【08】おいでよ!メラ忍の里1(アプリ坊主外伝8)
時は戦国時代。帰雲城と呼ばれるお城のほど近くに、メラ忍という忍びの一族がおったそうな。(唐突)
その一族が住む里は、なにからナニまで黒く統一されており、飼っている犬も黒ければ、出てくるコーヒーもブラック、乳首も黒ければ労働環境も黒いという念のいりようじゃった。
「ふう…ようやくか」
そこに今、ひとりの旅人が足を踏み入れようとしていた
『ようこそ!旅のお方』
『メラ忍の里へようこそ!』
受付と書かれているプレハブ小屋から、それらしき装束の忍者が景気良く挨拶
「さすがは忍の里。こちらの到着に気付いておるとは」
『お一人様でよろしいでしょうか?』
「ああ。連れはおらぬ」
『それでしたら、入園料のほうは3900円になります』
「ほほう。関所のようなシステムなのだな。よかろう」
そこはかとなく身の危険を感じた旅人が、荷物の中から財布を取り出し銭を差し出す
『こちら(リモコンとバッグ)をお持ち下さいませ』
『あと、当里はワンドリンク制になっております』
『お飲み物のほうを先に伺ってもよろしいでしょうか?』
「ではアイスコーヒーを…」
『ブラックでよろしいですね?』
注文しかけた旅人の背中に冷たい物が流れる。冒頭の噂で耳にした里のしきたりでは、コーヒーにミルクを入れてはいけないらしい(うろ覚え)
だが困った事に彼はブラックが飲めない
「…(しまった)」
「…」
『……ブラックでよろしいのですよね?』
張り詰める緊張感。建物の影に身を潜めた忍者達が、刃(天護)をすらりと抜き、残像を残しながら股間に装着する。もしここでミルクを追加しようものなら、どうなるものか解らない。
何をどう掘られるのかはよく解らないが、事と次第によっては掘られかねないのだ。
【天護】とは股間に装着する万能な道具です(説明省略)
「(ハァハァ…)」
『(この旅人…まさか…)』
『(ブラックが飲めないのではあるまいな?)』
『…(ハァハァ)』
釣られて興奮する受付忍。彼はドSだった
「(これはまずいぞ…)」
「(どうしよう…あ!)」
何かを思いついた旅人が荷物をごそごそと漁る。彼が取り出したのは携帯。ヤホー知恵袋ならきっと解決してくれるはず。――だが
「(このサイトは安全でない可能性があるため開けません)」
ガラケーあるあるな理由でサイトに繋がらない
「なんでだよ!!」
「(こんな事になるならスマホにしておけば良かった)」
『…いかがされました?』
『では、ブラックという事で…』
「またれよ!!」
「……う!」
大声で制止する旅人。受付近くの里の人々が、それまでの生活をぴたりと止め、白い視線を向けた。
ある者は農作業用天護の股間を止め、またある者はスマホゲーの股間を止める。凍りついた空間にその人は、ここが忍びの里だという事を垣間見る
『(トトトト…)』
その様子を窺っていたであろう一人の少女が家の中から牛乳をパックごと持って走り寄った
『おにいちゃん、これ入れるの?』
『入れちゃうの?』
『ねぇ、本当はすごく入れたいんでしょ?』
『…ハァハァ///』
上目使いに興奮する少女。なにかの素質にあふれた彼女は将来、立派なくの一になるに違いない
「…いっ・・いれないよ」
「私は…」
「私はミルクをイレナイヨ!!」
失禁しながら返答する旅人。号泣滝の如し
『本当にぃ~?』
『じゃあ、飲み物はどうするの?』
にじり寄る少女
「うっ…うわぁぁぁ!!!」
「(がぽっ!)」
進退窮まった旅人は股間に天護を装着し、近くにあった自販機に向けて猛烈にこすり付けた
「うっ…!!」
「(シュッ!シュッ!!)」
「うっ、うっ」
汗だくになりながらも腰を振る
「(ピピッ♪)」
彼の熱烈なアタックは自販機の制御機構のセーフティーを外すに至らしめ、全品購入可能となった。
そちらの世界で言う所のカードで買い物をするような感じである。
カードで買い物が出来るなら、きっと出来るんだ天護でも
「ごくごくごくごく」
旅人はすかさずお茶を選び、昔の栄養ドリンクの宣伝の如く、キャップを親指ではじき飛ばし飲み干した
『…チッ』
それまでのフリを台無しにされ、一気に萎える里の人々。農作業用の天護が再び畑を耕す
「ぶはぁ!うめえ~!」
「お茶のブラック、超うめぇ~な!」
お茶にブラックもイエローも無い物だが、旅人は大げさに見せびらかし、
「さあ、村長の家まで案内して貰おうか」
受付と交渉する
『それは忍びの里の掟でできません……しかし』
『もしそれを知りたければ、今から言う9つのアトラクション…じゃなかった』
『9つの試練を突破してきたら教えてさしあげます』
「長えよ!!」
「9つの試練とか2000文字小説でやらすなよ!」
「いつ終わるんだよそれ!」
『…長いと言われましても』
『(チラッ)』
受付忍の目線の先に、物陰のその奥に、先程の強襲忍者達の影が映る。彼らの股間の天護は既に萎えてしまい役に立たない。皆大急ぎで奮いたたせようと右手でしごいたり、木戸にこすりつけたりして阿鼻叫喚の様相を呈していた。
『…チッ』
『それでは旅のお方。こうしましょう』
『あなたはまず、衣服を全部脱いで下さい』
「…どうしてそうなったの?」
『次に、あなたに村長の家の場所を示す地図を渡します』
「どうみても順番逆だろ」
『私共は、準備が出来次第襲い掛かりますので』
「さらっと襲うとか言うなよ」
『無事に逃げ切れたら貴方の勝ちです』
「…どうやらそれしか活路は無いようですな」
村人が一斉に天護を装着し、旅人の尻を凝視する。掘るや掘らざるや、戦国乱世とはかくも厳しいものである(続く)




