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アマリリスと狼  作者: 鷹弘
第1章◇アマリリスと狼◇
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番外編◇正月はぜんざい◇

もうとっくにお正月過ぎてるのに、今回の話です。はい、また番外編です。きっと近いうちに、また続きを書くので、気長にお待ちください…!

 ぜんざい。餅とか小豆が入った正月の食べ物?デザート?だった気がする。俺は今、台所に立ってそれを作っている。

 我が家には暖房なんていう、素敵道具は無いから、暖炉の熱が届かないココはかなり寒い。でも、早く作って持っていかないと、アイツに怒られる。



「クロード、まだですか?お腹空きました」



 去年までは一人で越してた年も、今年はこの生意気な居候のおかげで、まあ楽しく越せた。……コキ使われてるけど。

 ノエはいつもの赤い服に、何処から引っ張り出したのかは知らんが、赤い半纏を来て、暖炉の前で体育座りをしている。髪が暖炉の火を反射して、いつもは青みがかっているのが、今日は赤みがかって見える。



   ***



 今朝のことだった。

 年明けをわざわざ起きて過ごすことにあまり意味を見出さない俺は、三十一日の夜は早々に寝た。ノエはラジオを聴き続けていたので放っておいた。

 因みに、ウチにはラジオがある。森を出た街には、テレビとかいう、音声に加えて映像も見れる便利な道具もあるらしいが、残念ながら此処は森だ。ギリギリ電波は届いていて音声が聴けても、テレビなんて売ってる店は無い。このラジオだって、爺さんが拾ってきて直したものだから、かなり古い。

 脱線したな。とにかく、ノエがラジオを聴いていて、夜更かしをした、それはいい。一日の朝、いつも通りナイフの切り裂く音で目が覚める。それもいい、あま良くはないが……。だが、その次の言葉だった。


「クロード、ぜんざい作ってください」


 どうやら、昨日の夜聴いていたラジオにぜんざいの事が報道されていたらしい。それに興味が出たから作って、という。

 別に、作るのはいい。新年だし、前々から作ろうと材料は買ってあった。甘い物は俺も好きだし、コイツも好きだから。

 __だが、コイツはラジオで何を学んだのだろう……。


「ぜんざい、って小豆とかお餅を煮立てて作るんですよね。それで、お餅で人を殺すとか」


 いや、殺さねーよ。どんな年明けだよ。

 どうやら、餅を喉に詰まらせて死ぬ人もいるから気をつけて、というのを、餅で人を殺すと解釈したらしい。馬鹿だろ、コイツ。

 取り敢えず、餅を気をつけて食べろという意味だと説明したあと、一度も食べたことがないというコイツのために作ってやっているという訳だ。



   ***



「クロードー。お腹空きましたー。殺しますよ」

「そう気軽に殺すな!!」


 待つのが耐えられないのか、物騒な事を言い出したコイツを止めるため、出来上がったばかりのぜんざいを、鍋ごとリビングに持っていく。

 鍋から漂う甘い匂いに引き寄せられ、ノエがこちらに寄ってくる。


「コレが、ぜんざいですか……。とても素敵な匂いです」


 心なしか、普段より瞳をキラキラさせて鍋を覗き込む彼女に、少し得意気になる。


「ほら、もう出来たから殺すとか言うな。あと、器に移すから手伝え」

「む……、何故。台所は寒いです」

「俺はその寒いところで作ってたんだよ。さっさと食いたいんだろ?だったらお前が手伝えば、その分早く食える」

「……分かりました」


 若干、不服そうな顔をしながらも一緒に台所に来る。

 その後は、器に並々とぜんざいを注ぎ、リビングへと二人で運ぶ。まだ暖かいそれは、台所で冷えきった身体を温めてくれる。


「はい、そんじゃ食べていいぞ」

「それじゃあ、いただ__」


 許可を出したと同時に手を合わせて、早速食べようとした彼女だが、頂きます、と言い切る前に言葉を切る。

 どうしたのかと、顔を覗き込もうとした時、


「__クロード。去年は、と言っても、ここに来てからまだ数ヶ月ですが。お世話になりました。【紅狼】を倒す手伝いを貴方が申し出て下さった時は、まあ。嬉しかった、かもです」


 素直じゃねーなー……。


「貴方のご飯、どれも美味しいです。今後も食べたいです。__今年も宜しくお願いします」


 今後も、なんて。俺達のこの関係は、ノエが【紅狼】の誰かを殺すまでの期限付きだというのに。それは彼女も分かってるはずなのに、それでも、嬉しかった。口では散々、殺すだの、死ねだのと言ってはいるが、少なくとも期限いっぱいまでは一緒に暮らしてくれるらしい。

 若干、頬を薔薇色に染めながら、何も反応をしない俺を見てくる彼女に、俺も返事をしなくてはならない。



「おう。今年もよろしく」

2017.1.16→テレビからラジオに変えました

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