忘れ去られた力
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私の首を絞めたまま、止まっている男がいる。 戸成健汰、幼なじみだったこいつが最初の獲物。 その静止画を見てふと思った。
「ねえ、ルシフェルさん。 こいつを殺っちゃうとして、どうしたら良いの? 私、力無いよ」
「ん? 何だそんな事か、そなたの胸元の印には、我が魔力が宿っておる。 それを使えば良かろう」
私は服の上から印の辺りを触る、でも魔力と言われてもチンプンカンプンでさっぱり分からない。
「今こいつ、私の首絞めてる最中なんだよね」
「ああ、見ての通りだ」
「この状態で意識をあっちに戻したら私、苦しくて何か力を使う前に、死んじゃわないかな?」
「ん? だから魔力を使えと言っておるだろう」
「いや、魔力の使い方なんて知らないし……」
「………………」
私の言葉に暫し沈黙したルシフェルさんでした。
「……そうだった。 今の人は、その手の類いの使い方を忘れていたのを失念していたな」
「どうしたら良いのかな?」
「…………うむ、やむを得ない。 今回は我自らそなたの体を動かそう」
「そんな事出来るの?」
「当たり前だ。 それで動かしている間、感覚の一部を共有させておく。 そなたはその感覚を体で覚えるのだ」
「うん、やってみる」
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