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アマリリスと狼  作者: 鷹弘
第1章◇アマリリスと狼◇
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◇2話◇【赤ずきん】と【紅狼】はようやく会話を交わした

「う……、ん?」


 目が覚めると、俺は自宅に居た。

 より正確に言うならば、自宅のリビングで、両腕を麻縄で縛られて床に転がされていた。

 断っておくが、俺にそういう趣味は無い。両腕を縛られている時点で、自分の意志じゃ無いことは伝わるだろうが念のため。

 さて、首元に鈍痛を感じるので、さっきの出来事は夢ではないようだ。できれば夢であって欲しかったけど。

 しかし、現実ならばしょうがない。今考えなきゃいけないのは、俺にスタンガンを食らわせた少女は今何処にいるか。……いや、そんなことよりも、もしココに俺を連れてきたのがさっき見た少女だとするなら、何故俺の家を知っている__?



「__起きましたか」



 湧き上がった疑問の答えを探していると、後頭部に感じた冷たい感触。次いで、聞き覚えのある声。

 相手を刺激しないよう、ゆっくり振り返る。そこにいたのは想像通り、寝転んでいる俺に銃口を向けるためにしゃがんでいる、目がくらむほどの赤に身を包んだ少女だった。


「起きましたか、と尋ねているのですが。もしかして貴方は言葉を使えない、本物の犬畜生ですか?」

「__…おい、女が畜生とか言うな。口汚ねぇぞ」


 少女は俺の注意には反応を示さず、ゆっくりと銃口を下へ向けて、立ち上がる。


「起きていたのなら、返事をして下さい。もし寝ていたのなら、このまま引き金を引いていました」


 なんとも物騒な台詞だ。目を覚ました数秒前の自分に感謝。


「さて、ここは貴方の自宅だと私は判断しましたが、間違いありませんね」


 言葉こそ質問のようだが、彼女は自分が間違っているとは感じていないらしい。その態度が少し癪なので、意地悪をしてみる。我ながら大人気ない。


「違う、と言ったら?」



「ここを完膚なきまでに破壊して、同時に貴方も殺します」

「ここは俺の家です。生意気なこと言って申し訳ございませんでした」



 プライドなんかくそくらえ。

 両腕を縛られた状態で土下座する、俺。


「間違っていないのですね。良かった、無駄な体力を使わずに済みました」


 少女は、勝手にその辺にあった椅子に腰掛けると、俺にも座るように促す。勿論、床に。


「さて、ではまず自己紹介としましょう。貴方も私の正体が気になるでしょうし」

「まぁ、そりゃあ気になるけど……」



「では、貴方から自己紹介をどうぞ」



 なんでだよ!?

 無表情のまま、どうぞと言って掌を向けてくる少女に対し、ついさっき土下座をしていた奴とは思えない勢いで、俺は怒鳴る。


「なんで俺からなんだよ!普通、来訪者のお前からだろ!」

「人狼が普通とか言っちゃいます?それに私の正体が知りたいという問に対してイエスと答えたのは貴方です。人のことを知るためには、まず自分から名乗る。それが“普通”では?」


 いけしゃあしゃあと、腕を左右に広げ、肩を竦めて、オマケにため息付きで俺に語ってくる少女に対し、怒りが沸いたのは事実。

 しかし、ココで言い争いをしてもしょうがない。俺が大人として、折れてやるか。


「なにか、失礼なこと考えてます?」

「いや?__さて、自己紹介だったか。俺の名前はクロード・アルジャン。今年で二十四歳、趣味は家庭菜園。最近は南瓜を作ってる。以上」

「狼が家庭菜園って……。イメージかなり崩れますね」


 うるせぇ、ほっとけ。

 家庭菜園……、と指を顎に添えて呟いている少女。なんとなく気恥ずかしくなってきて、次に話を進めたい。


「さて、次は嬢ちゃんの番だぜ」


 コホン、と気を取り直すように咳払いをして、少女に話を振る。

 すると、少女は顎から指を離すと、ずっと被っていたフードを取って、こちらを見る。

 フードの中にあった素顔は、いわゆる美人に分類されるのだろう。耳の後ろで一つに括った黒髪は、少し青みがかっている。さっきまでは隠れて見えなかった瞳は、藍色のように見える。

