屋敷編.第八章 あの仲間たちは今
----屋敷内、シャトーの部屋。----
シャトー「ガンス…はぁ…はぁ…私が気になるのは分かりますがずっと回復の様子を見られているのはなんか恥ですわ。外で見張りでもしてなさいな。」
ガンス「は。それは承知しておりますが、それよりもあなた様がここまでのダメージを負うなんて考えられません。一体だれがこんなことを」
シャトー「あの実験材料。いつの間にか抜け出して、恐らく私が別の場所に連れて行こうとしたときに不意打ちでやられたっていったときありますわよね?あれの間に逃げていて私の神聖な屋敷の大広間でまたもや不意打ちですわ。それ自体は避けたのですがあの文献にあったまさかとは思っていましたが、あの狐族が決意を固めると同時に恐ろしい能力を得られると書いてありました。その名も死ぬに魂で撃つと書いて「死魂撃」別名「死近撃」とも言いますの。名前の由来は「その技で死んでもいい。死に近づくことになってもいい」ということだそうですの。あれの一番厄介なのが狐族当人の能力によって変わりますし基礎能力とはかけ離れている場合もありますの。それに私はやられました。死魂撃に関しては文献にも名前しか載っていない為油断していました。あれは伝説かと。あのくそ被検体め。死にぞこないの癖に。キィー――!」
ガンス「まあお嬢様、落ち着いてください。今は安静にしておくのが一番です。なるほどそうですか。死魂撃というのは基礎能力を身に着けていない狐族でも使うことが出来るいわゆる”奥の手”。徒党を組まれたら厄介ですし何よりその情報を共有されるのが一番まずいですねお嬢様。」
シャトー「ああそうですの。今私が完全に回復するまでに今日を含めて三日は必要です。それまでに手は打ってありますの。こっちで捉えている被検体と私の可愛い可愛い手下をぶつけますわ。なるべくあいつらを合流させてはいけません。ガンス、貴方も手伝ってください。」
ガンス「はい。とりあえず今日と明日はここの見張りに徹します。明後日からはお嬢様も大体
回復するでしょうし。とりあえずお嬢様の手下の力のお手並み拝見といきましょう。」
シャトー「可愛い可愛い下僕たち…ああ…私のために頑張ってくださいね…。」
----館の別の場所にて----
リオネ「ねえねえシグマー、ここ薄気味悪いし蜘蛛の巣多いしなんか早く出ようよー」
シグマ「そういうわけにもいかねえだろ。第一あの館は氷山の一角に過ぎないって事だったんだな。檻から出てどれくらいたった?あいつら無事だといいけどな。」
リオネ「なによーシグマったら難しい事考えちゃって。まーた自己完結なのかしら。そうなのね。ウフフ。可愛いねシグマちゃんは」
シグマ「おめえ次ちゃん付けたらぶっ飛ばすっていってんだろうが…。まあいいけどよ。それにしてもほんとこの場所は使われてないんだな。マジそこらへんがさびれてるな。テーブル…の周りに飲み物が散乱してるな。上はどうだ?」
シグマとリオネ。檻から早々に能力で抜け出した人物の内の二人。
シグマ「お前の魔導書ってさ?30種類の魔法が撃てるんだろ?この部屋一体キレイに出来ねえか?」
リオネ「プッチーン。私、掃除するために魔法身に着けたわけじゃないんですけどー???」
シグマ「わりぃって。聞いてみただけだよ。」
リオネ「でもでもさー。びっくりだよね!ここ多分館とはおそらく関係ないっていうか。私たちの村にもあったよねー!宿泊施設っていうんじゃないの?」
シグマ「ああ、恐らくだがそうだ。あの館自体もおそらく使われなくなった宿泊施設とやらをあのシャトーが勝手に住処にしているんだろうな。」
憶測が飛び交う中部屋のドアがドンドン!ドンドン!と大きな音を立てている。
シグマ・リオネ「!?!?」
シグマ「おいなんだ、お前らか?ドア閉めてねえよ。警戒してねえで入って来いよ」
確かにこんな不気味な場所では不信感を抱きつつ行動するのも無理はない。でもそんな予測も次の瞬間絶望に変わるのだった。
???「けへへへへ。おめえらかぁ…話し声が聞こえると思ってきてみたら勝手に部屋をウロチョロしやがって。実験材料になるつもりのてめえらが逃げ出して何しようとしてんだ?」
