プロローグ&1章{百鬼流華登場}
前々から企画していたnoiseをついに書いたはいいもののやはり文体はいつまでたってもへたくそなままなんだよなぁ。
~プロローグ~
癌、つまり細胞内の遺伝子情報にできるノイズである。
塩基が何らかの方法で破壊されたり、細胞が分裂をするときに塩基に突然変異が生じ染色体が欠如したとき癌細胞が発生する。
しかし、中には癌に対して、いや遺伝子のノイズに対してこう考える人もいる。
新たな力を得るための進化である。と
1章
~茜色の左目~
憂鬱な色に染まった空はくだらない人生の世界観に見事にマッチしており、人々は太陽を忘れたような呆けた顔をしていた。15歳の6月である。
その中で特に怠惰に染まり切った顔をしていたのは私、鳴日暮茜であった。
昔から友人と呼べるものは作らず、常に一人で教室の隅で窓の外を眺める。それが日課の少年だった。
そんな私に話しかけるような者は居らず、いや居ないことはなかった。しかし
「それは僕の生活感になにか関係のあることなのか?」
と切り捨てるような台詞を吐き追い返してしまっていた。
しかし、そんな私の生活が狂い始めたのは、6月のいつにも見ないような快晴の日だった。
「今日はいつになく日差しが強いな」
目を細め朝7時50分ごろの太陽を見つめる。前日まで雨であったので、コンクリートにたまった水たまりに日光が反射して余計にまぶしかった。目がとてつもなく痛かった。
何故か昔から目が弱かった。少しのことですぐに目が痛くなるのである。それこそ太陽をじっと見たら胃に穴が開いた後に塩酸をぶち込まれたかのような痛みに襲われて仕方がないのである。しかし、それと同時にもう一つ昔から目に関しては何かあるようだった。
それは他人には言った事は一切ないが、未来に何が起きるのかが見えてしまうのである。
誰にも言ったことはないとは言っていたが親は別だった。両親はこの目について何かを知っているようであったが幼かったので「なんで?」と聞いてもにっこり笑って教えてくれなかったことを記憶している。
しかし一つだけ、親からこんな話をよく聞かされていた。
「その目は普通の目じゃないんだよ。だから絶対に人前では使っちゃいけないよ。なぜなら使ってしまったら目の色が変わってばれてしまうからね。」
確かに未来を確認している時には私の目はオレンジ、いや茜色に変色していた。
だが何度か言いつけを破り他の人の前で使用したものの、何も言われなかった。
学校の発表の時、商店街での買い物の時、誰かと数少ない会話をするとき…
誰も気づいていないようだった。
しかし確かに親や自分には見えているようだった。
そんなことを考えながら歩いているといつの間にか教室のドアの前に立っていた。
今日も憂鬱な9時間が始まると思うと何とも面倒である。
しかし学校に行かないと色々面倒ごとに巻き込まれてしまうので仕方なく教室のドアを開けた。
皆の視線が集まる。そして今まで楽しそうに騒いでいた女子のグループが一斉に静かになる。そのあとに続くようにひそひそとした声が聞こえてきた。
「なにあいつ。今日もまた来たの?マジ迷惑なんだけど」
「ほんとー。死ねばいいのに」
それに続くように男子の3人のグループが目の前に立ちはだかった
「おいおい、お前さあ。学校来んなったろ。」
「そうだよ。誰の許可で来てんだよ」
