第十五章.村人会議
フォルが返って来なくなって三日目、フォス爺は心配になり村で緊急会議を開く。
フォルがいなくなって三日目、狐人26人行方不明事件からは19日目となるが、村人たちは全く何もして
いなかったわけではない。出来なかったのだ。
村人会議では子を持つ親だけが普段学校として使っている子供たちの教室のような場所を一時的に大人たちだけで座って会議する。
フォス「すまんのう、皆に集まってもらったのはほかでもない。フォル君までもがいなくなったのじゃ。
あの貴重な幻炎種の子がいなくなったとなれば一大事。」
「あのー…」
フォス「なんじゃ。」
「いやそのですね、探索するのが遅いのではないかと思うんですよ。もう二週間以上も経ちます。それなのに…」
フォル「今わしが喋ってる途中じゃ。その話を今からしようとしていたところじゃ。そう慌てるでない。
探索などとっくに行かせとる。何かない限り5人以上で群れるのは禁止なルール上伝える手段は限られとる。いちいち伝えられるわけではないのじゃ。いなくなった翌日、明るくなってから優秀なフォルメス、アカエイ、アデクに行かせとる。遅くなって申し訳ないが、アデク。説明を頼む。」
アデク「はい。皆さんにお集まりいただいた理由は、これから脅威になるかもしれない事のお話です。
バラ島の西に位置する森の中。あの子たちを連れて行った者。いいえ、場所というべきかもしれません。
森全体は広大と言われると微妙ですがそれなりに広く、入れば視界は悪いです。
立入禁止の札。その奥も調べました。ですが何もありませんでした。」
「何もなかったとはどういうことですかー!」
「ちゃんと調べたんですかー!」
アデク「はい、我々三人で手分けして探しました、冷静に聞いてください。
何もなかったんです。」
「何もないなんてことはないだろー!崖の下とか穴を掘るとかしたのか!」
アデク「ここで、逃げ延びた子の証言を聞いてみましょう。来れるかい?」
そういって怯えながら出てきた子の名前はユーキ、命からがら逃げ延びた狐人で、村に帰ってから5日間は水だけ飲んで食事すら喉を通らずに家族に心配されつつももしかしたら操られている可能性などを加味して村人たちはユーキを監視していた。
ユーキ「村の人たちすみません…わ、私だけ怖くて先に逃げてしまいました。」
「はぁ?そんなことどうでもいいんだよ!」「うちの子をどうしてくれるの?」
「森に遊びに行ったら事件に巻き込まれたじゃ済まねえぞ!!!」
ユーキ「うぅ…」
ユーキは女の子の癒炎種であり、事件前はアクティブでなんでもテキパキやる子だったが帰ってきてから臆病になってしまい極度の人間不信に陥ってしまった。
アカエイ「静粛に!!!大人が寄ってたかって責めるのどういうことですか?あなたらそれでもあの子たちの親ですか?確かに今。心配なのはわかります。ですが私たちは戦える族です。戦うためにいる種族なのです。
確かに戦うといってもこの島に外部の人間が侵入したことはなかった…ですが・」
フォス「やめいアカエイよ。おぬしどこまでいう気じゃ。」
アカエイ「は。失礼いたしました。」
フォルメス・アカエイ・アデクは左から男、女、男で大人の狐人の中でも群を抜いて強い。村で何か起こったときの為の精鋭三人組。
フォス「外部の人間がこの島に上陸するには海を渡ってかつ高い崖をよじ登れるものでないと不可能じゃ。もちろん鳥族とやらがおるのならここに来るのも容易いんじゃろうが、とにかく今はフォルを最優先で見つけ、他の捕まった子たちも救い出すのがわしらの任務じゃ。あの子たちの親として心配な気持ちも分かる。それと同時に何らかの事故で海に落ちていたとしてもわしらは助けられん。だが幸いなことにフォルの匂いだけはまだ消えていなかったと報告が上がっとる。森で消えたにしてもそこまで広くない。」
ユーキ「あ、あの…まだ言ってなかったんですが…」
フォス「ん?なんじゃ。」
ユーキは屋敷のことを即座に伝えておくべきだ。そう思ったがユーキは恐怖心が募りに募ってとても何かを喋れる状況じゃなかった上に、今喋ったらまた大人たちが寄ってたかって自分に何かを言ってくるのだと思い口を閉ざすしか方法がなくなってしまった。
ユーキ「ご…ごめんなさい。何でもないです。」
フォス「なんじゃ。ならいいんじゃが」
フォルメス「ねえ。ユーキちゃん。」
ユーキ「ひゃ!ひゃい!なんでしょう!」
話しかけられるとは思って無くて思わず驚いた。フォルメスは女の子大好き超イケメンな狐人。落ち込んだ女の子の癒しの的でもあり、女性からは人気者。
フォルメス「真面目に聞いてほしいんだけど。もしかして何か隠しているでしょ。。。?」
ユーキ「え・・・・・・」
「おい!それはどういうことだ!」「フォルメス手前何か知ってんのか!」「またくだらないジョークだったら許さねえからな!!!」
そう、フォルメスはそれと同時に冗談が非常に多い。故に村人たちからは信用などされてないに等しい。でも実力だけは確かである為、皆も力だけは買っている。
フォルメス「いやね、、、君のその瞳。僕たち狐人たちに対する恐怖心のほかにも隠し事をしているような眼をしていたような気がしたからさ…例えば…今物凄くおなかが減ってるとか。。。!」
ユーキ「…はい?」
