別館編.第二十八章 不死の紅海月
ーーー22日目 朝頃の話。大広間ではーーー
クラゲはやっとたどり着いた場所にでも安心できなかった。いつ襲われるか分からない不安に駆られながら咄嗟に隠れようとする。大広間の階段裏に隠れようとした。
が、そこにはしっかりと待ち構えていた。こちらの不安を嘲笑うかのような老人がしっかりと。
???「なんじゃおぬし。死にかけじゃな。」
クラゲ「ごめんなさい。もう戦えません。」
「そうはいかぬよおぬし。捕まえろとの命令じゃ。わしも散々おぬしの仲間であろう赤髪の女の狐火とにやられてのう。酷い目にあったんじゃ。この痛みと苦しみ、今のおぬしなら分かるじゃろ。」
わかるも何もそれどころではなかった。体の節々は痛み目の前の視界もくらみそして更に外にはシャトーがいた事実でまたいつ戻ってくるか分からないから不安で精神に異常がきたしていた。もうダメだと、なんども心の中で繰り返す。
(もう嫌だ、こんなことになるくらいなら。あの時…フフ…フフフ…)
???「おいおいそこで何かよわい俺の仲間いじめてんだよ。」
そこに居たのはボンだった。
ボン「へっ。情けねえな。そんな姿で、あの恐怖の姉妹と恐れられていた妹の方は実は意気地なしだったか?ずっと去勢を張っていた。そんなところか? さて…じじい。俺の名前はボンだ。よろしくな。」
言い返す気力もないが言葉は理解していた。そういわれても仕方のない所を目撃されても今この場で縋れる者はただ一人。この男しかいないと。本館に居座っていたのは冷蔵室で野菜をむさぼり寝ていたこの男だけだった。
「わしも名乗っておこう。わしの名は”ショーヤン”。ショー爺とも呼ばれとるぞ。お前らと同じわしも特殊な種族でのう…」
とはいうがただの老人にしか見えなかった。見た目は白髪で後ろで手を組み前かがみで腰も悪そう。ガンスとかと比べるととても軟弱そうな体でボンも余裕だと思っていた。
その瞬間…
そう。変身した。同じ獣人とは言っても狐人は最初から人間と狐のハーフで変身などの力はないがその者は確実に姿形を目の前で変えた。
「なっ…なんだこりゃ。化け物だなおいおい。俺たち狐人はそんなちゃんとした人間にはなれないがお前…それはドラ…ゴンって奴か。」
「はあ。どいつもこいつも年寄りに対しての口の利き方を知らん。」
声は少し喋っているだけなのに大広間全体に響くかのような感じ。
「竜人じゃ。竜と人のハーフじゃ。ま、と言っても完全体にはなれんがのう…」
完全体というのがボンやクラゲには分からなかったがドラゴンを絵本で見て知っていた狐人達も少し違和感を抱いていた。ドラゴンではあるが腕や手、爪が長くなっていて髪の毛は完全に固くなり背中にかけて一直線で伸びていて頭は完全に緑色で目もくっきり開いていた。ただ、絵本で見たドラゴンはもっとこう…大きな物ではなかったか…? という認識の違いで混乱せざるを得なかった。
「へっ。ただの老人じゃないのは分かっていたがお前もシャトーが選んでた奴の一人って事か。」
「そうじゃな。六輪の一人。NO.5をやっとる。犬っころを殺されたんじゃ、その落とし前はどうつけてもらおうかって思ってたんじゃ。けどまあおぬしら関係ないと言われれば関係ないが生かして連れてくとしても半殺しは確定じゃ。そうじゃな…とりあえず。」
そういうとショーヤンは竜人の特徴的な大きく長い尾をいきなり大広間の階段後ろに隠れているクラゲに向かって差し向ける。
ボンは想定もしていなかったショーヤンの行動ととても長い尾の事で立ち止まって動けなかったがその後我に返った瞬間クラゲは顔を出しながら階段裏で口から血を吹いて出てきた。
