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ツルが恩返し

作者: 高千穂 絵麻

 僕がコンビニでバイトをしていると、駐車場の片隅で、フードを目深にかぶった男が横になっていました。

 何日も同じ服を着ているようで、コートの色が、もともとどんなだったか判らないくらい汚れていました。

 どうやら住むおうちもなく、お腹を空かせている様子でした。


 僕は、賞味期限切れで廃棄処分になったサンドイッチを店長からもらい、男に持って行きました。

 店長は、癖になるからやめなさい、と言っていましたが、僕は気にしませんでした。

 だって、男がかわいそうだったからです。

 男は、あ、とか、う、とか言って、サンドイッチを持ってどこかへ行ってしまいました。

 僕はいいことをしたと思いました。


 季節が涼しくなるころ、学校で運動会が行われます。

 今回の目玉種目は、全校男子全員で行う棒倒しです。

 これで勝った方が優勝です。


 僕は守り手の一員になりました。

 攻めてくる敵軍から、棒の先に付いた旗を守る役目です。

 開始の合図が鳴って、攻め手が旗を取りに行き、守り手がそれを防ぎます。


 敵軍はとても強く、僕たちのチームの旗が、取られそうになりました。

 その時、観覧席から一人の男が飛び出し、敵陣の旗へ向かって行きました。

 僕がコンビニで、サンドイッチをあげた男でした。


 うおー、って叫んでいたので、みんな怖がって近寄りませんでした。

 男は敵陣の旗をむしり取り、折って投げ捨てました。

 男は言いました。コンビニの坊ちゃん、恩返しに、旗を折ってやりましたぜ、と。


 警備員たちに取り押さえられた男のフードがめくれ、スキンヘッドが見えました。

 そう、男の頭は、ツルツルだったのです。


 頭ツルツルの男が、旗を折って恩返しをしようとしたようですが、闖入者ちんにゅうしゃによる妨害で、棒倒しはノーカンになって、運動会はおじゃんです。


 僕は、バイトをしていることが学校にばれて、一週間の謹慎きんしんとなりました。


 とっぴんぱらりのぷう。


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― 新着の感想 ―
[一言] はじめまして! 何作品か読ませていただきましたが、中でもこれが一番好きです。 はたから見たら怪しくて恐ろしい男なのに、事情を知っている読者にとっては微笑ましくてかわいいツルツルさん。 こん…
[良い点] 鶴が機織る恩返し 面白い小噺に仕立てましたね。 使えるものは親でも使う。 意外なモノが笑いの種に。 見事です。
[一言] 後半の部分でクスッと笑ってしまいましたw 「頭つるつる」のところ、 なるほどー!と思うのと同時に吹いちゃいましたね〜 とても短いお話なのにこんなに楽しく読ませるなんて、すごいなあと思い…
2015/12/27 22:14 退会済み
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