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新年最初の口喧嘩(桃花)

作者: 狼花

 今日は初売りでショッピングモールへ家族で買い物にきてるんだけど活気がすごいね。

まぁ、初売りじゃなくても大抵ショッピングモールは土日とか混んでて騒がしいんだけど。

自販機でコーラを買いお母さんや奈々とは別に行動している私はこれから何しようかと歩きながら考える。


 お母さんは特売の肉が初売りで安く手に入るため、人混みで混雑した食材コーナーに仕方がないと言いながら埋もれていき、奈々は洋服屋さんで服を見ている。

(最初は付き合って欲しいと奈々に頼まれたんだけどいつも通り奈々が私の服を選ぶ時間が長いので隙を見てバックれて(逃げて)きた。今頃は私がいないことに気づいて探していると思う)


 さてさて。

この自由なひととき何をして過ごそうかな。

コーラを手に休憩コーナのカラフルな丸みを帯びた椅子に座り

この後どこで遊ぼうか考える。

・・・  本屋? おもちゃ屋? はたまた雑貨屋さん? ・・・

んー、どうしようかな。


  そうこう考えていると私の目の前にメダルが1枚コロコロと転がってきた。

おや?、と転がって来た先を見るとそこにはゲームセンターが

・・・ そうだ!!絶好の遊び場が私の目の前にあるではないか!! ・・・


 そのあと5歳くらいの男の子が落としたメダルを取りに来たので私は拾ったメダルを男の子に渡し、電光石火の如くゲームセンターにメダルを買いに行った。


ゲームセンターにてーーーーーーー


 ゲームセンターの中は人の声がかき消されるくらいに騒がしい。

機械の音声、メダルのジャラジャラする音とその音をかいくぐって聞こえるすごく小さな親子の会話。

まさに耳で体感する非日常の世界。

私は目の前のお金を食べてメダルを吐き出す可愛げのない機械に千円札を数枚食べさせる。

「とりあえず500枚っと」


 お金を入れボタンを押すとメダルが出て来た。

緑のメダル入れのケースにどんどんメダルが溜まって行く。

このメダルが溜まって行く様子はいつ見ても心が高揚するんだよね。

ウキウキしながらその様子を見ていると後ろから肩を軽く叩かれる。

・・・ だ、誰だ! ・・・

ゲームセンターで見知らぬ人に肩を叩かれるといつもより少し怖い。


 「買い物済んだから帰るわよ」

「え!?」

肩を叩かれた方を見るとお母さんが買い物袋を両手に持って現れた。

「え、そんな私まだ1play もしてないんだけど」

「知らないわよそんなの。もともと初売りの買い物が目的だったでしょ。

 ゲームセンターで遊ぶ予定なんて最初からないわよ」

・・・  出たよ。「目的、予定」仕事ばっかの人間はこれだから心にゆとりがない ・・・


 「でも、お金使っちゃったし。もったいないし少しだけでも遊んで・・・」

「あんたの無駄遣いはいつものことでしょ。」

「そ、そんなことないよ」

「ほら、早く帰るわよ」

「いやいや、メダルを買って何もしないで帰るとか遊び人の沽券にかかわるし」

「お金を無駄遣いするのが遊び人なんだからそんなもの気にしないでいいわよ」

「いやいやいや、それはお母さんの中での遊び人の定義であって、私の中の遊び人の定義はお金を払った分きちんと楽しむと言うことだから」

・・・ 親子といえど物事に対する理解というのがすれ違うことって多々あるよね… ・・・


 「そう、じゃあ、 歩いて帰る?私は車で帰るけど」

「うん。奈々もまだ服屋さんにいると思うし、二人で帰るよ」

・・・ 奈々はバイトしてお金持ってるしタクシーくらい呼んでくれるだろう…… ・・・


 「だってよ、奈々」

やれやれというそぶりを見せたお母さんは後ろを向いて声をかける

・・・  え!? ・・・

何と、数歩離れたところに先ほど服屋に置いてきた奈々もきていた。

「私は母さんと帰りますよ。誰かさんには先ほど置いてけぼりにされましたし」

いつもは味方をしてくれる奈々に見限られるとさすがの私も厳しい。

「じゃ、私たちは帰るから」

「え、ちょっと」

止める間もなく踵を返しパーキングエリアに向かう二人。

私は山のように溜まったメダルと徐々に小さくなって行く二人を

何回も見比べて…み、くら、べてから。

泣く泣く私は500枚のメダルを諦めて二人を追った。



 駐車場にてーーーーーーーーーーーー


  お母さんと私はまだ口喧嘩をしていた。奈々は車に乗るなり疲れているのかすぐに眠ってしまった。

「まったく、買い物にきたのにゲームセンターに行ってどうするのよ」

「そんなこと言うなら、奈々の服選びだって時間かかってるよ」

「洋服選びは中断できるけどゲームセンターはメダルがなくなるまで終わらないでしょう」

「メダルだってゲーセンに預けることできるもん」

「さっきのは預けてきたの?」

「いやお客さんが多かったし二人とも待ってくれないから…」

「預けられなかったと」

「……」

「メダル預けるくらいなら待ってあげたのに」

「絶対嘘だ」

「本当よ。あんたがグダグダ遊んで行くって行ったから待ってられないなって思ったの」

「うっ」

・・・ 確かにそうだけど ・・・


「遊んで行くって言わないでメダルを預けるまで待ってっていえばこっちもすぐ終わるって思うから待ってあげたのよ。そこはあんたの判断ミスじゃないの?」

ぐうの音も出ないとはこうゆうことをいうのかな。ここまで言われると反論できない。

しかし、反論ができないのと不満があるというのはまた別の問題だよね?


正論ばっかりで悔しいので私はお母さんに嫌味を言うことにしよ。

「でも、目的とか予定とか時間を切り詰めて余裕がないなんて大変な人生だねぇ」

「本当よ。あんたがホビーランドやらに興味がなかったらこんなに時間を気にしないでいいのよ」

「え!! ホビーランド行ってくれるの!!」

町外れにあるホビーランドでは福袋をやっていてカードゲームのデッキセットだったり、

過去に流行った漫画やDVDが全巻揃ってたり。

私の欲しいものが入っているのだ。

(まぁ全くの期待はずれで涙ぐむこともあるけど福袋ってそういうの混みでの福袋でしょ?)


 「元々そっちに行く予定だったの。よらないでいいならこのまま家に行くけど」

「さすがお母さん!!よって、よって」

「まったく。怒ったり、拗ねたり、喜んだりあんたの方が私より大変な人生なんじゃないの?」


ああ、確かにそう言う意味では私の方が忙しいかもと思う私だった。


 

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