「うっ。ゴフッ。ボヘァ…ハァ…ハァ…」
「…えっ。お前、お前。お前俺の仲間に。」
「あーわしやってしまった。生かして連れて帰るのに。あーやってしまったな。竜状態だとどうも手加減が効かなくて。ごめんなあ小娘よ。隠れて安心してたのか知らんが」
「ご…ねえち…」
バタッ。
「まあ大丈夫じゃろ。手加減できなかったと言えばまあお許しは」
「てめぇ自分の保身だけかよ!!!!!!!! くっそおおおふざけんな! 俺がはぁ…俺の仲間を!! 一体何のうらみがあってやるんだよ! 俺の仲間を」
「喚くなお主。今すぐ殺してもいいんじゃ。”それをされない事はとても幸せな事と思え”。力量の差とはそういう物じゃ。」
仲間が目の前で大きなダメージを受けた事実を自分の戸惑いが見せたことでクラゲが倒れとっさに駆け寄るもクラゲの脇腹には大きな穴が開いていた。とても助かる見込みはなかった。
「ボン君。ベフッ。ボ…ボン君。私…私…」
「もう喋るんじゃねえ! ふっ! ふっ! ふざけんな! 生きて…生きて皆で帰るんじゃなかったのかよ…皆でさ…」
「い…いいよ…もうだいぶやられてたしさ。私ドジですし。」
「敬語まで使って…らしくねえじゃんかよお!!」
「し…死魂撃…」
「どうした…」
「死魂撃…ボン君…私のし…しっぽ。私の胸に…」
こんな時になんて声をかけていいか分からなかったが何かするのかと思いクラゲのしっぽを持ち上げクラゲの胸に当てがう。
「ありが…とう。しこん…げき…”再起動・紅海月”」
そう告げると思いもよらない青い発光にクラゲが包まれた。ショーヤンは別れの挨拶でもして来いと言わんばかりの感じで大広間の階段で立ち尽くしていたが思わぬ閃光が階段後ろから漏れ出ていたので何事かと見ていたらボンともう一人別の者…? がそこには居た。
先ほどまで死にかけの小娘と呼んでいたただの狐人が全身の毛がその場に抜け落ち体は全身が透けており目は赤く光り狐と呼ぶにはふさわしくないながらも別の生命体を目の当たりにしているようだった。
ボン「クラゲちゃん…なのか? しこんげき…ってなんだよ。お前それ」
クラゲ(?)「最初からあのまま死ぬ気はなかったからな。悪いけど。でもボン君いなかったら死んでた、ありがとう。その説明は今は出来ない。」
声は透き通ったようなきれいな声で前までの面影はないながらも認識はクラゲ本人…(?)と思うことにした。
「そ、そうか。それは良かった。にしても毛も抜け落ちて素っ裸じゃねえか。女の子としても大丈夫なのかそれ。」
「うん。大丈夫だぜ。死ぬよりかは何もかもマシに思えてきた。色々説明が必要なんだが今は生きなければいけない。ありがとう。ボン君は戦わなくていい。私一人で倒すっ!」
「なんじゃなんじゃ。小娘その姿は…何者が…」
ドン!
そう喋った時にはすでにその場所には居なかった。ショーヤンの背後に回り込み裏拳でショーヤンを思いきり殴り飛ばす。
(なんじゃ今のは…鼻血…?)
シュルシュルシュル…
続けざまにシュルシュルと出てきた謎の透明な細い物が何本もショーヤンに突き刺さる。
「ゴバッ!? な…なんじゃ小娘!!!! 戦うなら己の拳で戦わんかい!!!!」
「じじい。お前はやっちゃいけない事をしたんだよ。私の闘志を燃やした。」
遠くに吹き飛ばされて1秒もしていないのに耳元で声がすると思うと続けざまにその生命体は確実にショーヤンに恨みを込めた殴りを何度も繰り返す。
ボン(お前は一体…一体何者なんだクラゲ…狐人…なんだろ? 俺たちの仲間なんだろ? 信じていいんだよな…?)
