屋敷編.第三章 閉じ込められた狐達
朝だ。この部屋は窓も何もないし、屋敷のどこに位置しているかも分からない。朝日が差し込むこともなかったから朝なのかどうかも実際わからない。ただ起きただけ。
「さてと、これからすぐに帰れるかだけど、難しいかな。なんせ客人だし。」
時計を見ると朝の8時だった。朝ごはんやけに遅い…客人って言ってたのにもてなしが全くない。それとも僕があまりに起きなかったのかなぁ。
そんなことを考えても仕方ない、朝日が差し込んだ長い廊下を歩き続け、1回の広間に出たがシャトーの姿がなかった。
「あれ、朝ごはんまだかな。」
先程でてきた向かいの大きな扉が食堂を象徴するかのような大きな扉なのだが、それよりも気になったのが踊り場の鉄の扉。この屋敷に鉄の扉なんて気になって仕方がなかった。
まだシャトーもいないし少し覗くくらいなら…って思って覗いてみるとそこには墓が広がっていて思わず「ヒャッ」と何故か小声で言ってしまった。
「なんだここは…」思わず心の声が出てしまったのだが、やっぱり入りたくなって入ってしまった。
そう言って進んでみると鉄格子に囲まれた墓、そして狭い道の中に目立つ墓があった。
それを読んでみると。
「偉大なる墓」
分かるのは明らかにこのお墓だけ一本道に通ずる奥にある。。。
どうみても他のお墓と雰囲気が違う、なんかこう。ここだけ屋外でお墓があるっていうだけでも不思議なのに他のお墓と大きさが違う。
偉大なるものがこの中に…
ボコッ
なにか音がした。墓に振り返ると墓が微かに揺れているように感じた。
だがとても一人で動かせる物じゃない…
どうする…と考えているとふと文字が大きく刻まれている部分の右上に丸いボタンのようなものを見つけたのでそれを押してみると「ズズズズズズズズ・・・」と墓がひとりでに後ろに行き、地下に続く階段を見つけた。
「あれ?もしかして押しちゃいけなかったかな?まあいいや。また押せば戻るでしょ…あははは…」
「・・・・・・。よし!入ってみよう」
そう決心し入って、奥に進むと鉄格子があり、その中にはなんと仲間がいた。
「おい、フォル…フォルなのか…?」「フォルううううううう~」
少なくとも五人以上は仲間がいた、鉄格子越しでもわかった。
「よし、どういう状況なのか全く理解できないが今助けて…どうやって開ければ…これか?」
どうやら外からは簡単に開けられた。
フォルが中に入ったとたんに泣きついてきた仲間たち。
ボン「おおおおおお、ついに助けが来てくれたか…ごめんよ、俺たちこの城に26人あのシャトーって奴に招き入れられて、寝てる間に全員がこの檻にぶちこまれたんだ…」
フォル「でも見たところ七人しかいないみたいだけど…どういう事だ?」
「それが、この城では何かヤバい事が行われている気がしてよ…あのシャトーって奴俺たちを二日経つごとに檻から二人ずつ連れて行ってるんだ…檻にぶち込まれて今日で16日目、今は朝の何時だ?時間もわからない、とにかくお昼にはこんなかから二人連れていかれるんだが檻の中にいちゃ時間がわかりゃしねえ。」
この子はボン、村の中でもTOP3に入るほどの実力者。
フォル「でも今の話だと計算しても14人連れていかれた事になる、この城には26人招かれたんだろ?あとの五人はどうした?」
「話すと長くなるんがよ、とりあえず檻に閉じ込められる前の話を落ち着いて聞いてくれ。あ、あと鉄格子はちゃんと閉めておいてくれ。」
フォル「は?出られなくなるよ?」
「いや、出る方法はある。俺たちは''あえて出ていないんだ''」
そういわれて極度に心配になったがためらいながらも鉄格子を閉めた。
_________________回想__________________
シャトー「26人のお客様、多いですわね。今日は忙しくなりますわよガンス。」
ガンス「はい、お嬢様。」
(俺たちは、こいつにいいように騙されていたんだ、この日の夜までは豪華な食事、部屋まで用意してくれた、確かにそうだ俺たちも悪い、館に近づいた…というか立ち入り禁止のとこに入ったのも悪い。だがこの世にはもっと悪い奴もいるってことだ。起きたら全員が鉄格子のなかさ。)
…
ガタン!!!!!
