悪魔召喚
「それほんと!博士、そんな方法があるの?」
けっこう驚いた。ヤラセじゃなくて、完全な偶然に任せて私の理想のお嬢様との運命的出逢いを果すなんて、まあまあ無茶なこと言ってる自覚はある。運命に干渉したりとか、「私の好みにばっちしのお嬢様」てゆうふわっとした条件でヒットした相手と縁を結ぶとか、そりゃ力を使えばほぼ偶然に近いようにはできる。けれど、私は“本物”の運命によって巡り合いたい。
それは、博士もわかっている。それを叶える方法がある?
「はい。と言うか、もうこれしかないと思います。」
「これしか無い。…それで、それは何?難しいこと?」
「いえ。難しいことは何ひとつありません。ただ。根気は必要かもしれませんが。後、メイズ氏もよく知っていて、我々にとってかなり身近なものですよ。」
「!それってまさか。」
「ああ、なるほどねぇ。」
「気づきませんでした。」
「悔しいが、さすがノワールと言ったところか。」
確かに、これなら私の願いを叶えられるかもしれない。博士の言う通り、根気は必要だけど。
それにしても、気付かないものだね。私と博士の、出逢いでもあるのに。
「フフフ。皆様気づいたようですね。メイズ嬢の希望を叶えられるかもしれない方法とは、そう。【悪魔召喚】です。」
【悪魔召喚】
それは人間だったころの私もよく使っていた秘法。それを説明するには、この世界の説明をしなければならない。
まず、この世界は大きく分けて3つに分けることができる。
全ての始であり終『虚無』
虚無から生じた全『混沌』
全てを呑み込む穴『深淵』
この内虚無は今は関係無いので省略する。
混沌は、様々な世界を無限に内包している。メイズが生まれた世界や、溝淵深羅がいた、地球という星を内包する宇宙もこの混沌にある。
深淵は、私自身というのは説明した通り。深淵の浅層には、悪魔と呼ばれる魑魅魍魎の怪物達が跳梁跋扈している。
そして実はこの浅層。深淵の一部と言えば一部なんだけど、ぶっちゃけ本体のエネルギーの劣化版の劣化版みたいな、言うなれば私の汗みたいなので構成されている。
そしてそんな強大な力を持つ私のお出汁の中で育った悪魔達は、強大な力や、様々な異能を持つ。
その中に、世界を自由に飛び回れる、それこそ深淵から混沌に行けるような異能を持つ存在もいた。その筆頭がノワール博士だね。
そんな悪魔達のお陰(せい?)で、混沌の世界の知的生命体が深淵や悪魔達の存在を認識してしまった。
そして作られたのが、【悪魔召喚】と言うわけ。
それから、悪魔達が召喚される機会ができたわけだけど、その時、供物をより効率よく自分の力にするために【契約術】が作られた。まあ、そんなの作るのは博士ぐらいだけど。と言うか悪魔召喚の術誕生にも博士が関わってる。他にも、深淵に干渉する術を悪魔が混沌に広めたせいで、深淵と混沌に繋がりができちゃって、それまで全く悪魔が関わって無かった世界でも、魔導書なんかで悪魔の知識が広まったりしちゃって、混沌でも知名度ならけっこうある術になっちゃったんだよねぇ。
そして悪魔召喚はどんな術かと言うと、対価を用意して悪魔を召喚して、悪魔に願いを叶えてもらう。
それだけ。
そんな訳で、悪魔達はけっこうポンポン召喚されてる。
つまりノワール博士は、私が悪魔として召喚されていけば、いつかは理想のお嬢様に逢えるのではないか?と言いたいわけ。
無限に等しい数いる悪魔の中から、理想のお嬢様が私を召喚する。それは確かに、運命的だ。ただ、基本的に待ちに徹する事になる上に、いつ理想のお嬢様に喚ばれるか分からないから、根気はいる。
でもまあ、他に方法は思い付かないのは確か。
なら、決めた。
「うん。よし決めた。それで行こう!」
これで第一章は終わりです。
第二章は、お嬢様との出合いの話です