一目惚れ
「それでえっと、仕えるって、どうゆうことですか?」
「そのままの意味でございます。日々お嬢様のお側に侍り、生活環境を完璧に整え、何不自由しないようお世話をし、様々な願いを叶え、どんな命令をも完遂し、悩みがあれば相談にのり、あらゆる危険を排除し、邪魔な障害は消す。基本的に、これらメイドとしての使命を、果たさせていただきます。」
それ全部メイドの使命なのか、すごいなメイド。
そしてなんか、最後物騒なのが聞こえた気が…。まあ、悪魔だしなぁ。
と言うか、この人、たぶん悪魔の王様だよね?え、そんな人が私なんかに仕えてもいいの?なんか悪魔に気に入られるようなことしたっけ?
よし、わからないなら聞こう。うんそれがいい。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥って言うもんね!それじゃあまずは…
「えっと、メイドさんて、悪魔の王様?」
まずは事実確認。勝手に勘違いしてたとか、恥ずかしいからね。
「それが、悪魔の中で最も強く、多数の悪魔を従えている者、という意味であれば、是です。」
おお、やっぱりそうか。そしてこの人最強なのか。全然そうは見えないけど。どっからどう見ても、美人なメイドさんだもんね。
「ありがとうございます。」
…いえいえ。
えっと、次は…あ、そうだ!。
「それで、私を殺したり、憑依したりは、しないってことで、いいのかな?」
「それはもちろんです。」
ほっ、良かった。とりあえず安心だ。
って、お母さん!無事!?
「あ、あの!召喚される時に、私以外の生贄、食べちゃったりしてませんか!?」
「それは心配入りません。誰一人殺していませんよ。もちろん、お嬢様の母君も無事です。ご心配でしたら、あちらでベットに寝かしておりますので、お確かめください。」
そう言われて、指し示された方を見てみると、淡い水色のネグリジェを、着せられたお母さんが、ベットに寝ていた。
その回りには、それぞれ色やデザインの違う服を着せられた子供達が、同じようなベットに寝かされていた。他の拐われてきた子達かな。
お母さんは、ほんとにただ寝てるだけみたいで、すやすやと、気持ち良さそうに眠ってる。…何このベットすごくやらかい。
とりあえず、大丈夫そう。
あ、メイドさんにちゃんとお礼言っとこ。
「ありがとうメイドさん。」
「いえいえ、大切なお嬢様の母君ですので。ところで、他の子供達はいかがいたしましょうか?とりあえず、今はこのままでも?」
「あ、うん。じゃあそれで。」
聞かれても、私にはどうしたらいいかなんて、わからないしね!
「ところで、なんで、私に仕えようと思ったの?特にメリットがあるとは思えないんだけど。あ、もしかして、魔力?」
そうだったよ。私、魔力だけは大量に持ってたよ。悪魔が受肉しないと現世に長くいられないのは、魔力の消費が激しいからだったはず。つまり、私という魔力タンクの側にいれば、そんなの気にしないですむ。きっとこれが理由だね!
「いえ、違います。」
「えっ」
違うの!?
「はい。違います。低位の悪魔ならともかく、私のような最高位の悪魔なら、現世でエネルギー漏れをおこすなど、あり得ません。そもそも、私が存在を保てない程のエネルギーを消費すれば、お嬢様の魔力では到底賄えません。」
へー、てことは、高位の悪魔なら、こっちで活動しほうだいってこと!?え、でもゲームの悪魔に、そんな設定なかったはずだけど。他にも悪魔の王が出てくるイベントもあったけど、受肉しないと長く留まれなかったはず。これはどういうこと?てゆうか、私のこの膨大な魔力でも足りないって、ヤバくない?どれだけ強いのよ。
「それはおそらく、その悪魔は実は低位だっただけかと。」
「えっ、どういうこと?」
悪魔の王なのに?国一つ軽く滅ぼせるってあったけど。
「まあ、高位の悪魔なら、最低でも天体の一つや二つ、軽く消せますので。国単位でしか計れないなら、まだまだですね。私からすれば、田舎の村の村長が、王だなんだと囃し立てられている、くらいにしか感じられません。」
「え、えぇ」
色々衝撃的なんだけど。
え、このメイドさん。星ごといけるの?ヤバくない?
さっきから、私の語彙力が死んでる気がする。
てゆうか、ゲームと全然ちがくない?そんな人が聖騎士にやられるとは、到底思えないんだけれども。いや、それは田舎の村の村長だっけ?いやいや、ここで召喚されるのは、悪魔の王で…わけわからん!
そしてなにより、そんなすごい人なら、なおさら私なんかに仕える意味がわからない。
「ゲームのシナリオから外れたのは、確かでしょう。そもそもこの召喚、本来は別の悪魔が召喚されるはずだったのを、私が横どりしましたので。」
「そ、そんなことできるんだ。」
「メイドですので。それから、私がお嬢様にお仕えする理由ですが…」
「…ゴクリ」
な、なんか緊張してきた。一瞬、メイドだからとか関係なくない?て思ったけど、スルーしよう。
さて、ようやく聞ける。いったいどんなわけなんだろう。
「まあ簡単に言えば、一目惚れですね。」
「…はい?」




