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第三章「廃屋」 32
「やべぇぞ…!!」ロバートは呟いた。「2人だけでも応戦するぞ…あの野郎トチ狂いやがって…!!」マックスの耳元から歯ぎしりが聞こえてきた。
しかし、ロバート達に気づいていないのか、その怪物は原型を留めていないアッシュの死体をずっといじり回している。巨大な掌を開閉する度に手の内にある肉塊から血液が絞られ、指の間から溢れ出す。
「どういうつもりだ…?」生殖活動をする素振りがない。ただ遊んでいるだけのように見える。
すると、その肉塊を投げ飛ばした。投げた肉塊は腰を入れてないのにも関わらず、滅茶苦茶なスピードで吹っ飛んでいった。そしてそれが遙か向こうの支柱に激突すると、飛沫となって飛散した。
「クレイトス呼ばなきゃな…」マックスはそれをジョークとして楽しむ余裕なんて微塵もなかった。言った本人もそうだった。
しかしその直後、突然怪物がロバート達から背を向けた。そしてやはりロバート達には気付いていなかったのか、そのまま歩きだした。地鳴りを響かせるその足音がどんどん小さくなっていく。