「おま!フォルメス!」「マジ怒った。俺いつも我慢してたけどあいつだけは許せねえ」「フォス爺様!なぜそのようなやつを精鋭隊に入れるのですか!せめて会議の時だけは除外しておいても…」
フォス「黙っておれぃバカ者どもが」
フォルメス「僕は人の目を見れば隠していることがある事はわかる。内容まではわからないでもね。だから聞いたのさ。別に意地悪した訳じゃないよ。もちろん人に隠し事はいっぱいあるさ。それは別にいい。
ただその隠し事がこの村を更に危険に陥れる隠し事だった場合。ユーキちゃんは最上級の罪悪感で押しつぶされることになる。これは冗談でも何でもないさ。だからここからはまじめな質問。
今ほかの大人たちに罵声を浴びせられようものなら僕が全部引き受ける。だから言ってほしいな。」
ユーキは心が痛むような悲しさでいっぱいいっぱいであったと同時に最後の言葉で強く決心した。
ユーキ「す…すみませんでした!!!!!あ、あそこの森には、ほ、本で見るような立派なお屋敷が建っていました!で、、、でもな、な。。。」
ユーキは言葉が出なかった。やはり恐怖もあったのだ。
村人たちは愕然としていた。このような子供たちが何人もいなくなったうえにその大事な緊急会議でここまで信ぴょう性のない話や冗談を話されていて堪忍袋の緒が切れた村人がいた。
「お前いい加減にしろ!!!!!!!!!!私の息子は森で行方不明になってそれからどんな想いをしているかわかって言っているのか!!!」
ユーキに向かって飛び掛かろうとした村人の手を思いっきり掴むものがいた。
アカエイ「すみません。やめてください。」
「あぁ!?お前も今聞いただろ。何が絵本で見たようなだよ!そんな絵空事聞きにわざわざこのいつも子供たちが使っている小さな学校で。皮肉にもほどがあるだろうが!!!!!!!!!!!」
それと同時に襲い掛かろうとした村人を強力な力で地面に叩きつけた。
「ごえふっ!?」
地面がえぐれるほどの衝撃に耐え切れず村人は気絶した。
アカエイ「皮肉めいたとか冗談とかそれはまだあなたの憶測でしかありません。いいですか、他の方々もよく聞いてください。少女の涙を流しながら話す言葉が信用できないという方々はこの会議場から出て行ってください。今この方は襲い掛かろうとしたので実力を行使させていただきましたが次はこれ以上で行きます。あなた方の気持ちも分かります。不安もあるでしょう。ですが今はその気持ちを抑えていただけませんか。申し訳ありません。この通りです。」
そういうと精鋭隊の三人が深々と頭を下げた。
「お、おう。それはすまなかった。」「今の私たちに大事なのは話を聞いて情報を整理することだったわね。。。」
フォス爺もアカエイの少々手荒な説得方法にもただ黙ってうなづいて感心していた。
アカエイ「ごめんねユーキちゃん。続き。聞かせてくれる?」
ユーキ「はい・・・」
そういって整理しつつも話し出したユーキの目にはどこか安堵と力強い意志を感じるのであった。
-----会議終了後-----
ここからは食料をある程度持ってテントを持って精鋭隊だけで森を見張る事にした。
アカエイ「では行ってまいります。フォス爺様。」
フォルメス「爺や。行ってまいる!なんつって。」
そういうとアカエイは思いっきり殴る。
フォルメス「いった。真似しただけじゃんかよー。」
アカエイ「うるさいです。礼儀をわきまえてください。それにあの会議。あなた"能力のことは機密に"ってお願いしてるでしょうに。」
フォルメス「はぁ???アカエイちゃんも行使してただろうがー!」
アカエイ「私は突然変異で筋肉が異常発達した女の子っていう風に通ってるから問題ないんです。」
アデク「あのなあ、アカエイお前も悪い。気絶までさせる必要はなかったんだぞ。」
アカエイ「アデクさんまで…わかりました。以後気を付けます。」
フォス「そうじゃ。狐人の能力に関しては知る人しか知らん。まだおぬしら三人しか今生きてるもので知る者はおらんからな。とりあえずフォルを最優先で探すように。見つかったら一人は報告の為に村に戻る事。二人はそのままそこで捕らえる役を。頼んだぞ。」
アデク「分かりました。」
フォルメス「オッケー爺…じゃなかった。はーい爺や。」
そういってテントを張って夜通し三人は例の森付近を見張る事になった。
登場人物
フォス
村長であり村の代表者。
一番隠し事が多い人物であるが村人たちからは慕われている。
ユーキ
唯一逃げ出してきたもの。屋敷の存在などを知っていたが最初は怖くて誰にも相談できなかった。
逃げる前に何があったかまではトラウマでフラッシュバックして酷く怯えるため誰も聞けない。
が、しかしフォルメスに背中を押してもらい村人たちに告げるのであった。
アデク(精鋭隊リーダー)
精鋭隊のリーダーで狩炎種。息子が一人いて、その子は今回の事件に巻き込まれなかったが、それでも精鋭隊のリーダーとして村人たちを説得したりした。
アカエイ(精鋭隊メンバー)
精鋭隊のメンバーで女性の狩炎種。落ち着いた性格とは裏腹に何か強大な力(能力)を持っているとのことだが。。。
能力:???
フォルメス(精鋭隊メンバー)
男性の狩炎種。イケメンで皆からちやほやされる超イケメン。
どうやら人の目を見ただけで隠し事があるかどうかわかるらしいが…?
能力:???