私は無言で席に足を向ける。机には花瓶と枯れた花。そして死ねとマーカーの落書き。
見た通り私はいじめを受けている。まあ性格上仕方ないといえば仕方ないのだが…
「おいおい、無視すんなよなぁ。」
こういうタイプのいじめを受けたのは小学2年生以来であった。なんとも幼稚ないじめだとよく思う。まだ小4の時の無視の方が効果はあると思っている。
そう、経験上このタイプは無視をするのが一番の鉄則である。そうすれば相手は9割9分9厘暴力に頼るのは確定なのである。
「ふざけるなよ!くそ野郎が!」
そう言って拳を振り上げる。そう、このルートは絶対に、力量に自信のない者は行ってはいけない。何故なら…これは暴力勝負であるからである。
振り上げた拳よりも早く相手の弁慶の泣き所を蹴り上げ座ったまま相手の足をすくい転ばせた
「…次はないからな。」
そう言って脅しをかけるのが私のテンプレートであった。
「くそっ。覚えてろよ…」
相手も相手だ。何ともありきたりな台詞しか吐けない低能としか思っていないのだが。
逆にここまで極まると滑稽で仕方ない。
私はいつもの通り静かに頬杖を突き窓の方へ視線を向ける
いつものように。しかしそれは嵐の前の静けさであったことはその時私は知る由もなかった。
ガラガラと教室の戸が開く音が聞こえ、カツカツとハイヒールを鳴らし先生が入ってくる。起立と号令がかかり全員が立ち上がる。勿論私もだ。問題は起こさないよう、教師陣には目立たないような影の薄い生徒を演じているのだ。礼であいさつをし着席で席に着く。
そしていつも通り出席確認を始める筈であった。
しかしその日に限って先生は大事な話があると話を切り出したのである。
「はい、今日は転校生がこのクラスに入ってきます。じゃあ自己紹介をしてもらいます。」
そう言って教室のドアの方へ手招きをした。すると一人の黒髪の少女が教室のドアを軽快に開け入ってきた。
「じゃあ、自己紹介を」
すると少女はカツカツと黒板に名前を書いていく。
「百鬼流華ってかいて【ひゃっきるか】っていいます!皆さんよろしくお願いいたします!」
…百鬼流華?百鬼?この苗字どこかで見たことがある。そうだ父さんが持っていた写真に写っていた人が確か百鬼夜行さんだった筈。
「じゃあ、皆さん仲良くしてくださいね。席は…茜君の…隣ね」
クラスの視線がもう一度私に集まる。
なんと気の毒なのだろうか。隣のやつがいじめの対象と知っただけで気をとても遣うに違いない。
静かに百鬼は私の隣に座る。そして案の定
「えっと、隣だけどよろしくね。」
満面の笑みで百鬼はそう言った、しかし実際のところ反応に困る。普通にいつもの様に返答してもいいのだが、普通に傷ついてしまうかもしれない。流石に初っ端から不快な思いをさせるのは別に趣味ではないのでまあ、適当にスルーをするという手段を取った。
故に私は方頬杖をついたまま窓の外を眺めた。別に深い意味はないような仕草であった。
まあ、ここまでは普通の、何処にでもありそうな話なのである。しかし百鬼。実は彼女はとてつもなく厄介な人種であったと私はこれから嫌というほど知ることになってしまうのである。
「えっと…もしもし茜君?」
困惑、その2文字で脳内回路がショートしそうなほど埋め尽くされた。
理解ができなかったのである。
なぜ、なぜ?
