誕生
全てを思い出した。
そして、二人は融け合う。
かろうじて二つに別れていた自我が、存在が、一つになっていく。
しかしそれは、お互いが望んだこと。
二人の目的は、同じ。
最高のメイドになること。
お互いがお互いを求め合う。
足りない部分を補うために。
本来、圧倒的に格上であるメイズが、圧倒的格下である深羅を呑み込むのが普通である。
しかし深羅は、その異常な程に強い精神と、魂で、自分すら呑み込む、その神々以上の力に、存在に、格に、張り合っている。
そして二人は、一つになった。
メイズの圧倒的な力と深羅の異常な精神力を併せ持つ存在。
曾て二人が求めた、最高のメイドが、誕生した。
それは、自分の存在を確かめる。メイズとしての記憶も、深羅としての記憶もある。
自分はどちらでもありどちらでもない。
しかし、迷いなく自分を定義する。
自分はメイズ。メイズ=アビスラートだと。
全ての悪魔の母であり、故郷である深淵そのもの。あらゆる技術を極め、神すら殺した最強で完璧な存在。
そして、いつか出会う至高のお嬢様の、忠実なるメイドであると。
(けど、少しリハビリが必要かな。)
いくらあらゆる技術を極めたと言っても、長い間眠っていたため、少し腕がなまっている。
その上、溝淵 深羅の影響も詳しく調べなければならない。
(後、私の子や孫くらいには顔を出しに行こうか。永らく眠っていたため心配をかけただろうし。っとその前に。)
メイズは“形”をとる。
メイズは深淵。形などなく、概念そのもののような存在。
しかし、自分はメイドだ。メイズ=アビスラートだ。
ならば、相応の格好をせねばならない。
そして、顕現する。
絹糸が霞むような、柔らかく、繊細な、蒼と黒のメッシュの入った美しい銀髪。
どの宝石もかなわない輝きを持つ、朱と金の眼。
瑞々しく、透き通るような白皙の肌。
どこか冷たい雰囲気を漂わせながらも、美の女神が裸足で逃げ出すような整った容貌。
美しい丸みを帯びた、華奢な体。
それを包むは、極上のメイド服。頭にはホワイトブリム。
それは、まだ人間であった頃のメイズの姿。
そして、溝淵 深羅がゲームで作成した、メイズ=アビスラートである。
(この姿も、久しぶりだね。さて、時間は無限にあるとは言え、有効に使わないと。まずは…よし、できた。)
究極の概念存在であるメイズにとって、時間とは有って無いようなもの。しかし、ただただ暇を弄ぶようなことはしない。
そしてメイズは、あるものを作った。
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メイズ=アビスラート
LV.3375
種族:深淵
職種:深淵冥土LV.1000
HP:∞
MP:∞
SP:∞
力:372591108475936215874659078542219731546
頑健:372591108465479527811666741227539114712
魔力:97826412576651145669877122566699772256994
俊敏:523698457112566900571236650412269876952
スキル
料理LV.299
掃除LV.299
洗濯LV.299
裁縫LV.299
食器戦闘術LV.299
筆記LV.299
鑑定LV.299
炎魔法LV.299
水魔法LV.299
回復魔法LV.299
剣術LV.299
隠密LV.299
錬金術LV.299
闇魔法LV.299
光魔法LV.299
時空魔法LV.299
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etc.
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それは、ゲームのメイズの、ステータスだった。