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第五章「地獄」 1
「があぁぁああぁああぁああああ!!!何じゃこりゃあぁあああぁあ!!!」ロバートの絶叫でミシェルとマイケルは跳ね起きた。
「何事です?!」ただ事ではない、ミシェルは勘づいた。
「ロバート…ロ、ロバートのて…手がぁ…!」ミシェルの懐にマックスが涙目になって飛び込んできた。
その瞬間。ミシェルはとんでもない物を見てしまった。
ロバートの右の掌が壊死している。
「糞があぁぁああぁあ、痛ぇ、痛ぇよぉぉ!!畜生ぉぉぉ!!!」床に転げ落ち、のたうち回るロバート。左手で押さえている右の掌から青とも黒ともつかぬ色をした気色の悪い膿がこぼれ出ていた。
昨日のエスカレータでの傷か。ミシェルは思った。
ロバートは昨日、百貨店でエスカレータを横から飛び降りた時、着地に失敗し、床に散らばったガラス片を掌に突き刺していた。マックスによると、彼は後で治療を何も施しておらず、消毒さえせず放置していたらしい。