精霊のお告げ
お待たせしましたー!
未来のことを、夢をみたことにして告げるのは、うまくいった。
だから次のステップに進もうと思う。
夢の内容を、悪魔に拐われる夢から、精霊や神様からのお告げに替える。
4歳になった私を、悪魔崇拝者を連れ去ろうとすると、神や精霊が言ったとなれば、それが幼女の言うことでも信用しないわけにはいかない。…はず。たぶん、きっと。
まあ、私の頭じゃ、考え付くのはこんな不確定要素の多い作戦ぐらいだ。
ダメで元々。
いくら才能に恵まれてても、三才の幼女にできることなんか、たかが知れてる。
どうにか大人を動かすしかない。
だから、この作戦はうまくいってほしい。
無理でした。
お母さんや、親しい使用人は、信じてくれるまではいかずとも、真剣に考えてくれてる。けれど、肝心の父親が相手にもしてくれない。
それだけでなく、直談判しにいったお母さんは、本妻たちに「そんな嘘までついて、公爵様の気をひきたいか」と嫌みを言われたらしい。
申し訳なく思えてくる。
「はあ。」
思わずため息が出てしまう。
ほんとにどうしたもんか。
無い知恵を振り絞って考えた作戦が、あっさり失敗。
他に作戦などない。
ゲーム知識を活用して、予言でもしようかとも思った。けれど、そう都合よく私が誘拐されるまでに起きる、大きな出来ごとなんて無い。
前世の知識だって、どう活用していいのか、検討もつかない。
いっそのこと、お母さんや使用人達と、夜逃げでもしようかとも思った。けれどすぐに、そんなことしても、余計に状況が悪化するだけと気づく。
ほんとにどうしよう。
名案は思い付かない。けれど、時間は待ってくれない。
悩んでいても仕方がないと、とにかく魔法の腕を鍛えたり、これから私の身に起こるであろうことを、夢としてお母さんに伝えたりした。
はっきり言って、私はとても変な子供である。まだ三歳で魔法を鍛えて、しかもいくら魔法を使っても、魔力がつきない。それに変な夢を見る。気味悪がられて、見捨てられてもおかしくない。
なのにお母さんは、そんな私を見捨てず、魔法の練習に付き合ってくれた。真剣に話を聞き、どうにかしようと動いてくれた。
ほんとに頭が上がらない。
どうにか救いたい。
そこで、私は誘拐されても助けられる。けれど、お母さん達は死んでしまう。だからそのときは私を置いて逃げてほしいと言った。
泣かれた。
あなたを置いて逃げるなんてできるわけ無い。あなたのためなら命だって惜しくない。一緒にどうすればいいか考える。もっと甘えていい。頼っていい。だからそんなことはもう、言わないでほしい。
そんなことを泣きながら、抱きしめられながら、言われた。
私もちょっと泣いた。
たぶん、このとき初めて私は心の底から、お母さんを、お母さんと思えるようになった。
それから何度も話し合って、考えて、魔法を鍛えて。気づけば4歳の誕生日が来ていた。お母さんと小数の使用人達に、ささやかに祝われた。いつもより少しだけ豪華な夕食に、お母さんの手作りのクッキー。とても嬉しかった。
もう、いつ事が起こってもおかしくなくて、これからしばらく、気の抜けない日々が続く。だからこの日は、精一杯楽しんだ。
その半月後、ついにその時が来た。




