1話
時は経ち四月。俺は高校生になった。
「碧、このクエスト手伝ってくれ」
「分かった。はったら言って」
朝のホームルーム時間前、俺は教室で友人とゲームをするのが日課となっていた。
ちなみに、ツンツン頭で小柄の人懐っこいこいつは河野志輝。入学式の日に友人が前の席に座るなり話しかけてきたことから、仲良くなった。村の祭りに毎年来ていて、その話をされたときビクビクしたが俺だと気付いていないようでホッとした。
「やった。勝った。さすが神。ありがとう」
「お礼は紙ジュースでいいぞ」
「えー。帰りに二十円チョコ奢るで許してください」
「仕方ないな。良いだろう」
「交渉成立!」
志輝は俺の目の前に拳を突き出し、俺はそれに拳をぶつけた。
「志輝、宿題やってきたか。今日お前当たるぞ」
爽やかイケメンが古典のノートを見せていた。
彼の名は白谷和彦。志輝の中学からの友達兼お守り役である。
「あ、やっべ。やってない。助けてお母さん」
志輝が和彦に抱き着いた。ちなみに和彦は面倒見の良い性格で、クラス皆のお母さんである。俺も何度かお母さんにお世話になったことがある。
「分かった。助けてやるからノート開け」
「えー。写さしてくれるんじゃないの。今からじゃ間に合わないよ。お母さんの鬼」
「俺は、お前のお母さんじゃない。お前も駄々こねない。ほら、シャーペン持って。シャキっとする」
「はい!」
和彦は俺と話しながら志輝に宿題を教えている。俺と志輝と和彦と園芸部の当番で今はいない俺の幼馴染の山崎幸明の四人で駄弁るのが俺の毎日の日課である。
「おはよう。お母さん子守りお疲れ様」
幸明が予鈴と同時に俺達に話しかけてきた。幸明は俺の力を知っている唯一の友達だ。俺は村の中で特別な存在であり、周りからどうしても一歩引いて接された。だが、幸明だけは他の奴と同じように接してくれた。小さい時はまだ力をうまく使えず、植物達の影響を受けて気分が悪くなったり、急に共鳴して話し始めたりした時も他の人が見て見ぬふりをしている中、家族以外で唯一教えてくれた。
「幸明も部活お疲れ」
「ちょっと気になる花が何本かあって時間かかっちゃた」
幸明がチラっと俺を見た。治して欲しいってことだな。力の一つに植物の病気を治したり元気にさせたりする力がある。ただし、これも生命力と引き換えなので疲れるし、量が多すぎるとこっちがまいってしまので制限がある。なので、俺はあまり使いたくないのだが。弱っている植物を放っておくと、最近壮大な登場をしなくても現れることが出来るようになったどっかの龍神がガミガミ小姑みたいに説教してくるので治さざるを得ない。(幸明はこのことを知っているので本当なら焼きそばパンぐらい対価として奢らせたいが緑にチクられるので、できない)緑の最初の威厳は今はもう感じない。
『了解』
俺は小さくうなずいた。
夜、俺は木々を操り普段の倍の速さで学校へと向かった。他人に見られると厄介なので細心の注意を払って、人気のないルートで行く。しかし、学校の周りは街中なので仕方なく屋根を渡らしてもらう。石川五右衛門になった気分だ。夕方幸明に花の場所を送ってもらったので場所はわかっている。当番の先生に見つからないように音を忍ばせて移動する。何回か行っているが、手汗でもう手がベトベトだ。
ばれたら、停学か退学になってしまうのかな。俺の力も多くの人にバレてしまう。それだけは避けたい。
目的地に着くと確かに元気がない。萎れてしまっている。園芸部はほぼ帰宅部と化しており、幽霊部員がほとんどである。そのため手入れが行き届かないところが出てしまう。来ないなら何で入部したんだよ。と一度怒ってやりたい。そんなことより治すことが先決である。俺は元気のない花上に手をかざし、元気のない花と一体化した。そして、手に力を集中させる。手の平の下に緑色の球体が現れた。その球体から俺と一体化したすべての花に向かって光が放たれた。
……力が抜ける。
その光を浴びた花は段々元気になっていく。代わりに俺の息が荒くなった。すべての花が元気になったら、後はもうやることは一つ素早くこの場から立ち去るのみ。俺は行きと同じ道をさっきの倍のスピードで帰った。
翌朝。今日は朝当番ではない幸明と待ち合わせている。集合場所にはもう幸明が待っていた。
「おはよう。やっといたぞ」
「ありがと。お疲れ様」
「あー疲れた、疲れた。祭りの時のように疲れた。あっ、焼きそばパン食べたいな」
「じゃ、俺は御神木の前で大きい声で言ってやろうかな。碧は奢らないと植物を治しません。って」
「元気です!元気。さっきのは嘘。お弁当もあるし、今腹減ってないんだよな。だから、言わないで下さい、お願いします」
「分かればよろしい」
俺達は学校へ向かった。




