うりうり
「うりうりうりうり。」
「むー。やーめーてーよー。」
「嫌♪。それうりうりうりうり。」
今、私はお母さんに、ほっぺたをうりうりされている。いや、何って、だからうりうりだよ、うりうり。これはお母さんに、魔法の練習をしているところを見られてから、されるようになった。
見つかったとき、てっきり驚かれて、色々聞かれると思ったけれど、すごく心配された。三歳の子供が、初級とは言え、攻撃魔法、それも難易度の高い闇魔法を使ってたら驚くと思うんだけど。まあ、この優しいお母さんなら、そんなにおかしくないか。それに闇魔法って、下手すると体の怪我だけじゃなくて、心に傷を負うこともあるから、仕方ないかもしれない。
最初は、危ないからやめるように言われたけど、私が頑なに拒んだら、「じゃあ、せめて私が一緒にいるときにして?」と言われて、魔法の練習を一緒にするようになった。けれど、お母さんは私と一緒にいると、すごく絡んでくる。そのときに、よくしてくるのが、うりうりというわけ。別にいやじゃないし、私もお母さんといるのは楽しい。…私精神年齢20才越えてるんだけどなぁ。やっぱり体に引っ張られてるのかな?
まぁいいか。
それに、お母さんはこれでも城で働けるレベルの魔法使いだ。闇魔法は専門外でも、多少のアドバイスぐらいはしてくれて、けっこう助かってる。
それに、とある目的を果たすためには、こうゆうスキンシップも必要だしね。
私が三歳になって、魔法の練習を始めてから半年程。
やっぱり三歳を超えると、魔力はあまり伸びなくなった。
半年で百万しか伸びなかったよ。…感覚が麻痺してるなぁ。
知力はそこそこ伸びた。魔力みたいにインフレはできないし、1000を越えてからは、なかなか伸びにくくなったけれど、頑張って鍛えた。ちなみに知力を上げても頭がよくなることはない。確かに思考速度や記憶力に多少恩恵があるけれど、メインは魔力の制御力。一度にどれくらいの量の魔力を操れるかを表す値。いくら魔力を上げても、知力を上げないとショボい魔法しか使えないからね。頑張ってる。
後、体術や剣術の練習もしている。独学だけど。でも、さすがは天才リリアンヌ。動きだけならけっこう様になってる。ただ、いくら鍛えてるとはいえ、この軽量で非力な幼女の体じゃ、できることは限られる。剣みたいな武器もない。一度ナイフを振り回そうとして怒られたし。まあせいぜい、油断している相手の意表を突いて、急所を潰すぐらい。真正面から大人とやりあってもまず勝てない。
だから魔法だよりなんだけど、正直、私だけが頑張っても、誘拐を阻止できる可能性は、そんなにない。私は魔法への耐性はとんでも魔力のおかげで高いけど、薬物を使われたらひとたまりもない。真正面からの魔法の撃ち合いで、持久戦に持ち込めばまず負けないけど、そうそうそんな展開にはならないだろうし。それに、魔法を封じる結界とかもある。それを使われたら、私は抵抗する力をほとんど失う。
何より、誘拐される正確な日時がわからない。私が4歳の時っていうのはわかる。だけど、それ以上はわからない。一年間ずっと誘拐を気にして生活するなんて、無理だ。一人ならなおさら。
つまり、協力者がいる。
私は今、とある決心をしている。時は早朝。場所はお母さんの寝室。…つまり私の部屋でもあるんだけど。
今、部屋にはお母さんと私の二人っきり。一緒に寝てるんだから当たり前だけど。
とにかく、作戦の決行だ。
よし。落ち着け私。私は幼女だ。こうゆうことをやっても、恥ずかしがることはない。普通のことなんだ。
…やるぞ。1…2…3!
「うわーーん!ママああああーーーー!!」
もぞもぞ。ギュ。
私は大声でお母さんを呼びながら、自分のベッドから抜け出し、お母さんのベッドに潜り込んでいる。さらに、お母さんにギュっと抱きついている。
…けっこう恥ずかしい。
え、なんでそんなことをするのかって?
決まってるでしょ。お母さんに誘拐を知らせるためだよ。
かといって、まず、私が馬鹿正直に本当のことを言っても、まず信じてもらえない。誰が異世界から転生して来て、前世でやっていたゲームにこの世界がそっくりで、4歳になったら誘拐されて悪魔の生贄にされる、なんて話を信じてくれるだろうか? よくて子供のおふざけと思われて、悪ければ真剣に頭の心配をされる。それはいただけない。
そこで私は考えた。どうすればいいのか。そこで出した結論が、夢を見たことにすればいい、というもの。こんなファンタジーの世界。実はけっこう、子供が見る夢というのはバカにできない。精霊が助けてくれたとか、神のお告げがとかが実在している。そしてそういうのを経験する子供は、それなりにいる。過去にそんな事例があって、自分の娘が、毎日誘拐されて悪魔の生贄にされる夢を見た、と言ってくる。この優しいお母さんなら、考えてくれるかもしれない。まあ、確実性にかける方法だけど、やらないよりはましでしょ。
「ううーん。どうしたの?リアちゃん。」
と、お母さんが起きた。ちなみにリアというのは、私の愛称だ。
と、それより答えないと。
「お母さん。私怖い夢を見たの。」
少し恥ずかしいけど、がまんがまん。
「そうなの?それは怖かったわね~。よしよし。もう大丈夫よ。お母さんがいるからね。」
そう言って、お母さんは私の頭を撫でてくれる。なんか、うれしい。
「…うん。」
私はとりあえずうなずいておく。
なんか、このまま眠ってしまいたいけど、そういう訳にはいかない。さて、夢の話をしよう。
昨日はすみません。ストック切れてたの忘れてました。
それから、そろそろ学校が始まるので、そしたら多分、月に1~3回ぐらいしか更新できないと思います。
それでも読んでくれたら、うれしいですね。