 この森では見かけない髪と瞳の色、無表情も相まって、ふとすると人形にも見える。


「私は、ノエ・エカルラートと申します。歳は十六。趣味は昼寝です」


 愛想のない、必要事項を並べただけの自己紹介。

 少女、もといノエは一呼吸置くと、言葉を続ける。



「私は、二十五代目の【赤ずきん】。貴方__つまり、【紅狼】を殺しに来ました」



 “殺しに来た”。その言葉を真顔で言われて、そうですか、と返せるほど俺の頭は馬鹿じゃないし、ズレてはいないらしい。



   ****



 【赤ずきん】の話は、一年前に死んだ爺さんから散々聞かされていた。

 ソレは俺たち【紅狼】の宿敵である。

 何世紀か前。近隣の村で暴れていた緋色の髪と瞳も持った半獣人、後に【紅狼】と呼ばれる種族の先祖。彼は一人の少女と、その幼馴染みの少年によって倒された。

 その時の少女というのが、初代【赤ずきん】。幼馴染みは【狩人(シャスール)】と呼ばれた。

 以来、【赤ずきん】の家系に生まれた少女と、【狩人(シャスール)】の家系に生まれた少年はペアとなり、【紅狼】を仕留める。

 【紅狼】は北欧神話に登場する狼の姿をした怪物から名前を借りて、“フェンリル”と。【赤ずきん】は由来は知らんが、花の名前からとって、“アマリリス”と呼ばれるようになった。

 しかし、その名を使うことは滅多にない。みんな、【赤ずきん】や【紅狼】の方がすぐに伝わるから。



   ****



「……なるほど。お前がこんな森の奥に来た理由は分かった。よく考えたら、そんな真っ赤な格好してる時点で気づかなかった俺も馬鹿だったしな」

「大丈夫ですよ。自分が馬鹿だと気づけるだけまだマシです」


 いちいち癪にさわるな、コイツは。

 だが、今はそんなことより確認しなければならない事がある。コイツの言動について考えるのはまたあとでもできる。


「なあ、理由は分かったが、それ以外で三つほど気になる事があるんだが」

「質問ですか。構いませんよ。答えられることなら答えて差し上げます」


 かなーり上から目線だなぁ、おい。

 実際、椅子に座る彼女と床に座る俺では、位置関係から言って、彼女が上だが。だからといって、上から目線を年上にするもんじゃない。


「まず、一つ目。お前のペア、【狩人(シャスール)】は何処にいる?基本的にペアで行動するって聞いたが、見当たらない」

「それなりに知識はあるようですね。私の相方である彼は、今別行動中です」


 は?ペアで行動してない?じゃあなんでペアなんか組むんだよ。

 俺の表情から、言いたい事を汲み取った彼女は、コチラを一瞥したあと、話を続ける。


「基本的に【赤ずきん】は女なので力が弱いです。なので、男である【狩人(シャスール)】と行動することで、足りない力を補います。しかし、私はそれなりに体力もありますし、力もそこらの男には引けを取らないと自負しています。なので、別行動中です」

「いや、だとしても万が一というのもあるだろ」


 まあ、俺は見事に惨敗したが。

 しかし、ノエはコチラの心配など意にも介さず、表情を変えずに続ける。


「ご心配には及びません。私たち【赤ずきん】は少々、特殊な武器を持っています。最悪、それで乗り切れます」


 コレでこの話は終わりだという顔で次の質問を促してくる。

 その武器のこととか、もう少し聞きたいこともあったが、これ以上つっこむと、これ以降の質問に答えてもらえないかもしれない。

 気を取り直して、次の質問に進む。


「二つ目は、何故俺なのか、ということだ」

「どういうことです?」

「ココは森の中でも、それなりに奥地にある。ココより、入口に近いところにも【紅狼】は存在するはず。なのに何故お前はこんな所にまで入ってきた?」


 そう、コレが二つ目の疑問。

 【紅狼】は俺だけじゃない。この森をテリトリーとして暮らしている【紅狼】は少なくない。なのに、他の奴ではなく俺にした理由は。何より、俺が住むこの家は森の奥地にあり、コイツの奇襲に会ったキノコが大量に生えていた場所は、更に奥だ。わざわざそんな所まで入らなくても、もっと前に別の奴らに会う可能性は決して低くない。

