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冥土さんが往く  作者: セフィール
悪役令嬢のお嬢様
10/20

乙女ゲーム

 ここはどこ?


 暗い。


 けど、あたたかい。


 …ん?落ちてる?


 うっ、潰れる潰れる!


 痛い痛い!頭割れる!


 あ、やっと出れた。


 眩しい。


 誰?大きい。


『オギャア、オギャア』


『元気な女の子ですよ』


 眠い。




 ∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥



 リリアンヌ=フォン=クリムゾンローズ

 それが、今世の私の名前。

 前世の私は、まあ、どこにでもいるようなOLだった。

 死因は、多分事故死。

 最後に見たのが、倒れてくるクレーン車だったから。

 前世に未練は、もちろんある。

 24歳で、人生これからってところだったのに。

 結婚どころか、お付き合いもしたこと無かったから、したかったし。

 趣味の乙女ゲームの続編も、まだ4周しかしてないし。


 ……はあぁ。


 そう。乙女ゲーム。

 趣味どころか、どはまりしていた乙女ゲーム。

『光と闇~真実の愛はどんな形~』

 主人公であるヒロインが、学園に通い、攻略対称を攻略していく、よくあるストーリー。

 ただ、それだけじゃなく、魔法もあってRPGみたいに、ヒロインのレベルを上げたりもできるし、アクション要素もあった。

 ヒロインのステータスで、ストーリーが分岐したりして、かなりやりこみ要素があって気に入っていた。

 それを私は、とにかくやりこんだ。隠しキャラも含めて10人いる攻略対象の、あらゆるエンドを見て、スチルも全部手に入れた。ヒロインもレベルカンストしたり、アイテムを全部集めたり。多分、あのゲームで、私が知らないことは無いと思う。

 そして、この乙女ゲームには、攻略対象の攻略を邪魔する、ライバルキャラが存在する。


 …はぁ


 心の中でため息をつくのは、何回目だろうか。

 そう。そのライバルキャラが問題なのだ。

 ライバルキャラの中で、私が一番好きだったキャラ。

 黒髪黒目で、ややつり目がちな目付きの公爵令嬢。

 リリアンヌ=フォン=クリムゾンローズ

 そう、私である。

 私もよく、乙女ゲーム転生や、悪役令嬢転生物のラノベは読んでいた。けれど、自分がなるのは勘弁してほしい。

 それも、最悪の幼少期をすごすリリアンヌは。

 このリリアンヌ、ヒロインがどの攻略対象のルートを選んでも、必ず嫌がらせをしてくる。

 特に、リリアンヌの婚約者である第2王子を攻略するルートの時は、それはそれは過激な嫌がらせをしてくる。

 悪口や水をかける、物を隠す、階段から突き落とすなんて序の口。冤罪を着せたり、魔法で洗脳した男子生徒に襲わせる、ついには暗殺なんてのもしにくる。

 そして、最後には断罪され、最低でも国外追放。最悪は処刑される。

 ただ、リリアンヌは身分を傘に着てとか、家の力で無理矢理、とかはしない。

 と言うか全部一人でやる。

 公爵令嬢なのに、である。

 それには、リリアンヌの幼少期に秘密がある。

 リリアンヌの母親は、子爵家の出で、4人いるリリアンヌの父親の妻の中で、最も身分が低かった。

 そう、この国、重婚が可能である。まあ、だからこそゲームで逆ハーエンドなんてあったのかもしれないが。

 それは今は置いといて。

 そんな訳で、リリアンヌとその母親は、最低限の使用人と離れの別邸で暮らしていた。

 悲劇は、リリアンヌが4歳の時に起こる。

 悪魔崇拝者の、とある秘密組織が悪魔の軍勢と、悪魔の王をこの世に召喚しようとした。

 その生贄として、リリアンヌは、母親共々誘拐されてしまった。

 狙われた理由の一つは、離れの別邸という、警備が比較的緩い場所で生活していたこと。そして、リリアンヌの父方の祖母が、先々代の王の、第三王女だったこと。

 薄いとはいえ、王家の血筋という、悪魔に対しては極上の供物。

 それが、無理をすれば手が届くところにある。狙われないわけがない。そして、召喚された悪魔達に、供物の一つとして母親は捧げられ、リリアンヌは、その魂は悪魔の王の供物に、肉体は器として捧げられた。そのままならリリアンヌは、魂を貪り食われ、その肉体は器として悪魔の王に使われる、はずだった。

 その日、王都に偶々お忍びで来ていた、教会が認める最強の聖騎士の一人が、リリアンヌに憑依する直前の、無防備な悪魔王に、渾身の不意討ちをしかけ、なんとかリリアンヌだけは、助かった。

 しかし、母親を失ったリリアンヌの不幸はこれからだった。

 まず、警備の関係でリリアンヌも本邸で暮らすことになった。

 けれど、仲の良かった別邸の使用人は、誘拐された時に殺され、本邸の使用人は、悪魔の供物にされたリリアンヌを気味悪がった。

 そして、三人いるリリアンヌの父親の妻はリリアンヌをいじめ、その子供達も親の真似をした。父親はリリアンヌを気にかけることもない。幼くして母親を失ったリリアンヌに、安息は無かった。

 しかし、怪我の功名と言うべきか、悪魔の王に魂に干渉されたことで、リリアンヌの魔法の才能が開花した。

 リリアンヌは独学で最も才能のあった闇魔法を修得。他にも、剣術にも才能があり。5歳からなされた令嬢教育でも、その天才ぶりを発揮。義母や腹違いの兄弟からのいじめに耐えながら努力を重ねた。そしてついに、9歳のデビュタントで国王にその才覚を見込まれ、第二王子の婚約者に抜擢された。

 そこでようやくリリアンヌは、久方ぶりに、必要とされた。

 自分を愛してはおらずとも、婚約者として親しく接してくれる第二王子に執着し、ヤンデレと化した。





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