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第三章「廃屋」 29
「ああ…こんなに怖ぇ鬼ごっこしたのは…初めてだな…ランボーも…泣いて逃げるんじゃ…ねぇのか…?」ロバートも目一杯肩を上下させて肺に空気を入れ込んでいた。大きく見開かれた目からは恐怖の色が伺える。
すると突如、マックスがとんでもない言葉を口にした。
「アッシュは…?!」
「!!」とっさに見渡すが、踊り場には彼の姿がなかった。
その時、ミシェルの脳裏を一本の黒い閃光が貫いた。
ならばーーー!?
ミシェルは先程入ってきた扉を思い切り蹴った。扉は支点の蝶番が外れ、そのまま床に叩き付けられた。
次の瞬間、史上最悪の光景が3人の目に飛び込んできた。
扉の向こうにいたのは、身長5メートルの酷く巨大なノーアイズだった。しかし、そいつの腕からは、ノーアイズでは考えられない程の筋肉が隆々と浮き出ており、真っ赤な歯茎に植えられた牙も鋭さを増していた。その中でも特に掌が巨大で、あの圧殺死体の手形と丁度合いそうなサイズだった(手形は死体の体を包み込むように付いていた)。
そしてその手の握られた中にーーアッシュがいた。