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悪魔が巡りて人間知る  作者: 家ノ風
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悪魔は悩む

日も暮れ、鳥たちの鳴き声も段々と聞こえなくなってくる時間。そんな時間にずっと立ち話していられるわけもなく、ましてや少女はその制服から学生と見受けられるのだから、門限なんかがあってもおかしくないわけで。


「そろそろ帰らなきゃいけない時間なのですけど、連絡先とかってどうすればいいですか」

そんなことを聞かれたのだった。

まだ日本に来て一日と経っていない、今でこそ魔力は安定しているが、いざ考えてみると活動の拠点すら用意できていなかった。ある程度の現代の知識こそあれ、携帯電話など持っているわけもない。

契約の内容によっては呼び出す能力が備わることもあるのだが、今回はその効果は無いようだ。


「実はいま住むところすら見つかっていない」

辺りは暗く、街灯が灯り出す時間。この時代の通貨など持ち合わせているわけもなく、もう野宿でもするしかないかと考えていた。悪魔によっては影の中に潜むといった方法もあり、それこそ契約相手にとりつくような悪魔だっている。

だがこの悪魔にそのような力はなく、ましてや必要最低限の魔力だけに無駄な力は使えないわけで、召喚された橋の下あたりは、日も当たらないし人目も届かないからよい場所ではないだろうかなどと考えていた。


「だったらうちに来ますか」

だからこの提案は喜ばしいものであったと同時に、全く予想していなかった話でもあり、むしろここまでしてくれる少女に薄気味悪さすら覚えるほどであった。そこに損得勘定がないことが、契約を主とする悪魔にとって何よりも理解できなかった。

「見返りを期待しても何も出せないぞ」

悪魔に恩を売りつけておけば、何か返せるものがあると考えたのだろうか

「そんなものは求めていないですよ」

謎が謎を呼ぶとでもいうのか、理解できない、いくら時代が進んだからといって常識が変わるということもないだろう。だったらこの子がおかしいのか。


「自分で言うのもなんだが、私のような得体のしれない者を家にいれるなど、怖くはないのか」

だからなのか、わずかでも善意という可能性があるのであればと考えると、身の守り方もわからない幼子だというのだろうか。だが制服を着ていることから考えても年のほどは17くらいだと思っていたのだが。、


「本当に危ない人だったらそんなこと言いませんよ」

はにかみながらいうその言葉は、この受け答えで警戒が解けたからでているものだろう。だが腑に落ちないこともある、仮に相手を試すそれ以前に、信じている節があるのだから。

悪魔が思うのもどうかという話だが、この子は変な奴に騙されたりしないだろうかと心配をしていた。

「それに、友達が困ってるのを見過ごせませんから」


また友達だ、軽々しく契約を結んだものだったが、そもそも友達とはなんだ。頭の中を張り巡らし考えるが答えは出ない。あまりに広義であり、あまりに狭義であり、その人によって考え方を変えるもののようだ。だけど嫌な気持ちはなかった、無条件に受け入れられることがここまで心地よいものだとは知らなかった。ただし自分の本当の名前を知られているということが頭の中をちらつくと、拒否もできないというものだった。


この少女の真意は今はわからない、だがその提案が非常に助かることもまた本当のことであるがゆえに、断る理由もなかった。

「そうだ、名前をまだ聞いてなかった、名前は何というんだ」

「ひじり、漢字一文字で聖っていいます、あなたのことは何と呼べばいいでしょうか」

「本当の名前はあまり知られたくないから、武雄とでも呼んでくれ」

「その由来を聞いてもいいですか」

「あまり聞かないでくれ」

そんな自己紹介も終え、二人は少女の家へと向かった。

いろいろな思惑こそあるかもしれないが、悪魔と人間の友人という関係の下にあるこの状況は不安でもあった。

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