屋敷編.第十四章 適応能力
19日目。別荘にて
シグマとリオネは魔導書を見つけて話が通じることを利用してシャトーの情報を聞き出そうと考えるも、魔導書には呪いがかかっており簡単に情報を引き出すことができなかった。
そんな中、誰にも見つからずに別荘に入ったつもりの二人が別荘にシャトーの刺客が来たことに驚きつつも
その刺客たちに情報を与えている人物が自分たちを捕えに来た二人以外にもいることを危惧せざるを
得なかった。
レピニア「自分らに好き勝手別荘を荒らされるわけにもあかんのよ。それがシャトー様の命令や。」
シグマ「誰かの下に付く事をあんなに嫌っていたレピニアさんがどういう風の吹き回しなんだ。」
レピニア「あの方には抵抗するだけ無駄。何もかも見透かしているかのような透き通った目。そして
狐族が対抗できるわけもない圧倒的力。自分ら大して接してもないからそんな余裕ぶっこけんねん、
そしてどういうわけか屋敷からも出られへん。シャトー様についた奴はみんなこの屋敷のことを色々
教わってんねん。」
シグマ「その情報さえあれば狐族達どれほど助かるのか分からないのか…!」
レピニア「自分なぁ…そうやってもしかして二人だけ助かろうとかそういうわけちゃうんか?」
シグマ「俺たちは絶対あんたたちを捕まえて情報を聞き出して見せる。」
レピニア「聞き分けの悪いやっちゃなあ。」
レピニアはそういうと瞬時に駆けだしてシグマの後ろに回り込み首を絞める。
シグマ「うっ。。。苦し…」スッ
勢いよく絞めて気絶まで狙っていたレピニアの首絞めがすり抜けた。
レピニア「おお!ほんまにすり抜けよった。やるやないか。おいレッサー、シグマ君がすり抜ける際にどういう行動しとった?」
レッサー「…。多分意識しただけかと。目立つ動作みたいなのはなかったと思います。でも最初から発動してたら首を絞めるまでできないから、最初からではないと思います…。」
レピニア「なるほど、意識すれば発動するんやね。ただ、ここはどうや!!!」
レピニアは咄嗟に頭を回転させて足払いを行う。
シグマ「ぐへっ!?」
レピニア「やっぱそうや。自分足だけ透過させられんのやろ。そりゃそうや、全身を発動させるっちゅうことは地の中に吸い込まれて行かなあかん。でもシグマ君はそれがなかった。
つまり弱点は足やね。ただその技能だけはめっちゃええね。しゃあない、でも相手が悪かったな。悪いがこの勝負…」
しかし、ただ黙っていたリオネも魔術のために準備していた。
リオネはハチミツだけでなく他にも魔術本にストックしていたのだ。
魔術本自体にストックできる数は5つ。今現在ストックしているものはハチミツ、ガソリン、部屋から拾った画鋲、鏡の破片、シグマから預かっている気色の悪い色の液体の入った瓶。
魔術本にストックしたものは使いたい物を言った後に「妖狐様、この捧げものをもって我に力を貸し与え給え。」といいその後に魔術本を持ち自分の頭より高く持ち上げ、術名を叫ぶ事で本の表紙(大きな口がある方)を向けている方に放たれる。
「すいませんねレピさん…!でもこれも狐族のためなんです…。」
そういうと部屋から拾った画鋲を魔術本の表紙の口にかざすと自動で消え、リオネは魔術本を自分の頭より高く持ち上げ術名を叫ぶ。
「妖狐術・十六!かまいたち!!!」
本から強烈なかまいたちが放たれ、致命傷レベルの威力の物が飛ぶ。
レピニア「な、なんやーーー!?!?そんなん聞いてないで~~~~!!???」
入ってきた場所に近い場所で傍観していたレッサーはそれを察しいち早く部屋から出たが
シグマを攻撃するために近づいてきたレピニアは逃げ遅れまともにかまいたちに直撃。
体に無数の切り傷をつけられ部屋の中で倒れた。
レピニア「あ、アカン…強すぎや。。。なんやっけ、りんごちゃ」
リオネ「リオネです~~~!」
そういうと頭を叩いた。
レピニア「ええんか?わいなんか相手にしてても…」
リオネ「シグマ君。なんか縛る物ない?」
シグマ「この部屋にはないね。どっかにあるんじゃない?でもこの傷ならしばらくここから動けないはず。とはいえこのままにしておくのも…。」
リオネ「それはそうだよー!あとこの別荘から早く出ないと。確かにレッサー君に逃げられてるから
この場所も時間の問題。てことでレピニアさん。」
レピニア「なんや…こっちは体中が痛いねん。」
リオネ「そこの薬?がいっぱい置いてある部屋の番号を教えてください。」
レピニア「いやや・・・とでも言うと思ったんか?ええで。素直に教えたる。
今の自分の立場をわきまえられん奴が一番嫌いやからな。そこは310315や。シャトー(様)サイコーで覚えときゃええで。」
シグマ「意外と素直に教えるんだ…。」
そういってあっさり暗証番号を吐いた部屋を開けてシグマはレピニアをその部屋まで運び
その場所で待機させることを考えた。
