。その顔は、月そのものだった。
俺たちは学校を裏門から飛び出し、裏山に向かった。
篠原は手際よくフェンスを乗り越え、山のふもとへ着く。俺もぎこちない動きでフェンスを乗り越え、篠原に追いつく。周りが木に囲まれていて簡単には誰かに見つかることはないだろう。周りに人…アレの気配もなかった。
「おい、篠原、ちょっといいか、」
「な、なに?」
「アレは…なんなんだ?とても人間とは思えない。」
「アレは…わかんない。わかんないけど、アレに捕まったら…殺されるの…」
「あと、なんでその、俺を助けるようなことをしたんだ?
あれの存在を知ってるんなら、俺に呼びかけて、俺を待たずにいち早く逃げるべきだったはずだ。
それに、俺が走っている時も、たまについてきているか確認しながら、俺にペースを合わせているように見えた。お前の足の速さなら、もっと安全に逃げられたはずだ。」
「…え、私が、足速いこと、なんで、知ってるの?」
「一目見れば分かるだろ、安定したフォームに、あの速さ、そして今も大して疲れていないのが見てわかる。」
「そ、その、神木くんて、すごいね、よく見てるっていうか、」
「お世辞なんかはいい、で、なんで助けるようなマネしたんだ、お前、人と話すのとか、あまり好むタイプじゃないだろ。」
「そ、それは………神木くんが、特別な人だからかな。」
特別、か、俺の顔にうつる文字のことを言っているのかは分からないが、俺を何かしらの感情で意識しているのはわかった。
「で、ここまで逃げてどうするつもりだ。いつまでも隠れられていられるとこでもないし、食料もないぞ」
「あ、それは大丈夫、今日の夜の、12時まで、生き残れば、たぶん…」
12時まで?なぜ12時までなのか理由を聞こうとしたがやめる。篠原はこれ以上俺と話したくない、というようにそっぽを向いていた。あまり深いことは聞かなくていいか。少々気にはなるが。
「篠原…その、下の名前は、なんて言うんだ?」
「えっ、えっと、きと…篠原希戸。」
キトって確か、エクアドルの首都だったような、エクアドルは赤道って意味で、キトは、地球の真ん中みたいな意味だったような気がする…関係ないか…
少しシリアスじゃない雑談をし、篠原と打ち解けた。
かなりの時間がたって、もう日が落ちかかっている頃、篠原が言う。
「トイレ、行ってきてもいいかな。」
もう時期日が落ちる暗くなればアレの姿も見えにくくなる。学校に戻るのは危ない。
「俺もついてく。」
そう言うと篠原は驚いたように言う。
「その…トイレ…だから」
「それは…その辺でして来るって意味なのか?」
「そうだよ…その、神木くんって、ちょっと抜けてるとこあるよね。」
「そうか、すまん」
「いや、全然謝ることじゃないって」
篠原がいなくなり、俺は勝己や龍介のことが気になってきた。…あいつら…大丈夫なのか…
そういえば勝己は学校のトイレから教室に戻ってこなかった。龍介は、寝ていたのを起こさずそのまま逃げてきた。その時俺は恐怖に溢れていて、自分のことしか考えられていなかった。……勝己…………………。
しばらく時が過ぎたが、篠原が戻ってくる気配はない。そもそも、どこまで行ったんだ……そんなに俺を警戒しているのか…。 もう少し時間が経って、俺は篠原を探しに行くことを決意した。
「篠原〜、どこにいるんだ~」
あまり声は上げられない。アレが何処にいるか、わからないからだ。
俺は木々をかき分けて進む。だが、篠原の姿は見えない。篠原を探し始めて、15分くらいだっただろうか、正直、迷ってしまった。そして俺は、木陰からの物音に気づいた。
「篠原?」
ソレは木陰から姿を現した。
制服をまとっていて、体格は篠原の倍くらいの大きさだ。そしてそいつの顔は、月のように輝いている。
俺はそれを見た瞬間足を動かして、逃げた。だが、それのスピードは異常。すぐに追いつかれているのがわかる。
俺の左の脇腹を何かが貫く。
