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第四章「独房」 2
地下駐車場を出て国道を歩いて行くと向こうに大きな住宅街が見えてきた。案の定、そこに見える全ての家屋がフエの王城の如くボロボロに壊されており、まるで嵐が過ぎ去ったかのようだった。この街も死んでいる。スラムより酷い有り様だ。
「北ベトナムが攻めてきたのか?酷ぇザマだ」ロバートは首を傾げてからほくそ笑んだ。「もうすぐ糞ノーアイズ等と駄犬共がハウスの時間だ。ちゃっちゃと宿を決めねぇと俺らもマリアの元へハウスだぜ」
「…なら一番手前の家にしましょうか」
「そうだね。俺もちゃっちゃと寝たいよ。」とマックスは言うと、のんきに大欠伸をかました。
空は先程よりも一層明るみを増しており、もう懐中電灯も要らなくなった程だ。
泊まることとなった一番手前の家は周りと比べて少し質素な造りが目立ち、築何百年か経っているだろう煉瓦の壁は趣のある凹凸を端から端まで繰り返していた。しかし、家の前のプランターには見たことのない毒虫が湧いて出ており、その中のパンジーも老人の皮膚のように萎れてだらしなく垂れ下がっていた。