 しかし、ノエはあっさりと俺に告げた。


「そんなの、他に会わなかったからですよ」

「会わなかった!?そんな筈ないだろ。この森は【紅狼】のテリトリーだ。何匹も生活してるのに、誰とも会わずにこんな奥まで来るなんてありえないだろ」

「嘘はつきませんし、事実です。私はここまでに他の【紅狼】に会わなかった理由なんて、知りません。

 ですが想像はできます。恐らく、先程話にも出た私の相方の【狩人(シャスール)】の仕業でしょう。彼は私よりも数日前にこの森に入っていきました。その数日で暴れ回って、今も【紅狼】たちに追われている。だから私は会わなかった、と考えるのが一番可能性が高いです。

 彼、かなりオラオラ系と言いますか、とにかく暑苦しいし、喧嘩っ早いんですよ」


 お前の相方、どんだけだよ。

 俺の表情が分かりやすかったのだろう。ノエは表情が、親しみやすそうな、同情するようなものになった__ように見えた。


「心中お察しします。それで、最後の質問は?」

「あ?ああ質問な。実はコレが一番謎だったんだが、__何故俺は生きてる?」


 彼女は本当に、質問の意味が分からなかったらしい。

 先程までなんの感情も示さなかった顔をキョトン、とさせて首をかしげている。

 そして間を置いてから、納得したと言わんばかりに手を打合せて言う。



「つまり、貴方は死にたかったのですか?」

「んな訳ねぇだろ!」



 なんつー事を真顔で言うんだ、この小娘。

 つい思い切りツッコミを入れてしまったが、仕切り直すために、もう一度咳払いをしてから、俺は話を続ける。


「……さっき、お前が言ってたんだろ」



__“ご教授頂く前に、貴方には死んでいただきますが”__



 そう。彼女は気絶する数分前にそう言った。だから俺は死なないために走った。……結局、捕まったけど。


「あぁ、そんなこと言いましたね」

「なのに俺は生きてる。ソレは何故だ?」


 彼女は、何かを、言葉を探すように、視線を数回左右にユラユラとさ迷わせると、ピタリ、と俺に向き直る。


「その前に一つ確認がしたいんですが…」

「なんだよ」


 するとノエは、先程までの感情を一欠片も見せないといった無表情とは打って変わり、その形の良い眉を軽く潜め、少し困ったような顔をする。

 身じろぎせずに待ってはみるが、彼女の口からなかなか言葉は出てこず、その代わりに視線が俺の顔や髪の毛の辺りに集中するようになった。(禿げてはいない。まだフサフサだ)