ソレの腕が、俺の体を貫いていた。
黒いものが俺の体を滴って落ちるのが分かった。
「ぐっ…」
俺は腹を抱えて座り込む。もちろん笑っているわけじゃない。痛みに耐え、腹からの出血を抑える。
次の瞬間、俺の首に衝撃が走る。俺はその時さらなる恐怖を覚えた。人と似た姿をしたそれは頭を輝かせ、俺を見つめていた。
気づけば俺は校門の前に立っていた。
俺は後ろから肩をたたかれ身震いする。
「おはよ」
海斗から声をかけられるがしばらく反応出来なかった。
「どした?」
俺の反応を見て海斗は不思議そうに聞く。
「いや、なんでもない。おはよう。」
「なんだそれ、変な反応だな、失恋でもしたのか?」
海斗の冗談を聞き流し俺は淡々と教室へ向かう。
教室に入るとすぐに篠原と目が合った。
俺は篠原の机に歩き出す。
「篠原、ちょっといいか、」
「うん。」
俺は小声で話す。周りの生徒はそんな俺たちを気にとめない。
「昨日…と言っていいか分からないんだが、その、昨日の事覚えているか?」
「え、それって…記憶があるってこと?」
「ああ、お前もか。」
「おかしいな…」
「へ?」
篠原は不思議そうに俺を見つめる。
「昨日…12時まで生きてたの?」
「それは、ダメだった。」
「そう…私もダメだった。もしかしたら私のせいかもしれない?」
「いや、俺の不注意だ、気にするな。それと、さっきおかしいって言ってたな、それはどうゆう意味だ?」
「それは…1回私が生き残った時…神木くんと行動してたの。でも、途中で神木くんが捕まっちゃった。自分を囮にして私を逃がしてくれたの。 でも次の日、神木君は、その、記憶がなかった。」
「そうだったのか…」
俺は考え込む。
「なぁ篠原、昨日死んだ時どこから今日がスタートした?」
「えっと、私は教室の中だけど、」
「俺は校門の前だ。」
リスポーン地点は決まっていないのか。俺が教室に入った時、既に篠原はいたからな。
「何時くらいに今日がスタートしたかわかるか?」
「それは覚えてる。8時だったよ。」
俺は教室の時計を見る。8時15分といったところか、俺は海斗と話しながら教室へ向かった。そして今篠原と話している時間をプラスすると、だいたい15分くらいだ。俺もリスポーンした時間はおそらく8時だ。
篠原の死と、俺の死はおそらくタイムラグがあるはずだ。なのにリスポーンした時間は両者8時頃。
リスポーンする時間が決まっていると見るのが正しいな。篠原との話を終え、俺は席に戻る。すると、前の席の主が話し掛けてきた。
「お前、あんなのが好きなのか?」
「あんなのって…失礼だぞ。」
「いや、でも、なぁ?」
「なんだよ。」
「うちのクラスには水谷がいるし、」
「お前は本当に水谷と付き合えるとでも思っているのか?」
「それは…ワンチャンあるかも」
「まじかお前…」
「そういや、昨日何時まで起きてた?」
昨日、というのは日曜のこと…か。
「そうだな…10時半くらいに寝たかな、」
「はっっや!お前まさか、ダマダマ見てないのか?最高視聴率48%だぞ!俺は12時まで見きったぜ。」
「そう…なのか…」
初めてじゃない。この話。この流れだと確か…
「そういやお前ん家、テレビなかったな、がははは」
やはりそう来たか…昨日と少し違うところもあるが、話の内容自体は全く同じだ。しばらくすると、教室に浮かない顔の勝己が入ってくる。
「どしたん?勝己?」
海斗は異変をすぐに感じ取り聞く。
「いいや、なんでもない。」
本人は否定するが、おかしいのは確かだ。俺は勝己をトイレに呼び出す。
「俺も行く!」
「お前は少しじっとしてろ。大事な話をするんだ。」
「チェ〜」
トイレに着いた俺たちは会話を始める。
「勝己、単刀直入に聞く、昨日の記憶があるか?」
…勝己は答えた。
「え、昨日ってお前とゲームしてただろ、」