リオネは咄嗟に魔導書をだした。
リオネ「私たちが何もせずただ捕まると思ってるわけー?そんなバケモノみたいな見た目の奴らがこの美少女。いや、魔法少女とでもいうのかしら?に何の用があるわけ?」
???「俺は合成獣、別名キメラ。その中のリーダーでありシャトー様に六輪の一人として認められているキメラスというものだ。お前ら実験材料を殺さず持ち帰れと命令されている。抵抗なく大人しく捕まるって言うならケガはしないぜ?」
見た目はネズミが巨大化しているだけだがなぜか羽が生えている。これが合成獣というものか。リオネは気持ち悪がりながらもとっさに魔導書で倒すことを決意する。
リオネ「シグマ君!今のうちに能力を使って逃げて!私はコイツを倒して見せる」
シグマ「ば、ばか!!!そんなことできるか」
キメラス「んー。君たち二人ともいい具合に…これもあの方の思い通りか」
シグマ「あ?なんかいったかバケモノ!!!」
キメラス「ん?いやいや何でもないよ。さ。続きしようか。めんどくさいけど。ん?」
リオネ「妖狐術・二。雷槍!」
キメラス「ん!?!?」
シグマ「よし命中!ナイスリオネ!」
キメラス「この程度で喜んでるんだね。本当にピンチにならないと君たちみたいなのは理解できないのかなあ?けへへへ。力量差も測れないで。さあもっとやってみなよ。僕はまだドアの前から一歩も動かないで君たちを観察してるだけだよ。」
リオネ(こいつ、ていうかいきなりボスのお出ましなのか。めんどくさいなー私の魔術は1~30まであってその中でず魔法名をいうだけで放てるのが妖狐術九まででそれ以降は一回使うのに捧げもの(代魔力)が必要だがこいつが待ってくれるとも限らない。それに私はあいつの能力を知らない。やけに紫がかったネズミみたいな気色悪い色。それとあの羽。雷槍を当てただけじゃ大して聞いてもいない。羽を伸ばしたら3mはあるかってくらいだろうか。ここで下手に魔法を打つよりあいつの性質や能力を知る必要がある。なら今は…)
リオネ「シグマ君!ここから逃げよう!!!早く!」
そうやってリオネは焦ったようにシグマのもとに急いで戻って透明になれた。だが入り口はあの図体のでかいネズミが塞いでいる。
キメラス「あっそ。この部屋は比較的広い。その能力がどこまで持つのか知らないけど出入り口は一つだよ。どうするのかねえ。」
透明化状態でも仲間は能力を発動できる。
入り口につながっていないであろう別の壁を壊した場合。どこに出るかもわからないためキメラスがふせいでいる入り口につながっているであろう壁の場所に向かって魔法を使った。
リオネ(妖狐術・九。氷結鉄塊!)
シグマ(相変わらず魔法を放つ時だけ人が変わったかのように真面目になるんだよなあ。)
一見何もない場所から頭でイメージした大きさ程度の氷を狙った場所に放てる技。捧げものが要らないという点でも大きさを操作できるという点でも攻撃力汎用力トップである。
ぼこぉん!という音と共に壁から突き出てその部屋を後にした。
完全に油断していたキメラスはこの狭い部屋の中では羽を使うわけにもいかず、追うのをあきらめた。
キメラス「あいつらいい素材に仕上がってたなあ。これはシャトー様に報告だ。へへへ。」
狐族達が檻に捕まってから16日目、終。
登場人物
シャトー とある場所で療養中
ガンス
リオネ 癒炎種の女の子。口調はギャル?能力を使っているときはとても真面目な口調になる。
能力:妖狐魔術本
怪しいオーラで包まれており能力者当人以外が触ると魔術本の捧げものと勘違いされ吸い込まれて二度と出てくれなくなる危険な本。
1~30の魔術を操れるほか、10以上の魔法を行使するには捧げものが必要となり、記されている物もしくはそれに類似した物を本の表紙に押し当てながら「妖狐様、この捧げものをもって我に力を貸し与え給え。」と唱えると10番台以上の魔法が使える。
シグマ
能力:物質無視
能力で透明になっている者は透明の間でも行動制限がかかることなく能力を使う事が出来る。
キメラス
合成獣。六輪の一人。羽を広げれば4mはあろうかというくらい大きく、体が紫。気色悪い。ひたすらに。