 ややあって、ノエは意を決した表情を浮かべると、居住まいを正して、俺に視線と共に疑問を投げかける。



「__貴方は本当に、【紅狼】ですか?」



 ソレは、全く予想していないものだった。

 俺の中身が足りない脳みそは、コイツが何を言ったのか理解するのに、数秒かかってしまう。


「……お前は【紅狼】を殺しに来て、さっきまで俺を追いかけ回してたんだろ?いきなりなんだよ。俺は【紅狼】だ」


 彼女も自分が言ってることと、さっきまでの行動の矛盾には気づいている。ノエは、数分前と同じ、少し困ったような顔をしつつ、再び俺の顔や頭に視線を向ける。


「えぇ、こんな森で普通の人間が貴方程の年齢まで無事に過ごせるとは思いません。でも、髪と瞳の色が【紅狼】特有の緋色でなく、__銀色ですから」


 あ。そういうことか。だから、俺の顔や頭__正しくは、瞳や髪を見ていたのか。

 なるほど。彼女は俺の存在、俺の呼び名を知らないから、【紅狼】か分からない俺を殺ずにいたのか。


「__なあ、ノエ」

「はい?」

「お前、【銀狼(・・)】って、知ってるか?」

「【銀…狼】?」


 やっぱり。この様子だと知らねぇみたいだな。


「じゃあ、“フローズ・ヴィトニル”は?」

「……知りません」


 決定だな。

 自分の存在がマイナーなことには若干凹むが、そのおかげで生きながらえたのだから、結果オーライということで。


「俺の呼び名だよ」

「じゃあ貴方は【紅狼】では無いん ですか?」

「いや、【紅狼】だよ。

 ……但し、その中でも特殊な立ち位置の、【銀狼】っていう種類だけどな」



   ****



 【紅狼】の特徴は、緋色の瞳と髪。それは人間の赤毛とは違い、もっと鮮やかで、美しい。彼らはそれぞれ、基本平等な立ち位置にいる。

 しかし稀に、彼らの長となり得る存在が産まれる。

 それが【銀狼】。呼び名は、“フェンリル”の別称でもあり、「悪評高き狼」といった意味を持つ、“フローズ・ヴィトニル”。彼らの特徴は、銀色の瞳と髪。

 【紅狼】たちは、【銀狼】が産まれると、彼をただ一人の王として尊敬し、彼の命令だけは必ず聞く。

 また、もう一つ大きな特徴がある。

 元来、【紅狼】は赤いモノを見ると、それを破壊せずにはいられない。ソレは遺伝子に刻まれたもので、どうしようもない。だからこそ、【赤ずきん】や【狩人(シャスール)】は【紅狼】を殺そうとする。

 しかし、【銀狼】は、本来持ち合わせているはずの赤いモノに対する破壊衝動が極端に少ない。多少の嫌悪感はあっても、破壊するには至らない。

 だが、【銀狼】は何百人といる子供の中に、一人いるかいないか、といった確率でしか産まれない。違う種族であるノエが存在を知らないところで、それはしょうがない事だ。

 ……知られてないのは、ちょっと寂しいけど。



   ****



「__だから、俺は【紅狼】ではあっても、その中の【銀狼】って種類なんだよ。だから髪も瞳も色が違う」


 分かったか?

 確認するようにノエの顔を覗き込むと、彼女は少し焦った顔をしていた。どうしたのか 、声を掛けようとすると。


「……つまり、貴方は人間に対して害は無いということですか?」

「?まあ、そうだな。特に俺は野菜好きだし、人の肉を食う、とかはしねえよ。野菜も、自分で作ったのとか、森で取ったのしか使わねえから、人里に降りて、畑荒らすつもりもねえし」

「そう、ですか。だとしたら……どうしましょう……」


 何が?

 俺が尋ねる前に、ノエは語り始める。ソレは俺に教えるというよりも、自分自身で確認しているように見える。


「私たち【赤ずきん】は、十二から十六歳までの間に、この森へ行き、【紅狼】を殺さなければいけません。なぜなら【赤ずきん】は狼をやっつける、いわゆるヒーローだからです。でも、もし一匹も殺せずに村に帰ったら、“【紅狼】に寝返った”。“村を滅ぼすつもりだ”などと言われ、家族諸共、処刑されます」


 家族諸共、処刑?