これでわかった。勝己には昨日の記憶が無い。恐らくトイレから戻ってきてヤツらにやられたことは想像できる。しかしなぜ俺と篠原には記憶があって、勝己には記憶が無い。俺は自分が死んだ時の状況を思い出す。確か…暗かったな、そして俺が死んだのは山の中で、勝己が死んだのは学校の中と思われる。場所が関係しているのか?しかしリスポーンは時間で決まっていた。時間が関係していると見るのが良さそうだ。 だか、まだわからないからな…とりあえず今日は、もう1人の「日」の持ち主に話を聞くことにする。それで何か見えてくるはずだ。
「神木、俺からも聞いていいか?」
「ああ。」
「なんか変なこととか、無い…よな?」
「これのことか?」
俺は自分の顔を指さして言う。
「お前、見えるのか?」
「ああ。」
「そうか、仲間がいて良かった。」
俺はそれ以上のことはあえて話さなかった。
まず、信じてもらえるか分からないからだ。本当は、昼休みには学校を抜け出して、隠れていたいところだが、勝己にはどう説明すればいいのか分からない。それに、実際その状況を見れば俺について来て、逃げるだろう。
そうして俺たちはトイレを後にした。
その後、自分の席に着いた俺は、机に2枚の紙切れが入っているのを確認する。
一枚は、篠原からだった。
「神木くん昨日はごめん。私が足でまといになって迷惑かけたくないから、今日は私一人で頑張ってみる。心配とかしないでね。」
篠原は昨日俺を無理やり山に連れ込んで俺が死んでしまったのに、責任を感じているらしい。確かに少し強引で、ついて行くしか無かったが、篠原がいてくれなかったら俺はわけも分からずもっと早く死んでいたはずだ。むしろありがたかった。…一人で頑張るとは、一体どのようにして生き残るというのか…後でまた話すか…。
そして、二枚目の紙切れは、差出人の名前が書かれていなかった。
「今日の昼。第二校舎裏に来てください。」
これは…まさか…今日はバレンタインだ。期待をするなという方が無理だった。
午前の授業中は、今日をどう生きるかずっと考えていた。ちょくちょく篠原と目が合う。なんだか、不思議に意識してしまっている気がする。今まで見ることもなかった席に目がいくのだ。休み時間になり、篠原に話しかけようとするが、既に別の女子に話しかけられていた。とてもじゃないが話しかけられなかった。
時は過ぎ、昼休みを迎える。
俺は誰よりも早く教室を飛び出し、メロンパンを二つ買った。学食に向かう生徒とすれ違う。その中に混じった勝己と海斗を見つける。
「おい、勝己。これ」
そう言って俺は勝己にメロンパンを渡す。
「腹、減ってるだろ。奢りだ。気にしないで食べていい。」
「まじかよお前!いいのか!今日ちょうど財布も食料も忘れてきてたんだよ!助かるぅー」
明らかに声のトーンが高かった。心から嬉しがっているのがわかった。
「さて…と」
俺は爆速でメロンパンを葬りさり、歩き出す。
「おい、どこ行くんだよ。」
海斗と勝己にとめられる。
「すまない、先生に呼び出しされているんだ。」
俺はあらかじめ考えていた嘘をつく。
「おま、どんな悪いことしたんだ〜。」
冷やかす海斗と勝己を振り切って逃げる。
そして俺は第二校舎の裏へと向かう。
正直、ドキドキしている。緊張している。こんなの人生初めてだからな…バレンタインの日に誰かからの呼び出し。気づけば俺は早足になっていた。
そこで、ふと思う。
もしかして、男子のイタズラかもな…なんだかそんな気がしてきた。だとしたら誰だ?俺がまともに話せる友人なんて海斗と勝己くらいだぞ…。
そう思うと弱気になってくる。でもまだ、胸は高鳴り続けている。
俺は第二校舎の裏に着く。
まだ誰もいないようだった。
まさか、本当にイタズラなのか?
そう思った時、俺は後ろから優しく肩をたたかれた。
そこに居たのは、意外な人物だった。
ここまで読んでくれてありがとう。
続きを書きます多分、てか、絶対。。
もし何かおかしい点などがあれば、見つけ次第教えて下さると助かります。
ここまで読んでくれてありがとう。