「いいなこの壁。このじじいを殴っても殴っても壁が壊れる気配がないや。あははははは! 死ねやじじい! この私を殺す気で尻尾で突き刺してくれたよな!!!! ああん!? その覚悟があるって事は死ぬ覚悟もあるんだよなあ!?」
そういうと殴り続けてるクラゲに対し尻尾で応戦するも透明な体をすり抜けるだけ。
すり抜ける事を繰り返し遂には勢いよく炎を吐く。
竜人は炎を吐くことが出来るし凄まじい火力で狐人とは比べ物にならないくらい。
ボン「クラゲえええええ!!!!!!」
流石にまずいと思ったのか。つい叫んでしまうがクラゲの透明の体の中に炎が入っていくのが見えた。炎は透明な体に留まり吸収してしまった。
ショーヤン「なっ!? こんな…こんな種族をわしは知らん! 知らんぞ! こんな事が…」
クラゲ(?)「私は私だよ。”紅喰らい(べにぐらい)”」
クラゲから伸びた背中の無数の透明な触手のような物は大きな塊になりショーヤンに向かって飛びつき透明な触手の為ショーヤンにダメージはないがその透明の中で確実にもがき苦しんでいた。
ボン「なっ…あいつ息が出来ていないんじゃねえか…?」
「そうだね。こうやって苦しまないと。いくらドラゴンでも窒息死は想定していなかったんじゃないかな? なあ? なんとか言えよ。あはははははは! 終わりだよ終わり。」
能力を解除すると同時にショーヤンは白目を向き竜人状態も解除され人間の老人状態で命を落とした。
「いくら何でもやり過ぎなんじゃ…」
「いいんだよ。次はシャトーだ。どこ行った。」
「待て。今俺たちの目的を見失うな。そんな姿になったとして勝てるとは限らねえ。それにお前なんか大事な情報得たんじゃないのか…?教えてくれよ。」
そう。クラゲは大事な情報を得ていた。
シャトーを倒すか館から無事に逃げるか。選ぶのは狐人達だ…
六輪の一人、ショーヤン死亡。
登場人物
ショーヤン
六輪の一人。No.5の老人。竜と人のハーフであり、普段は人の姿で生活している。腰も曲がっていてとても強そうに思われない風貌で舐められがちだが変身すると竜の要素が多くなり、二足歩行はそのままで来ている上半身のウエストははちきれ、緑色で特徴的なトサカがあり腕は鱗がつき爪はとても長く伸び獲物を捕食するかのような牙も即座に生える
クラゲ(癒)
瀕死状態で館の本館に戻り大広間で隠れていたが六輪の一人に見つかる…
死魂撃:再起動・紅海月
全身透明の姿に変身。狐人は元々毛が大量に生えていたがそれもすべて抜け落ち体は透明で透け通った形になる。この姿に変身する力は一度使えば二度と元に戻ることはない。
自身の体から無数の透明な触手を操れるようになり身体能力は格段に上がる。
技:紅喰らい(べにぐらい)
無数の触手を大きな塊にして相手に攻撃。物理的なダメージはないが顔をそれで覆われた者は息が出来なくなり数分で死に至る。
ボン(狩)
瀕死状態のクラゲを守ろうとするも竜人の想定を超えた尾の長さで仲間が攻撃されてしまい完全に油断していた。その後即座に駆け寄り最後に声を振り絞っていたクラゲのしてほしいことを聞いてあげクラゲの傘のような独特な尻尾を胸にあてがってあげるとクラゲは違う姿に変身する。
それを眼前で目撃した
クラゲの正体が元々そういう特殊な種族というより勘違いしてほしくないのがこの子はちゃんとした狐人であり死魂撃を発動する事で自分が自分でなくなってしまう可能性を危惧していたので能力は封印しようという考えでした。だがそうもいっていられないと考え変身能力である不老不死でも有名な紅海月の能力を持った何かに変身しました。
それもこれもすべて2025年に色々と展開が進むにつれ少しずつ明かしていく予定ですので
良ければそちらまで楽しみにしていただければ幸いです。
2024年も見ていただいてありがとうございました。2025年はラストに向かうための各々の活躍を見ていただければと思っています。仕事納めされた方ほとんどだと思いますので2024年もお仕事お疲れ様でした。