俺が起きたのは鉄格子が閉められた音だった。みんなももちろん困惑していた。昨日の夜まで男女別れて仲良く話していた部屋が寂れたレンガの部屋になっているなんてな。
ボン「おい!!!これはどういうこったあ!」
鉄格子越しにシャトーが俺たちを見ながら起きるのを待っていたかのようにおもちゃでも見ているかのような目で俺たちを見ていたんだ。
シャトー「何がですか?あなた方が招き入れられたんですよ?この地獄の館へ…オーッホッホ。あ、そうそうそこにわが屋敷においてあった古い本、お暇なときにでも見て構いませんわよ。」
そういうと去る時まで皮肉なほど笑い声がこの薄暗く汚い部屋に響いたんだ。
このときはもちろん連れていかれるなんて思っていなかったけど、各自困惑も薄れてきたころ、汚い床に置かれた何十冊という全てが分厚い本を交代だったり一緒にだったりで読んでいたんだ。
シグマ「ねえねえ君たち、ちょっとこれを見てくれよ。狐人の歴史…だってよ。」
こいつはシグマ、本が大好きで村では結構頭がいいほうだった。要するに勉強熱心。
それにしてもこいつが見つけれくれたページは俺たちにとって大発見だった、この窮地を脱するのにいい材料になった。
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ボン「てなわけだ、シグマは連れ去られたメンバーじゃねえんだが、あいつは俺とよく仮でペアで仮に行っていたさ、あいつは男ではレアな癒炎種、俺は狩炎種だ。自分で言うのもなんだが村では結構な強さだったが、ここの鉄格子だけは壊せなかった。」
フォル「ちょっと待ってくれ、話が見えない。なんで連れ去られたメンバーじゃない奴がこの檻の中にいない?」
「それはだな…」
???「説明が難しいんだな、わかった僕がするよ」
ボン「頼む」
この子はデク。特化したものが何かあるわけでもない、でもどこかすごいオーラを感じるときがある。
デク「僕たちは見たんだよ、この本を。」
そうやって取り出した緑の本は「狐人の歴史」だった。そういやさっき話にも出てきてた。
「なんでフォス爺は教えてくれなかったのか、俺たちには三つの種しかないと思っていたけど、実は炎の操り以外にも学ぶべきことはあったんだ。」
フォル「何があるっていうんだ。」
「まあ君みたいな生まれ持った幻炎種とかいう恵まれた能力者なら察しはつくと思うけど炎の使い方には応用があったんだ。」
驚いた、じゃあフォス爺が教えてくれることはあくまで基本的な要素だったのか。
デク「シグマはね、透過出来る。物を無視して移動ができるんだ。」
フォル「へえ。」
「うっ…まあ君は分身が出せたね。まあそれ程ではないんだけど、物体をすり抜けることが可能なんだ。」
フォル「なんだ、ならいないのも理解できるね。」
「そんなに驚かないのね。ハハハ、全く尊敬だよ。話を続けるね、あの子に触れてる狐人も一人だけなら物体も透けることが出来る。」
ボン「とにかくだ、シグマは賢い。しかも能力も逃げるに最適。戦闘不向きだがあいつには逆に好都合、先に檻から逃げて別の四人にも同様、情報を集めてきてもらうほうがいいと判断した。もちろん満場一致だ。」
フォル「なるほど、五人には捕まらずに生き延びていてほしいな。」
「ふわぁぁぁぁ」
デク「あ、二人とも起きた?」
「あ!フォル!!!!!フォルうううううう」
フォル「おいおい、抱き着くなって」
エイ「ごめんごめん、起きたよ。」
この子はエイ。もう一人、エイに寄り添って寝ていたのがクラゲ。二人とも女の子だ。
ボン「おいクラゲ、お前まで何寝てんだ。」
クラゲ「は、はあああ?寝てねえし。ふざけんじゃねえ。私は寝てねえ。」
「がっつり寝てただろ…もうちょっと緊張感持ってくれ。」
「わ、悪かったな。」
フォル「女の子は、なるほど二人か。おいお前ら三人も起きてくれ、ここを抜け出すぞ。」
そういうと三人はビクッ!と体が動いてだるそうになりながらも体を起こすのだった。
「お、お前フォ、フォルなのか…?」「一か月ぶりくらいか…?」「体痛い」
寝ていた三人、ビスケ、タカ、ヤソ。仲良し三人組、奇跡的に連れていかれなかった。むしろ仲良しそうだったから連れて行かなかったのか?
ヤソ「さっきフォルが入ってきたときフォルううううう~って叫んだんだけど、そのあとの話が眠すぎて寝ちゃったよ。」
全くなんでこう緊張感がないんだ…。俺が今一番状況を理解しずらい立場だというのに。
フォル「ごめんってヤソ。とにかく!!!感動に浸るのはここを抜けてからだ、とりあえず俺は檻に来てからこの悲惨な現状を知った。打開するには皆の力が必要なんだ。」
エイ「どうすればいいの?」
フォル「まずみんなの能力を聞いておこう」
登場人物
フォル
リリアン・シャトー
今回の件で残忍な奴だと判断できる要注意人物
ガンス
シグマ
檻から先に逃げたメンバーの一人、男の癒炎種。透炎能力を檻にいる間に身につけた。尻尾から透明度の高い炎を練りだして、自分の全身に纏う事で一時的に透明になれる。一人までなら触れても透明能力が失われる事がない。
ボン
村では三番目に強い実力者。男の狩炎種。ペアになる狐人は癒炎種じゃなきゃいけないが、たまに約束を破って一人で狩に出かける事がある。
デク
男の狩炎種。
エイ
女の癒炎種。
クラゲ
女の癒炎種。口がめっちゃ悪い。
ビスケ
男の狩炎種。
タカ
男の狩炎種。かなり痩せている。
ヤソ
男の狩炎種。太った狐。