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いや、変わっていたというのもおかしいだろう。
というのも、彼女は無表情な上に冷たい目でこちらをじっと見ていた。
少なくとも、芸能人やモデルがやっていい顔ではない。 完全に目が据わっているのだ。
流石にこの反応は予想してなかった彩斗は戸惑いながらも彼女に笑いかける。
「俺はさっきの男みたいに貴女に声を掛ける気はないよ。・・・あ~、日本語分かってるかな?」
案の定わかってないらしい。
というのも、目の前の男が何か言ってるが帯銃してる以上PMC関連に間違いはないと目星をつけたのだろう。
何も間違ってないだけに対応の仕方が難しい。
彩斗がどうしようか悩んでいると、香しい肉の香りが立ち込めてきた。
そういえばそもそも仲裁に入ったのもこのためであった、と遅れながら思い出したのである。
とりあえず彩斗はそのままカウンター奥の棚からグラスを2つ取り出す。
そして、そばにあるフレーバーティーをそれぞれ注いで席に戻る。
こういうのはさっさと食べてこの場を離れるに限る。
別段人見知りと言う訳ではない。
だが、会ったばかりの言葉も通じないであろう人にこれ以上手間取っては本末転倒だと感じたからだ。
席に着く際、グラスを1つ彼女のそばに置き自らも一口飲んだ。
口の中に含んですぐに鼻孔に茶葉の香りが漂ってくる。