「…なんで僕の名前を知ってるんだ?言ってなかった筈だが?」
「え?」
違う、言いたいのはそうじゃない。何故話しかけるのだ?と言いたい。しかし本能的に何かそういってしまったら何かやばいという感覚に捕らわれ聞きたくないようなどうでも良いことを聞いてしまったのだ。
「だから…あぁ、もういいや。何でもない。」
軽く舌打ちを挟み私は吐き捨てた。
いつもそうだ。いや、そうしていると言った方がいいのだろうか。
目の裏にある光景が鮮明に浮かぶ
銃弾、覆面の男、血液、両親、死体。
脳内で単語が助詞を探してぐるぐると渦巻き始める。
瞬間、単語はある一つの言葉に収束されていった
「お前に関わると人が死ぬ、この疫病神が。」
あの日一番信頼していた友人からの一言ですべてを悟った
僕に関わってはいけない
だから私は誰とも一切かかわらない様に圧倒的距離を取るよう心掛けており決して自らの感情は表に出さないと決めていた。
しかし百鬼は私に関わろうとしてくるのだ。
感情が渦を巻き私の中を傷つける。痛い。とてつもない痛みが体を襲う。
あの時の光景がフラッシュバックする。血まみれの部屋。一人たたずむ私。
「…話しかけないでくれ」
「え?」
「お願いだから話しかけないでくれ!」
他人にここまで感情を見せたのは久しぶりだった。本当に9年ぶりに私は怒ったのである。
クラス全員の視線が集まる。今度は誰も何も言わなかった。
ナイフのような眼光をぎらつかせながら私は百鬼を睨んだ。怖がってもう関わらないでくれた方が私的には嬉しいのである。
しかし彼女は怖がるどころか満面の笑みでこう言った
「あはは、茜君面白いね!あとで屋上まで来て、待ってるから。」
百鬼は駆け足で教室を飛び出て、階段の方へ登って行った。
静寂が続いた。私はその静寂の中で色々なことを考えていた。
そもそも…
あの話の何処に面白い要素があったのか。あいつはKYなのか!?
流石の私もここまでされると感情を隠し切れない。しかし仮に強引に屋上へ呼び出すためにあえて怒りを呼ぶような言い方をしたのかと考えるとそこまでしてやはり何か伝えたい重要なことがあるのだろうか。行かなくてはいけないのだろうか。正直ファーストインパクトは最悪である。行きたくはない。
だが、もし彼女が夜行さんの娘か何かならば、亡き父や私の過去のことも知っていてこういった接し方をしているのかもしれない。ならば行く価値はあるかもしれない。
しかしここで私はとても重大なことを思い出した。
あれ?今まだホームルーム中だったよ…な
先生が苦笑いをしながらこちらを見ている。
最悪だ。人生の掟がこの瞬間すべて音を立てて崩れ散った。
「あの女…」
私は頭をぐわああと掻きむしりながら教室を飛び出した。
「はぁはぁ、百鬼!どうしてくれるんだ!」
風が心地よい屋上で百鬼はグランドを眺めていた。長い髪が風になびいている。
「ふふ、やっぱり喋れるじゃん。」
こいつ‼‼という心の声を押し殺しふぅと小さくため息をつく。
聴きたいことは違う。
「なあ、百鬼。あんたの父さんって夜行ってひとじゃないか?そうだったら知り合いなんだが。」
「ううん、違うよ。」
きょとんとした顔で百鬼は質問を答えた。何とも残念である。そうと分かれば彼女にもう興味はない。自分勝手ではあるが彼女とはもう関わらないほうがよさそうである。
「あ、そう。じゃあいいや。戻る。」
私はそう言ってその場を立ち去ろうとした。その時百鬼はとんでもないことを言い始めたのである。
「茜君は、未来がわかっている。違う?」
ぴたりと歩くのをやめる。そして振り向かないままに小さな声で言った。
「今、何て言った?」
「今聞いた通りだよ。茜君は超能力をを使える。簡単に言えばだけどね。」
「な、何故知ってるんだ!?誰にも言ったことがないのに!!」
ばっと百鬼の方に振り返る
フフッと不敵な笑みを浮かべる百鬼はまるですべての真相を突き止めている探偵の様に言った
「だって、目が茜色に光っていたじゃない。」
な…なんだって!?まさか見える人が両親以外にいたなんて‼‼と驚きを隠せずに目をかっぴらいた
