折られ掛ける華と声
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どれ位の時間が経ったのか分からなかった。 何秒、何分だったのか、ただ分かったのは、この獣が己の欲望を私の中に吐き出して、体を離した事だった。 獣は垂れ下がるそれを仕舞う事もせずに、肩で息をしながら私を見下ろしていた。
涙で視界が少しぼやけて居たけど、私もその獣を考えも無くただ見ていると、その指先に信じられない動きを見た。 緊張の為か親指と人差し指を擦り合わせるその動作、紛れもない私が知っている人物の癖だった。
「け……ん……ちゃ……ん?」
途切れ途切れ発した言葉に目の前の獣は、いや男は明らかに動揺していた、目を見開き体が硬直しているのが分かった。 “けんちゃん” 隣の家に住む私の幼なじみ、戸成健汰、彼が獣の正体だった。
「けん……ちゃ……ん、な……ぜ……」
どうして私を襲ったの? と最後まで口に出来なかった。
「ひぃ!」
世間に発覚する事を恐れたのか、彼は両手で私の首を締め出した。
「あが……けん…………」
只でさえショックで動けない私は全く抵抗出来ず、辛うじて見えた彼の顔は目が血走り正気を失っている様だった。 苦しくて意識が遠退いて行く、このまま私は死んじゃうのかな……まだやりたい事が沢山有ったのに……。 そう思いながら私の意識は途絶えようとしたその時。
「彼奴の定めし運命に翻弄された、哀れな娘よ。 我が呼び掛けに応えよ」
台風凄いです。
ここまで読んで頂き有難う御座いました。