 なんで女の子が森に行って、狼殺せなかったら寝返ったことになって処刑されるんだよ。

 俺に質問を隙を与えず、ノエの語りは続く。


「エカルラート家の長女は、強制的に【赤ずきん】の役目を受け継ぎます。

 目的はただ一つ、人間に害を及ぼす【紅狼】を殺すこと。

 私はそれを全うするためにココへ来ました。そして、貴方という【紅狼】を見つけ、追い詰め、捕獲したのはいいのですが、結果的に貴方は【紅狼】ではあっても、害が無い【銀狼】でした」


 つまり、害があるなら躊躇なく殺して、胸張って村に帰れるが、俺が害が無い場合、お役目の意味に沿わない殺しをしてしまうことになるかもしれない。もしかしたら無意味な殺しになるかもしれない。確実では無いソレは避けたい、と。

 確かに、俺も害を与えてるつもりは無いのに殺されるのは嫌だ。しかし、一度でも会話した彼女が、俺を殺せなかった事で家族諸共処刑されるのも目覚めが悪い。

 お互いが無事になれる方法を探す、となると俺がとるべき選択肢は一つになる……。


「なあ、ノエ」

「はい?」



「頼む。俺は殺さないでくれ」

「……今、殺せないから迷ってるのに、そんな堂々と命乞いしないでくれませんか?」



 ジトっとした目でコチラを見てくる。若い子に向けられる心無い視線に、ちょっとお兄さん、めげそうだよ……。

 しかし、心の丈夫さが売りの俺は、臆さずに、今さっき思いついた方法を彼女に告げる。


「俺は助けてほしい。その代わりに俺は、お前のお役目の手伝いをしよう」

「はい?」


 おお、本気で意味がわかっていないな。

 さっきの三つ目の質問を投げかけた時のような表情を浮かべるノエ。但し、今はその表情に、+(プラス)ジト目。


「貴方は意味が分かっていますか?私のお役目の手伝いは、=(イコール)貴方のお仲間を殺すんですよ」


 お前はそんなことも分からないのか、馬鹿なのか。いや馬鹿だったか。彼女の顔にはそんな言葉がはっきりと書いてあるように見えてしまう。

 いや、それ位は分かる。馬鹿にするな。


「別に構わないさ。俺たちは基本的に一人で暮らしている。だから変な仲間意識はあんまり無い。群れがある場合は別だが、俺は群れに入ってない。それにこの森にも、そんなに大きな群れは無いはずだ」


 だったら、その群れに入ってない、知り合いでもなんでもないやつを殺せばいい。そしたら復讐される心配も無いし、良心も痛まない。……はず。


「そんな都合よくいますか。今は私の相方が森で狼たちと追いかけっこしてるはずですけど」


 あ、そっか。そーだった。忘れてたわ。めんどくさことしてくれるよな、その相方くん。


「だとしたら、まずソイツと合流した方がいいだろうな。もしソイツが群れの狼を殺そうとしてたら、別の狼を殺そうとしてる俺らにも被害が及ぶだろうし」

「……貴方は、何が目的ですか。敵であるはずの【赤ずきん】に協力して。もしかしたら、私は虎視眈々と貴方を殺す機会を伺っているかもしれないのに」

「そん時は、自分でなんとかする。流石に俺も、まだやりたいことあるし」


 だってまだ二十代前半だぜ?やりたいことなんて山のようにある。とりあえず、今作ってる南瓜の成長を見届けたい。

 目指せ、南瓜の馬車級の大きさ。

 南瓜の馬車に乗っておお城に行く自分を想像していると。

《シュッ パサッ》

 軽く空気を切る音と共に、両腕の自由を感じる。

 見ると、さっきまで俺の腕の自由を奪っていた麻縄が床に落ちていて、背後には、少し複雑そうな表情で短剣を持ったノエが立っている。

 彼女は、複雑そうな表情は変えずに語る。


「……私も、まだ十六です。やりたいことは貴方以上にあるので、ココで死にたくは、ありません」


 だから。

 そう言ってノエは右手を差し出す。


「今回は異例ということで。【赤ずきん】に協力をお願いします。

 __【銀狼】の、クロードさん」

「“さん”はいらねえ。お互い、やりたいことをやり尽くすためにも協力しあおう。

 よろしく、__【赤ずきん】の、ノエ」



   ****



 かくして、俺らは恐らく歴史上、一度も無かっただろう、【赤ずきん】と【紅狼】の共同戦を始めることにした。




(続く)

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