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悪魔が巡りて人間知る  作者: 家ノ風
2/21

悪魔は考える

「どうしてこうなったんだったか」

事の始まりは位の高い悪魔に呼び出されたことから始まったことだった。

なんでも悪魔が召喚されないことによる、存在意義の消失を防ぐために力を貸してほしいだったか、そんな理由で自分が選ばれたらしい。

魔力の弱い自分がどうしてこんな大役を任されたかというと、その悪魔がいうには自分が行けば地上に悪影響を与えること、今回の目的である、【どうすれば人間たちにまた召喚させることができるかを探る】という目的の為には、あまり目立ってはいけないということだった。


ある程度の注意事項をまとめて教えてもらったが、あとは全くの未知の世界に等しい。

召喚陣には人間との交流を取りやすくするためか、ある程度の知識を与えられていた。召喚された場所は日本。ある程度大きな街の、橋の下に召喚された。黒髪黒目、日本人として不自然さのない容姿だったが、その造形はかなり美形だった。

人間の世界に溶け込むため、超上の力にある程度の制限が掛けられている、契約による施行においてのみ、力をふるうことを許されるというものだ。そのため身体能力も人間の限界を超えない程度になっている、これらはすべて打ち合わせ通りで、了承済みのことだった。

与えられた知識を手繰り寄せる。

多宗教国家であるこの国には、宗教の力がそれほど強くないから召喚されたのではないのか。

歩き回っても問題のないような最近の若者の服もつくりだしておいた。

自分の名前はこれから武雄としたのも、日本人に成り代わるためだった。



まず武雄は考えた、何よりも魔力の供給源を確保することから始めなければいけないと。

それは人間と契約を結ぶことで、

宗教がないということは、心の拠り所がないのではないか、そう考えたのだった。

こんな重要な仕事を任されたということもあって、期待に応えたいとは思っている、これは彼の個性が影響していた……そう思っていたのだが


「え?怪しい宗教か何か?ごめんねー」

「そんなうまい話あるわけないじゃん」

「おまわりさんこいつです」

そんな言葉をたくさん投げかけられた。時に追い回されることすらあった。

変質者のような扱いも受ける、この国はいったいどうなっているのだ。

語りかけ方がまずかったのだ。

「何か望みはないか、それを叶えることが私にはできる」

そういった物言いだった。知識だけがあっても、その国の倫理観とは結び付かないものだということも。

昔ならこういった甘い誘いに、誘惑に、簡単に引っかかってくれたものだというのに、日本人というやつは悪魔に簡単には引っかかってくれなかった。


時間にしてどれくらいたっただろうか、茜色で空が焼かれる時間に、その異変は起こった。

服を作り出すために魔力を使った、ただ存在するだけでも魔力は消費されてしまう。

そして魔力の底が見え始めていたのだ。それは肉体に現れてきていた。

疲れやすくなり、めまいがし、頭が痛くなる。

人間で考えればただの風邪だと思うのかもしれない、だが体調不良など経験することがない悪魔にとっては、この変化がすでに非常事態だったのだ。

甘く考えていた。歩くのも辛くなってきた。

おぼつかない足取りで公園のベンチにたどり着く、倒れこむように寄りかかる。もう目がかすむ。

ああ、これが死というものなのだろうか。武雄は思った、


「あの、大丈夫でしょうか」

そんな時だった、一人の少女が話しかけてきたのは。

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