シグマ「リオネ~?ほんとに大丈夫か?結構傷だらけで癒炎種の俺がいたほうがいい気がするけど。」
リオネ「ねえ、忘れたの?私も立派な癒炎種なんだけど?女の子の情報抜けてるとかサイテー。
てか、そんなに心配なら応急処置程度にしてよ。無理無理、絶対待てない。はい!今から五分ね。
ダメダメ。それ以上はぜ~~~ったい」
シグマ「わかったわかった。もう、魔術使うときはまるで別人のようにかっこよくなるのに
普段の言動は我儘しか言わないんだから。」
リオネ「なんか言った?」
シグマはリオネが聞こえない程度にボソッと言われてヒヤッとしつつも、別荘のその部屋を後にする。
---現在シャトー側勢力---
シャトー、ガンス(執事)
六輪
キメラス死亡←交代で一人(狐人の中の一人)カイコツ(狐人ではない)、
他四人(狐人かどうかは不明)
檻から連れていかれた狐人→14名
内一名シャトーと交戦し死亡。(グリム) 内一名は脱走。(ジーナ)
内一名は檻の中から連れていく最中、忽然と姿を消す。
シャトー側勢力(狐人)11+(その他)7人の計18人。
同日。とある場所にて
時を同じくして、ボン達と行動を共にしていたエイとタカはあの後すぐにシャトーと鉢合っていた。その後別々の檻に閉じ込められ、解放され縄で縛られたままシャトーの前に放り出される。
エイとタカは数日閉じ込められていたため何も口にしておらず、げんなりしていた。
シャトー「あらあら、そんな姿になっちゃって。このお二方に食事をご用意してあげなさいな。」
エイ「…。一体貴方は何がしたいの!!!」
シャトー「あら、いきなり本題かしら?その前に紅茶とクッキーはいかがかしら?」
シャトーはそういうと犬に餌をあげるかの如く地べたにお皿の上に乗った紅茶とクッキーを差し出す。タカはかなりやせ細り、手を付けようともせずそれどころか恐怖で体が震えていた。
シャトー「わたくしは別にあなた方に危害を加える気はなくてよ?ただ実験体になってほしいのですわ。実験って言葉自体にも聞きなじみがないかしら…?なんて言ったらよろしいかしら…でも本当に体に害はないですわ。というか御一つお聞きしたいのですがあそこの村に戻って楽しいかしら?ここのお屋敷のほうが何倍も楽しいと思いまして。。。!お仲間も大半は賛同しておりますの、悪いお話ではないですわ。もちろん今答えを出す必要はないですわ。」
エイ「私にとって、いいえ、私たち狐人にとってあそこは居場所なの!!!私たちの居場所を取らないで!」
シャトー「…いいですわね。そうやって居場所居場所って。よっぽどあそこが帰る場所なんですわね。」
エイ「貴方は知らない。もう私たちが連れ去られて二週間、三週間は経つ!そろそろ村の人たちが黙ってないはず。。。!」
シャトー「貴方方の種族は…燃えるんでしたっけ?おあいにく様、このお屋敷は絶対に燃えませんの。
寧ろそれを怠っていないように散々準備してきたんですわ。」
エイ「ふっ…つ、強がりを!だったら六輪だっけ…その人たちと村を襲撃すればいいはずなのに!臆病者!」
シャトー「今この場にいるわたくしが一番最強。なぜなら臆病者だからですわ。戦場で一番長生きするのは臆病者。私は100年以上も生きてるんですの。貴方方とは知識の量、経験の差。すべてを埋め合わせても勝てませんの。だからせいぜいがっかりさせないで欲しいんですの。いいわ。貴方方逃がしてあげますの。」
その時、近くで見張りをしていた六輪の一人が声を上げた。
カイコツ「な!何を言っているのですか!こいつらを逃がす!?今相当喋っちゃいましたよ!?それだったらこいつら殺すか実験体にして記憶を消すしか…」
そういうとシャトーは黙って触手でカイコツを威嚇する。
カイコツ「ひっ!?」
シャトー「いいんんですわ。これでいいんですの。私の決定は絶対。どのみち実験体にしても記憶が消える確率は50%。消えなかった場合殺すしかないんですの。でも、ここまで言えば六輪の一人に任命したカイコツ様なら分かりますわよね?私が一番嫌いな事。分かりますわよね?」
カイコツ「失礼いたしました。ご無礼をお許しください。」
シャトー「さ、お二方、食べたらカイコツに出口を案内させるからそれで仲間と合流するなりなんなりしてくださいまし。」
タカがクッキーと紅茶を一気に食べた後震えながらこう言った。
タカ「あんたらが何を考えているかは分からない。でも、そ、そこまで情報を与えたなら覚悟しろよ…!」
シャトー「うふふ。お楽しみしていますの。」
そういうとシャトーは別の部屋に消えていった。
カイコツ「おい。お前らこっちだ。おい!タカっつったか?お前早く歩け!」
カイコツは出口に案内する最中全然歩かないタカの背中を蹴りつつも出口らしきとこに出た。
タカ(ここが出口…?村にある井戸に似ている…てことはここは井戸の中間に部屋があるって事なのか?
