再び動き出す時
どうぞご覧下さい。
土砂降りの公園で、私は男に首を絞められている。 その一時停止状態の映像、何度見ても気分が悪くなる。
「では、良く見ておくのだ。 そして体で感じよ」
「はい!」
ルシフェルさんの声にやや力を込めて返事をすると、一時停止状態の映像が動き始めた。 ザーと雨の音が聞こえて来た。 首が絞まる感覚も少しだけど伝わって来る、でも苦しくは無い、ルシフェルさんが調整してくれているのだろう。
「ぐっ……ぐ、ぐぅ」
私の首を絞めている戸成健汰、正気を失くした目で歯を食い縛り唸っている。 その手は首に食い込み、後5、6秒もすれば私は絶命するかも知れない。 だがその残り僅かの一瞬、私の意思を離れた両手が健汰の両手首を掴み取り力を込めた。
「ぎゃあ!」
健汰が悲鳴をあげ両手の力を失くして、私の首から手を離す。 私の手がまるで万力の様に健汰の両手首を握り潰して行く。 そして体に感じる魔力の流れ、胸元の印から熱に近い感覚が全身に拡がっているのが分かる。
「これが……魔力……凄い」
私は再び公園の映像を見た。 健汰の両手首を握りながら仰け反っていた私の頭が正面を向いた、その両目は紅い光を放ち口は裂けたかの様に笑っていた。
「…………ホラー映画じゃないんだから、はぁ……」
ここまで読んで頂き有難う御座いました。