涙の約束
すべての恋人たちに贈る物語です。
里香は別れ際にいつも泣きじゃくる。嗚咽に近いから、言葉にならない声で話すので聞き取りにくい。けど、里香が愛しい。
「ごえじぇきゅん、グスン、グスン。まだずぐあいじぐどぅがなでぇ!(康次くん、ぐすん、ぐすん。またすぐに会いに来るからね!)」
「えっ!?あぁ、うん」
「だだでぃ。わだじばぼんじょべぇ、だだでぃ(悲しい。私は本当に、悲しい)」
里香は鼻水をすする。
涙が止まらない。
「うん、そうだな」
「ざいじゅうのどおよりに、きゃたぎゅるきゃらけ!(来週の土曜日に、また来るからね)」
「分かった」
「びぇ〜ん! うっうっ。ぐすん、ぐすん。うぉ〜ん」里香は泣きじゃくる。鼻水も、涙も、なんのその。
「がえっばら、じぇんばでばな、ぞーじぇい!(帰ったら、電話で話そうね!)」
「そうだね」
汽車が来た。
里香は乗り込む。
扉が閉まる。
里香はガラスに顔を寄せて、泣きじゃくる。
康次は扉のガラスに近づいた。ゆっくりと口を動かして「里香は可愛いな」と言った。
里香は「エヘヘヘへ」と鼻水を垂らして、涙で化粧が崩れて、目を真っ赤にして、鼻も真っ赤にして、頬も真っ赤にして、溢れる笑顔で笑った。汽車がゆっくりと動き出していく。康次と里香はガラス越しに右の手のひらを合わせていた。
「またね、里香」
「またね、康次」
「里香、愛している」
「私も愛している」
と康次は速度を上げる汽車に合わせて駆け出しながら、お互いの口を読み取っていた。
汽車が遠のいていく。康次は涙を流しながら里香を見送っていた。ラインが届く。
『康次くん、ありがとう』
『こちらこそ、ありがとう! 気を付けて帰るんだよ』
『わかったよぉ! 愛しているよ』
『知っているよ(笑)里香を愛しているよ』
『知っているよ(笑)』
終
ありがとうございます。




