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アマリリスと狼  作者: 鷹弘
第1章◇アマリリスと狼◇
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◇9話◇俺の知り合い凄ェよな

 知り合いからの情報は、シオンと初対面した次の日、夜明けとともにやって来た。

「と言うわけで。今から調査報告だ」

「その前に一つだけ」

 ノエがそっと挙手した。やけに真剣な顔だ。

「クロードって、本当に知り合いいたんですね」

「よし、報告するぞー」

 何を言い出すんだ、この失礼娘はッ。



   ***



 まず、全員知ってることから、確認も含めて言ってくぞ。

 名前は、グレイプニル。【紅狼】と【銀狼】が入り混じってる。調べによると、前例は確認されてないらしい。年齢は25、俺の一つ上。目的は、【紅狼】の長になることと、俺の殺害。ま、ここまでは予想もつくし、事前に知ってる。

 こっからが本題だな。

 アイツの親は、父が【銀狼】、母は【紅狼】。多分これは、ノエもカロンも知らねぇと思うが、【銀狼】は同じ時期に二人存在する時もある。確率は凄ェ低いけどな。で、そいつの親父さんは、俺の爺さんと同じ時期に【銀狼】として存在した。だが、長になれるのは一人だけだ。なら、どうすると思う?__そう、戦うんだ。

 別に勝負内容はなんでもいい。純粋な殴り合いでも、心理戦とかでも。それに、よく勘違いされがちなんだが、負けた【銀狼】は別に死ななくてもいい。ただひっそりと、群れを作らず、静かに生き続ければそれでいい。要は、王者面すんなってこと。

 俺の爺さんと、アイツの親父さんは、勝負内容を、決闘にした。どちらかが死ぬまで終わらない、決闘。提案したのは親父さんらしい。結果は、まぁ分かるよな。__爺さんの勝利。親父さんは最後まで粘って、それでも勝てずに死んだそうだ。それは男同志の戦いだし、特に卑怯な手段とかも無かったらしい。でもな、アイツのお母さん、奥さんは、激しく取り乱したそうだ。

 親父さんが死んだ知らせを受けた途端、泣き崩れて発狂。暫くして収まったかと思えば、グレイプニルを見て、旦那さんの名前を呼んだらしい。当然、息子は戸惑うさ。母親は、息子の様子を見て、事実を受け止めた。__ただ受け止めたならいいんだが、そうじゃなかった。爺さんが、親父さんを不当な手段で殺したと、言い出した。それを息子に、永遠と語り、父の仇を取れと、言い続けたらしい。父の血を継いでいて、銀と紅を持ったお前なら、ってな。そして、今のグレイプニルが生まれた。

 ちなみに、お袋さんは数年前に亡くなってるらしいぜ。死因は、他の【紅狼】による殺害。理由は、発狂した姿で、今の長__爺さんのことな__を侮辱しまくってたから。群れを作らない【紅狼】でも、長の存在は絶対。それを、戦いに敗れた者の伴侶が、侮辱しまくってるんだ。そりゃあ殺される。でも、母の死はグレイプニルにとって、大きな出来事になった。

 それまでは、母の悲しむ顔が見たくない一心で、爺さんを殺して、次の長になろうとしていたのに、父を殺されてしまった憐れな母を、仲間であるはずの【紅狼】が殺した。自分の父を殺した奴に従ってるやつが、自分の母を、殺した。

 その事実は、奴にとって許されないものだった。だから、決意したんだ。父を殺した原因である爺さんを殺して、母を貶して、殺した【紅狼】を支配してやろう、と。



   ***



「__で、今は【紅狼】の“赤”に対する破壊衝動も理解でき、かつ長になるに相応しい【銀狼】でもあることから、森の【紅狼】達から、支持を受けているらしい」

 報告を聞き終えた俺達には、なんとも微妙な空気だけが残った。

 確かに、奴が俺の事__正確には爺さんだが__を恨んでて、殺したいのも分かる。動機も分かった。なんだか釈然としないが、シオンの言ってたことは間違いでは無かった。

 だが、どうやって奴を殺せばいいんだ?恨みを原動力にしてる奴ほど、やりにくいものは無い。それに、こっちは以前一回負けている。原動力を知ってしまって、怖気付いたらもう駄目じゃないか__。

「なるほど、そういう理由でしたか。分かりました。では、探しに行きましょう」

 怖気付いたら……。って、え、あれぇ?

 おかしい……。一番この中で可愛らしい反応を示すべきであるノエが、一番男らしい反応だった。

「ちょ、ノエッ。今の聞いてたか?」

「はい。ご両親が亡くなってしまったので、その直接的な原因と考えられるクロードのお爺様を殺したい。でもその方は既にこの世にはいらっしゃらないので、標的がクロードに移った、ですよね?理解してます」

 ですが。

 そこでノエは一呼吸置いてから、立ち上がり、片手を胸に当て、片手を腰に当てて言い放つ。

「それが何ですか。私には関係ありません。

 そりゃあ、ご両親が亡くなったのはお気の毒だと思います。まだ両親が健在の私が言うと怒られそうですが、さぞ大変だったでしょう。可哀想だとは思います。が、こちらもお役目としてこの森にいます。可哀想な狼を慰めるためではありません。同情はしても、それ以上はありません。

 彼がどのような立場で、どのような心境であろうと、私は私のお役目を全うするため、彼を、殺します」

 言い切った。

 そうだった。彼女はこういう奴だ。最近はグレイプニルの事で頭がいっぱいいっぱいで、若干忘れかけていたが、この少女。ノエ=エカルラートは、自分の主張を曲げず、そのためならなんでもする奴だ。

 それに、もう一つ忘れちゃいけない。この戦いは、俺が生きながらえるためのものでもある。勿論、グレイプニルに殺されないように、とかじゃなく。


 “【紅狼】を殺すのを手伝うから、俺は殺されない”


 そういう契約を、ノエとしたんだ。

 ほうけていたカロンも、ノエの言葉で鼓舞されたらしい。目つきが変わっている。ならば、やることは決まった。冒険物の主人公よろしく、奴を倒しに行くか__!

「あ、でもちょっと待て。肝心のグレイプニルの居場所、分かんなくねぇか?」

「そんなの、歩いていればその内出くわします。こちらにはクロードという、素晴らしい餌もありますし」

 俺の心の中での決め台詞を遮るかのように話し合いを始める二人。若干キメ顔してた気がするから恥ずかしい。あと、ノエ。堂々と俺を指さしながら、餌とか言うな。その親指折るぞ。

 しかし悲しいかな。ノエにそんなことが出来る筈も無い俺は、少しでも自分に注目が向くように咳払いを一つしたあと、朝方に届いた報告書の入っていた封筒から、まだ読んでいない紙を一枚取り出し、二人の前に掲げる。

「あー、お二人さん?ここに、素敵な地図がございますよ」

 それは、例の俺の知り合いがサービスとして寄越した、グレイプニルが現在いると思われる場所を示した地図だった。候補はたった二つ。そこまで絞り込む奴には、心底、感服致す。

 それを見た二人は、全く同じ様に、呆けた顔をした後、打合せしたのかと思うくらいに息ぴったりで言った。


「知り合いさん凄すぎる!」

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