表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冥土さんが往く  作者: セフィール
悪役令嬢のお嬢様
15/20

精霊のお告げ

お待たせしましたー!

 未来のことを、夢をみたことにして告げるのは、うまくいった。

 だから次のステップに進もうと思う。

 夢の内容を、悪魔に拐われる夢から、精霊や神様からのお告げに替える。

 4歳になった私を、悪魔崇拝者を連れ去ろうとすると、神や精霊が言ったとなれば、それが幼女の言うことでも信用しないわけにはいかない。…はず。たぶん、きっと。


 まあ、私の頭じゃ、考え付くのはこんな不確定要素の多い作戦ぐらいだ。

 ダメで元々。

 いくら才能に恵まれてても、三才の幼女にできることなんか、たかが知れてる。

 どうにか大人を動かすしかない。

 だから、この作戦はうまくいってほしい。







 無理でした。


 お母さんや、親しい使用人は、信じてくれるまではいかずとも、真剣に考えてくれてる。けれど、肝心の父親が相手にもしてくれない。

 それだけでなく、直談判しにいったお母さんは、本妻たちに「そんな嘘までついて、公爵様の気をひきたいか」と嫌みを言われたらしい。

 申し訳なく思えてくる。


「はあ。」


 思わずため息が出てしまう。

 ほんとにどうしたもんか。

 無い知恵を振り絞って考えた作戦が、あっさり失敗。

 他に作戦などない。

 ゲーム知識を活用して、予言でもしようかとも思った。けれど、そう都合よく私が誘拐されるまでに起きる、大きな出来ごとなんて無い。

 前世の知識だって、どう活用していいのか、検討もつかない。

 いっそのこと、お母さんや使用人達と、夜逃げでもしようかとも思った。けれどすぐに、そんなことしても、余計に状況が悪化するだけと気づく。


 ほんとにどうしよう。


 名案は思い付かない。けれど、時間は待ってくれない。

 悩んでいても仕方がないと、とにかく魔法の腕を鍛えたり、これから私の身に起こるであろうことを、夢としてお母さんに伝えたりした。

 はっきり言って、私はとても変な子供である。まだ三歳で魔法を鍛えて、しかもいくら魔法を使っても、魔力がつきない。それに変な夢を見る。気味悪がられて、見捨てられてもおかしくない。

 なのにお母さんは、そんな私を見捨てず、魔法の練習に付き合ってくれた。真剣に話を聞き、どうにかしようと動いてくれた。

 ほんとに頭が上がらない。

 どうにか救いたい。

 そこで、私は誘拐されても助けられる。けれど、お母さん達は死んでしまう。だからそのときは私を置いて逃げてほしいと言った。


 泣かれた。

 あなたを置いて逃げるなんてできるわけ無い。あなたのためなら命だって惜しくない。一緒にどうすればいいか考える。もっと甘えていい。頼っていい。だからそんなことはもう、言わないでほしい。

 そんなことを泣きながら、抱きしめられながら、言われた。

 私もちょっと泣いた。


 たぶん、このとき初めて私は心の底から、お母さんを、お母さんと思えるようになった。




 それから何度も話し合って、考えて、魔法を鍛えて。気づけば4歳の誕生日が来ていた。お母さんと小数の使用人達に、ささやかに祝われた。いつもより少しだけ豪華な夕食に、お母さんの手作りのクッキー。とても嬉しかった。

 もう、いつ事が起こってもおかしくなくて、これからしばらく、気の抜けない日々が続く。だからこの日は、精一杯楽しんだ。


 その半月後、ついにその時が来た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