ということは百鬼は普通の人間ではない。
血縁者だけが見ることができるのだと思っていたが、本当は違うらしい。
何もわからないままただ茫然と百鬼の方を見ていると百鬼はまるで雨が空から降ってくるほど自然にこう告げた
「いま、何故見えるのかって思ったでしょ。だって私も使えるもん、超能力。」
「…は、はぁ!?う、嘘を言うんじゃない。」
「嘘じゃないよ。なんなら見せてあげようか?私の能力…」
「ああ、やってみろ!もし目視で来て実態があるような能力だったら信じてやる。」
ふぅ。とため息をつき百鬼は肩の力を抜いた。
口角をさげ顔は張り詰めたような緊迫感に包まれた。
「骨状変形式12―20バベル。Noise解放。」
そう言った瞬間、百鬼の周りがとてつもない閃光に包まれる。
思わず目をつむってしまった。
目を開けるとそこには右腕を白色に変えて伸ばしている百鬼と、美しい白色の塔があった。
「これなら目に見えるでしょ?」
満面の笑みを浮かべ百鬼はそう言った。
理解不能。いやこの状況で理解ができる方がおかしい。
そもそも、これは何なのであろうか。てっきりスプーン曲げ程度のちゃちなマジックか何かと思っていたので感動と困惑が脳内で大戦争を起こしているのである。
「な、なにが起こったらそんな化け物スペックな建造物が完成するんだ?」
結局脳みそをスポンジのように絞りに絞って出てきた言葉はこれであった。
「簡単だよ。茜君がいつもやってるみたいにnoiseを解放するだけだよ。」
「待て待て待て。僕が基本単語を知ってる前提で話すな。なんなんださっきから言ってるnoiseって」
私は大慌てで百鬼の話を制止してとにかく脳内に浮かんでいる疑問を一つ一つ虱潰しに理解していくことにした。
「えぇ、はなしにくいなぁ。」
「お前なぁ、理科知らない小1に赤血球は脱核すること前提レベルで話を進めるんじゃない。そもそも僕は僕と同じような超能力者に初めて会ったんだぞ。お前が超能力者だってことは認めるよ。これは変えられない事実だ。」
はぁ。とため息をついて百鬼から目を逸らす
「だが、兎に角単語の意味をまず教えてくれ。英語だってそうやって勉強するだろ。」
「わかったよ、わかったから勉強ネタで例えるのはやめてよぉ。私勉強苦手なんだから。
じゃあよく聞いて、2回言いたくはないから。Noiseは超能力。Noiserは超能力者。
私は骨にnoiseがあるの。こういうこと。」
「はい?」
百鬼は嫌悪の表情を見せる
「聞いてなかったのぉ?せっかく説明してあげたのに、もうしないからね。」
「お前は説明が下手なのか!?noiseっていうのが超能力の総称でnoiserが超能力者の総称ってのはわかったよ。要するに僕とお前の能力はnoise、僕とお前がnoiserでいいんだな?」
百鬼は首を大きく縦に振る。
「だがな、お前次になんつった!?『私は骨にnoiseがあるの』だって!?英訳するとI have noise in my born‼‼noiseを超能力に置き換えてもう一度日本語翻訳に戻してみろ!
『私は骨に超能力があります。』だぞ!?わかるか‼‼理解不能だこの野郎!具体的にもっとわかりやすく、小1に説明するつもりで行け!」
「わかった、わかったってば。今言い直すから!えっとね、なんだろう…私は骨を自在に操れる能力を持ってるの。実際に見てもらっら法がわかりやすいんだけど。」
「いや、さっき見たけど眩しくて目を開いてられない。」
「あ、あれは…」
百鬼は目を泳がせて口角を引きつらせる。
「あれは?」
「格好つけて光るタイプのにしました。」
てへっ。と舌を出してこいつ…ウインクをかましてきやがった
私はそうか。とにっこり笑みを浮かべて拳を作り
「覚悟は…できているよな。百鬼?」
と言った瞬間百鬼は全力疾走で駆け抜けていった。
「なっ、野郎!待て!待ちやがれ」
「逃げるが勝ちってね…」
ホームルームで静かになっている廊下に響いたのは少女の悲鳴と少年の怒号であった。
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