89/186
第四章「独房」 9
「マックス、出しゃ張りにも程があります。自重を。」ベレッタが火を吹いた。相変わらずの精密射撃だ。次々と確実に正確に弾丸がノーアイズの腐った豆腐のような頭を貫いていく。重油の入った水風船があちこちで割れていく。
迫り来るノーアイズが全て地に伏すと、ミシェルはマックスが息の根を止め損ねた、死に損ないのノーアイズ達にとどめを差しにかかった。血のまどろみでもがく怪物に狙いを定め、撃つ。
ノーアイズが頭を打ち砕かれる瞬間はいつもうるさい断末魔を一瞬上げてから息耐える。発砲音とその叫びがリズミカルに入り交える。
弾倉が空になると、すぐさま別のマガジンと取り替え、再び撃つ。
撃つ。
撃つ。
ノーアイズに成り果てた者への唯一の救いは「死」だ。
ついに太陽が街全体を黄金色に染め上げた。
朝だ。午前6時52分。
悪夢の夜が一旦眠りに落ちたのだ。
しかし、凍えるような朝だ。ミシェルの吐息が白煙に変わる。