閑話◇4話オマケ◇
「クロード様、カロン様。入浴の準備が出来ました。どうぞ、ごゆっくりお寛ぎ下さい」
そう言って、メイドは静かに去っていった。
俺達が案内されたのは貴族とかが入ってそうな、豪華な大浴場。あの、なんだっけ。ほら、ライオンみたいなのが口から水吐いてるやつ。あれもあった。
昨日までは、部屋に備え付けの、これまた広い風呂に入っていたが、ヘルのよく分からない計らいで、今日は大浴場。
カロンは、初めての広い風呂にテンションが上がりまくりだ。
「おい、フェンリル!なんでそんなにテンション低いんだよ!」
「いや、だってこの風呂入ったことあるし」
昔の話だがな。
ここに遊びに来た時、全員子供だったからと、ヘルとリルと三人で風呂に入ってた時期もあった。ちなみに、後から知ったが、その時既に二人は百歳は越えてたらしい。けど、二人共小さい姿に擬態していたので、俺だけなんにも知らずに、女子二人と風呂に入っていた。まあ、例え今、あの二人の裸を見ても、欲情しない自信しか無いが。
「あれ、リリーは?」
「あいつは女子だろ。隣にある、もう一個の風呂に入ってる」
「こんなデケェのがもう一個あんのかよ……」
忘れているようだが、あいつ一応王族だからな。
「あぁ、そっか。あいつと一緒に入るのが当たり前だったから忘れてた」
「いやいや、流石に今は入んねぇだろ!?」
「ん?あー、流石にタオル無しは駄目だよなって話にはなったなぁ」
何この幼馴染み。年頃って言葉知らねぇのかよ……。
項垂れていると、後ろで入口のドアが開く音がした。ここは、風呂に続く内扉と、脱衣所に続く外扉がある。音がしたのは、外扉から。多分、メイド辺りがタオルでも持ってきてくれたんだろう。
しかし、入ってきた人物の気配はまだ消えない。……というか、嫌な予感がする。
「ん?フェンリル、どうしたんだ?」
「カロン、お前目を瞑っといた方が__」
__バンッ!
内扉が開いた。そこに立っていたのは__全裸のヘルだった。タオルすら巻いていない。……どんなエロ漫画だよ!?
後ろから、流石にこちらはタオルを巻いている、リルが入ってきた。
「クロードォ!今日は久々にお姉ちゃんが全身くまなく洗ってあげるわよぉ!」
「あ、任せてねっ。ワタシも洗ってあげるから」
「いや、ここ男子浴場だろ!?ノエの世話でもしてろよッ!」
カロンが真っ赤になって、急いでタオルを腰に巻き、湯船に飛び込んだ。闖入者達に背中を向けている。
「なんでよぉ。あ、勿論カロンくんも洗ってあげるわよぉ?」
「い、いいいいりませんッ」
唯一の良心とも思えるリルはというと。
「はぁぁ……。ここはお風呂広いから、なんの気兼ねも無く入れていいねぇ」
巨体女ならではな感想を言いつつ、髪を洗っていた。……もう、どうにでもなれ。
「はぁ。取り敢えず、ヘルはタオルを巻け、カロンが沸騰する」
「なんでよぅ。お風呂にタオルを浸けるのはマナー違反よぉ?」
「お前の存在がマナー違反だわ」
「失礼ねぇ」
ぶー、と言いながらもタオルを巻き始める。最初から持ってたなら巻けよ。
「あらぁ?女の身体を見慣れてないだろうからっていう、あたしの心遣いなのよぉ」
いらねぇし。てか、いい加減慣れてきた。あの読心術。
***
そんなこんなで四人で風呂に入りつつ、カロンも慣れてきた頃だった。
「なんで私も呼んで下さらないんですか」
ジトっとした目で内扉から顔を出すノエがそこに居た。……じゃなくて!
「なんで入ってくんだよ!女って奴は何奴も此奴も!」
「リリー、遅かったなッ!」
呼んだのお前か!?カロンくん!いや、『呼んで下さらない』って言ってるってことは、呼んではないのかッ!雰囲気か、雰囲気で全員ここにいるって分かったのか!
「すみません、髪を洗ってる途中でしたので」
そもそも、来なくていいわ!
「おいヘル!ここ男用の浴場じゃないのかよ!」
「んー?もういいじゃなぁい。今日は混浴っ!女王様の決定よぉ!」
ヘルの掛け声に、俺以外の三人は元気に返事をした。
取り敢えず、この事実がイヴさんの耳に入らないことだけを祈って、仲良く五人で風呂に入りました。