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絵巻物語。  作者: 斎藤 色
1/5

0話 「私の帰り道にて。」

7/24 全て修正。要望があれば前の物も載せます。


   ぐちゃぐちゃこねくり回さない文章は難しいです。

   自分の場合こねくり回し過ぎて何がなんだかわからなくなるのですけれど。

「先生、今日の講習どうでしたか?」


 微睡みかけていた私は不意に響いたその声で目が覚めた。

 見ると運転席に座る男はいつものと寸分違わない、計算し尽くされたような、薄っぺらい笑顔を助手席に座る私に向けている。

 現在、目の前の信号は赤で、横断歩道を歩く人は誰もいない。ので私に声をかけるのは問題ないのだが......


「黙れ。前を向いていろ。笑顔が気に障る。」


 なんて言葉が口から出る。まぁ本心なので問題はないだろう。イライラしてるし。

 そう。何故そんな言葉が出たかというと、現在、私の気分はすこぶる悪い。何故、と聞かれてもそんな気分だから。としか言いようが無い。

 いや、理由はあるけれどそんな餓鬼みたいな理由でイライラしてる、なんて思われたくないのが今の心情だった。

 ついでに寝起きって言う理由も含まれているかもしれない


 ちくしょう、イライラしてるせいか思考がぐちゃぐちゃだ。


「そんな、生徒が話を聞かなかったからって怒ることはないじゃないですか。それも半分以上だって。

 結局3分の1が聞いてくれたんだから良いじゃないですかー。」


 そんな思いもきっと見破られているのかは知らないが、やっぱりというか、予想通り見破られていた。

 ああ、腹がたつ。こいつの薄っぺらい笑顔も。いつまでも覚えきれないこいつの顔も。

 

 なんてイライラした会話をしてたら信号が青になった。


「青になったぞ。進め。」


 こういうことを言ったら絶対にこいつは『人使いが荒いですよー。先生ー。』なんて言う。

 半年くらいの付き合いだがこいつの返答はだいたい理解できてきた。

 こいつは私をとにかくバカにしたいだけなのだ。多分。


「人にお願いするのにそんな態度はないんじゃないんですかー?」


 うーん。少し外してしまった。やはり平常心を保ってなきゃ予測の精度はだいぶ落ちてしまう。

 いや、まぁそんな気がするというだけだし、そんな回数を試してみた訳でもないのだけれど。


「雨ですねー。」


 相変わらず人の心を読まずにどうでも良いことを呟いてくる。現代人ならスマホでもいじっておけば良いのに。いや、運転中だからやったら全力で殴りに行くけれど。ついでに窓から追い出すけれど。

 ......なんか案外落ち着いてきたな。まぁ、こいつの言動にイラッと来るのはいつも通りと言えばいつも通りだが。


「強くなりそうだな。」


 窓から空を見上げてみれば灰色の雲がせわしなく右から左へと移動している。右奥には真っ黒な雲がうごめいていた。


「雨はお好きですか?」

「それなりに」


 そう、それなりに好きなのだ。特に雨の香りが。湿った、気落ちするような。そんな香りが。

 なのに、違和感を覚える。この雨に。——いや?あの雲か。

 それにイヤな感じがする。


「そろそろつきますよ。家まで送りましょうか?」


 あれ?さっきの信号からここまで来るのに30分はかかるはずなのに。

 ——イヤな予感が加速する。

 ブレーキに足をつっこみ強制的に車を止める。

 ......?無理じゃないのか?そんなこと。

 ——違和感が、止まらない。


「危ないですよー?すりっぷsチャuかもs礼奈買ったんdethよ?」


 恐怖が体を締め付ける。こいつの、——助手の、顔が不自然に歪む。

 いつからこいつはいた?いや、その前に逃げ出さなくては。

 ドアを開けて転がるように車から飛び出る。右足、左足。交互に。少なくともこんな風に動かなくてはまともに動けなくなるくらい、怖い。途端、右足が硬直する。

 ここは道路の真ん中。

 頭上が光る。

 光が、私に向かって

「ニゲナイでkだsi?」

 影が、光を遮って。

 私に向かって。

 銀光りするナイフを、

 ナイフを、

 ナイフ?

 突起物を、

 起物を

 物を

 を

 、

 刺した。

 視界が

 真っ黒に。

 真っ赤に。

 染まって朽ちた。


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