ボーっとしながら出口のとこに出て下を覗こうとしたら瞬時に井戸らしき場所の上の場所にいた。
タカ「な!なんだ!?い、一瞬でここまで…!」
エイ「入れ替える能力だって。」
タカ「…え?」
エイ「それくらいしかないでしょ…分からないわよ。タカ。あんたちょっと混乱しすぎよ。確かにこんなどこ行ってもジメジメしてて薄暗い場所、早く脱出したいでしょうけど。ほんと我慢してよね。
私、そういううじうじしてる人嫌い。貴方三兄弟の中ではいちばん優しい奴って評判だったけど、優しいどまりで終わってたら女の子にはモテないわね。村では優しい子がチヤホヤされるけどそれって優しい子はいろいろ頼みごとを聞いてくれたりするからよ。団体の中で見たら優しくない言ってしまえばクズの子よりだいぶ重宝されるけど恋愛とかになったら別よ。しっかりして。真面目に。ほんとに。」
タカ「だ、だいぶこの環境に適応してるんだね。さ、流石エイちゃん。僕は兄妹っていう一番身近な存在が亡くなったって聞いたからだいぶ堪えてるよ…悪いけど少し一人にしてほしいな。」
エイ「そこはごめんね。そこは配慮が足りなかったわ。でもタカに元気出してほしいっていう言葉の裏返しだから。そういう事だから。」
タカ(女の子って分からないなあ…。エイちゃんってこんなにメンタル強かったっけ…?
あの場にいても怯まずに質問で来てたし凄いなあ。僕も見習お。)
---檻にいた狐人勢力(以後紹介するときは檻メン)---
檻にいた狐人十七人(シグマ含む途中で抜け出したメンバーを含め)+フォルの十八人
内一名何者かに喉ぼとけをナイフで刺され死亡していたため現十七人
登場人物
レピニア
関西弁で話す捕まった狐人達の中では最年長でリーダー的存在だったがそれに目を付けられ
すぐに連れていかれて実験体にされた。
能力:???
レッサー
寡黙で戦闘を観察しながらシグマが意識をしながら能力を発動していることを見極めた。
シグマ
年上だろうとため口
能力:物質無視
透過能力で、自分が意識した状態でのみ透過が発動。
特徴:ただし全身発動させることは出来ず、足のみ発動させること自体不可能となっている。
リオネ
能力:妖狐魔術本
特徴:ストック出来るものは5つまで。(他詳細は八章で解説しています。)
シャトー
何を考えているか分からない狂気的な屋敷の主のお嬢様。情報を与えたうえで捕まえた二名を逃がすみたいだがその真意は…?
カイコツ
六輪の一人。全身骨のまま生きている。シャトーの実験により骨でも意思をもって喋れるが、実験されたときはとてつもなく苦痛の元に生み出された。
能力:入れ替わり。(仮名)
エイ
能力:テレパシー
特徴:目をつぶっている間のみ周りの人物が緑色の何かと認識し、語り掛けたい人物を意識しながら
話しかけることでテレパシーが可能。ただし、ある程度味方という確証がない限り
相手が化けている可能性も加味し慎重性が必要。
タカ
屋敷で捕まってから元々のおびえた性格に拍車がかかり、常時震えている。
エイのメンタルに強いあこがれを持つ一方で情報をいち早く味方の元へ持って帰ろうと努力する。
能力の習得難易度が不明だが捕まっている間に能力の鍛錬が不可能だったため、上手く使えない可能性。
能力:???